――微睡(まどろ)みの中、ソレは聞こえた――。

【私は神。信仰の薄れた日ノ本の民に私は試練を与える】

【私はこの日本に1人の『神子』、20人の『ルーラー』、500の『贄(にえ)』を生み出した】

【『ルーラー』とは私の代わりに裁定を下すモノ。私に代わりヒトを裁くモノだ】

【『贄(にえ)』とはヒトならざる能力を得しモノ。『神子(かみご)』に与える供物である】

【『神子』は『贄』に紛れて生きている。『神子』を探しその命を絶て!】

【能力を持たない『国民』が能力者『贄』を殺せたのなら、『ルーラー』を介し1億円の報酬を与える。それは罪ではない。大いなる栄誉だ】

【『贄』が『贄』を殺したのなら、『ルーラー』の判定の元、殺した相手のチカラを1つ与えよう】

【『国民』が『国民』を殺す事をもっとも悪しき罪とする。『ルーラー』の手により其の命を断つ】

【『贄』にはどんな命を絶つ事も許そう。生き延びてみせよ】

【ヒトがヒトの命を断つ行為は、日の出から日の入りまでを有効とする。守れぬモノは『ルーラー』の手により裁く】

【『贄』が国外へ出る事を許さない。その代わり日本における全ての義務を免除し、時価5千円以下の物品の購入、施設の利用をタダとする】

【『贄』の右手甲には星型の痣がある。『神子』にはこれと云った特徴が無い。『神子』は『贄』の1人であり、自身のみがそれを知る】

【『神子』が死んだ時、この試練は終わる。そして『神子』を殺したモノの願いを1つ、どんな事でも叶えよう!】

【さあ、国民よ神子をコロセ!】

 靄(もや)が晴れていく。懐かしくも儚い映像はモノクロの画として今でも鮮明に思い出せる。

 夢の中で光が訴えていた。



『神子』をコロセ! と。



 瞼をこすり枕脇のスマホを探す。ロックを解除、アイコンをタッチし皆のツイートを確認する。

『あの夢、みんなが見たのかよ? そこkwsk』

『贄、ほんと居んのかな? 居たら俺、狩っちゃうかもw だって、1億だろ!』

『俺、むしろ神子殺りたいwww』

ヒナ

は?

 SNS上で、皆が『神の声』を聴いたと言っている。SNS上に『神の声』関連ツイートが幾つも流れた。何度更新しても『神の声』に関するツイートばかりが画面を奔る。



 何が何だか解らない。頭を掻きながら洗面台へと足を運んだ。

ヒナ

……。


 鏡に映った右手に、――星の形をした赤い痣が在った。

 心臓が躍動し、脳へ砂嵐のような音が響いた。

【『贄(にえ)』が1人『彼方ヒナ』

お前のチカラは、――『請負譲渡』。

相手の意志を受け有象無象を『請負』、相手の意志を受け有象無象を『譲渡』する能力だ】

 籠の中に放ったスマホは、謳うように通知を連呼した。

 開いたメッセージは『神』という『ユーザー』から送られていた。

【彼方ヒナ。――神子をコロセ】

【第1話】神の声。

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