――ああ、あたし、ひとりぼっちで生まれちゃったなあ。
道路に座る少女は自分の横に転がったものをぼうっと見つめながらそんな風に思った。親しくはなかったが、物心ついた頃から一緒にいたし、けして短い付き合いでもなかった。
そっと手を添えてみる。外側からは初めて触る。冷たくて硬い。
目線を上にやると、温かい何かが浮かんでいた。
この「光る水風船」はきっと自分以外には見えないものなのだろうと少女は感じた。そして木から果実をもぐようにそれを手にとると、迷いなくぷつりと前歯を食い込ませた。
熱いものがどろどろ溢れてくる。
唇をつける。吸う。時折空気を含んだ汁がちゅぷ、と素っ頓狂な音をあげて、舌を伝い喉に、全身に流れる。満ちてゆく。
ただただ与えられるだけの生ぬるい感覚の中で自らの性質を実感した少女は無表情のまま立ち上がると、全てを失ったそれが醜く形を変えるのをちらりと見て、ため息をついてから歩き出した。
――なあんだ。食べるって、こんなものなんだ。