Wild worldシリーズ
Wild worldシリーズ
コール歴5年
sky colors
第九話 道の途中
北へ向かったはいいものの、ユッカは城への道のりを知らなかった。
いつもクローブがやってくる方向、ダイオスが旅立つ方向、それが北。
だから、北へ向かっただけだった。
ほとんど衝動のまま飛び出したので、何の支度もしていない。
歩き続けていたせいで履物は使い物にならなくなり、それは脱ぎ捨て裸足で草原を歩く。
うっかり切り口の鋭い葉や大きな葉を踏んでしまって傷ついて、足はもうボロボロだった。
麻痺してきたのか、もう痛みは感じない。
そのまま歩き続けると、そこにはまるでユッカを導くかのように立て札も出ている。
『この先、港町クリスティ』
ラムダは旅をしていた。
背中の重み、フェシスの剣を納める場所を探す旅に……
とにかく、旅した事のある街へ行ってみようと決めていた。
17歳で旅立ってから、大分長いことやってきた。
その時間の中で変わったもの、変わっていないものなんかも見てみたかった。
元々ラムダは世界が見たくて旅を始めた。
それを、今になってもう一度始めようとしている。
最初に訪れてみたのはエメラルドだった。
過去の繁栄はどこへやら、寂れた街になっていた。
そこから城の方へ一度引き返し、城には立ち寄らず異紡ぎの森へ。
いつかこの剣に魔法をかけた魔女。
彼女がまだ生きているとは思えないが、何か残っていると信じて、そこを目指していく。
ユッカは、クリスティの町へ一歩足を踏み入れると同時に、安堵感に包まれながら、倒れこんだ。
ユッカちゃんがいない!
オグは慌てていろいろな場所を探し回った。
いつも遊びに行く場所は全て。
ダイオスのテントの中も。
思い当たるところは全て回りつくした。
どうしよう、レイテさん! ユッカちゃんが、ユッカちゃんが……!
落ち着いてくださいな
涙と鼻水で顔中ぐちゃぐちゃにするオグに、レイテさんは優しく微笑んだ。
ユッカさんは必ず戻ってきます。……必ず
どこか核心めいた表情をするレイテさんを、オグは泣き顔のまましばらく眺めていた。
あ、起きた! 起きたっ!!
子供の声。
そしてバタバタと走り去る足音。
ユッカは起き上がると、見ず知らずの場所にいることを知る。
ずっとテント暮らしをしていたユッカには、ベッドも時計も、木の家もドアノブも、見ているもの全てが異世界だった。