……開いた。
よく頑張ったな。
この先の結果はオマエのものだ。
書き手が何を思って
何を書き宛てたか……。
存分に見てくるがいいさ。
うんっ!
ボク モ イク!
扉の向こう
う……ううん……。
オキテ!
オキテヨ
うん……ここは?
トビラ ノ サキ ダヨ
扉の先……。
扉を抜けた先は
薄ぼんやりと霧がかったようだった。
しかし、それはあたしのよく知る場所であり、
よく知らない場所でもあった。
ここ、おねえちゃんの書斎だ。
そして、同時に
かつてのお父さんの書斎でもある。
あれ、誰だろう……。
ぼんやりとした視界の中であたしは
椅子に座って
筆を走らせる人影に気づいた。
サラサラサラ……
あたしの視界が定まらないのと同様に
その人はあたしの存在には
気づいていないようだった。
お互い干渉はできないってことかな。
ならば、とあたしは
その人物の傍らに近寄った。
その筆の先を見ると
今まさに書き終えて筆を置こうとしていた。
あれ……。
手紙の文字ははっきりわかる……。
あらゆるものがぼんやりとしているのに、
不思議とその文面は読める。
おそらくそれは
書き手の扉の力だろう。
あたしはそれをすんなりと受け入れる。
ともかく、なんて書いてあるのかを見よう。
あたしはその文面に目を通した。
ユウ、リツ、元気にしているかい?
風邪をひいていないかい?
今はこんなに小さいリツだけど、
きっととても大きくなったんだろうね。
この手紙を読んだとき、
君たちは何を思うだろうか。
幼い記憶の父親の姿を
思い浮かべてくれるだろうか。
そして君らが自らの運命に
気づいてしまうのだろうか。
僕はそればかりが心配でならない。
だから僕はこの手紙を書くことで、
君たちの記憶を封じようと思う。
願わくば、この手紙が君らの手に渡らんことを。
イマディア・ロスタ・フォンデブルム
エタニア・メムリネ・セアル・ユウ・ウンデ・リツ
……あれ?
お、早かったな。
あたし、手紙を読もうとして
どうなったんだっけ?
オイダサレタ
追い出された?
ナニカ ノ チカラ デ
オイダサレタンダ
まあでも、手紙は読めたんだろ?
読んだような気がするけど……
全然覚えていない
なんでぇぇぇ!?
おおう、そうなのか?
もしかしてその手紙を
最後まで読むと発動する
呪詛みたいなもんか?
そんなぁ……
あ、でも、レムも一緒に見たよね!?
ゴメン ボク
ジ ガ ヨメナイカラ……。
ガーン!
苦労して進んだ扉の先で
あたしは何も手にすることができなかった。
あれ?でも……。
その時あたしは
ポスタルの言葉が気にかかった。
その手紙を
最後まで読むと発動する
呪詛みたいなもんか?
呪詛ってどういう事!?
お父さんって何者なの!?
つづく