優人たちが、突如発生した灰色の異型と戦っている中、神裂希は、一人、違う地点に向かっていた。
優人たちが、突如発生した灰色の異型と戦っている中、神裂希は、一人、違う地点に向かっていた。
この辺かな…。
希が 飛行魔法を解く。
そこには、誰もいない、中央に壊れた噴水がある広場であった。
出てきなさい!
希の声が広場全体に広がる。
あたりは静まり返っている。
しばらくすると、壊れた噴水の後ろから一人の少女が現れた。
さすがですわ、お姉さま。
噴水の陰から現れたのは、ゴシックアンドロリータと呼ばれるファッションスタイルに身を包んだ少女であった。
やっぱり和葉ね…。
今回の騒ぎはあなたの仕業ね。
まあ! まだパレードを始めたばかりなのに、お見事です。
私のお姉さまは、やはり、ご健在でしたか。
藤堂和葉は、不適な笑みを浮かべる。
で、私に何の用?
まさか、遥々、リスクを背負ってまで、私を探しに来ただけではないでしょう?
こんな悪趣味な計画まで実行して…。
希は、腰につけている魔剣に手をかける。
ちょ、ちょっとお待ちくださいまし。
私は、お姉さまと戦いに来たわけではないのです。
和葉が両手を軽く挙げ、敵対する意思はないとアピールする。
へえ、でも、私の友達に危害を加えてることには変わらないでしょう。
それは、私に対する敵対行動ってことにはならないのかしら?
わ、私は、お姉さまを説得するための来たのです。
お姉さまと二人っきりでお話をしたかったので、取り敢えず、ゴーレムを作り出そうとしたら、予想外に変なものができてしまっただけです。
あと、悪趣味の度合いはお姉さまの方が上でしてよ!
一気に話したせいか、「はあ、はあ、」息を切らせている。
はあ、じゃあ、パレードでもなんでもないじゃない。ただの失敗作ってこと?
まあ、いいわ。 で、話ってのは?
そ、その、私に組織を任せると言って、突然いなくなってしまったので。
り、理由を聞きたいのです。
和葉の目には涙が浮かんでいる。
わかった。だけど、この理由を聞いても、きっとあなたには理解できない。
それと、他言しないって約束できるのなら、聞かせてあげる。
和葉は、首を縦に振り、希の話を聴いた。
ったく、こいつらの大元探さないときりがないぞ。
優人達は絶えず襲い来る異型を相手に不満を漏らす。
まあ、そうだけど。 解析担当が、今、探索中なんだから、仕方ないだろ。
じゃあ、めんどくさいので、このあたり消しますか?
そ、それは、やめといた方がいいかな。
ほら、魔力温存しとかないと、大元が出てきたときに、みんなで倒せないだろ?
大丈夫でしょう。 あなたの本気でどんな敵も一発じゃないですか。
それもそうか。
その時、無線から瑞希の声が聞こえた。
「それもそうか。」 じゃない!
静香も適当なこと言わないで!
そして、信也は…、邪魔ね。
ええー。
今、怒られること、俺何にも言ってないよね?
みんなに報告がある。こいつらは、形は少し違えど、種族としてはゴーレムよ。だから、倒しても倒しても、蘇る。
おまけに、お大元は、そこから5キロ先にいる。
私の水魔法で足止めしとくから、三人はそっをお願い。
俺の質問は無視かよ!
まあまあ、元気出せ。ほら、行くぞ。
希はどこへ行ったのですか?
静香は瑞希に聞く。
瑞希は、ゴーレムの変異体の近くで何者かと対峙しているわ。
これだから、嫌なのよね、勝手に行動する人って。
まったく。世話の焼ける未来のお嫁さんだ。
ほう、なんだかんだで結構その気なのか。
今のところは保留だ。 ほら、さっさと行くぞ。
了解。
ほら、瑞希も、しっかり伝えるべきことは伝えておかないと、先起こされますよ。
余計なお世話よ!
優斗、信也、静香の三人は、飛行魔法を使い、希の元へと向かった。
わかった?
希は、和葉に聞く。
話の内容が、私には、到底理解できません。
そもそも、何故お姉さまなのですか?
その役目、他の誰でもいいでしょう。わざわざ、お姉さまやる必要なんてどこにも…。
途中で何かに気づき、言葉に詰まる和葉。
わかったでしょう。ごめんね。
わ、わかりました。でも、あなたの味方はここにもいるということ。しっかり理解しといてください。
ありがとう。ほら、さっさと消えなさい。
もうすぐ優斗達が来る。
わかりました。では、また。
そういうと、和葉は、ゆっくりと、煙のように消えていった。