卵……いりませんか?
またかよ!
明くる日の帰り道。
今日も僕は
卵をどうにかしなくてはいけないらしい。
Re:すくらんぶる☆
え……、
遠慮しておこうかなー……。
……いらないのですか、卵。
……いや、ね。
そういうわけではなくて、
なんというか……。
もはや身に余るというか……。
そんな……。
うーん、なんか罪悪感を感じるぞ。
貴方にそんな微妙な顔をされると
このおつう、
胸が苦しくなります。
え、あ、それはゴメン。
このおつう、
貴方に命を助けられた
400年前のあの日から……
いっときも貴方のことを
忘れはしませんでした。
命を助けた?
400年前のあの時?
そして、貴方に再び会えた
今日というこの日の奇跡を……。
決して無駄にはできませぬ。
ん……んー?
ですから……
是が非でも卵を!
すっげーメンドクサイぞ、
この人……じゃなかった、鳥。
押しかけ女房型に違いない!
いや、待て。
本当に食べてもいい卵をくれる可能性が
ワンチャンあるか?
食費も増えてることだし、
それならウエルカムなんだが……。
確認してみるか。
あのー。
はい。
その卵は
食べていい
やつですか?
ゴメンナサイ。
すごく嫌そうな顔に
おもわず根負けして
謝ってしまった。
しかし、もはや疑いもない。
俺の貞操が
狙われている。
ここは男らしく断らねば。
コホン。
率直に言います。
やはり、いるんですね?
卵。
そうじゃなくて!
なんつーか、
人違いじゃないですか?
え!?
俺、まだ20代だし。
400年も生きていないですし。
名前違いますし。
そ……そんなはずはありません!
わたしが与ひょうさんの事を
見間違えるなんて……。
鳥の神に誓ってありません!
あー……。
聞く耳を持たない感じだな……。
てか、与ひょうって誰さ?
もう正直に言ったほうがいいか?
先約がいるって。
さあ、卵を!
でも、なんかんだか
気が強そうなんだよなぁ……
ああ、もう
辛抱たまりませぬ!
まさか……
俺はここで
襲われるのか!?
ぐううぅうぅぅぅ……。
なぜ早く炒り卵を作ってくださらないのですか!!!
やっぱり食うんかい!!!
てか、なんでさっき嫌そうな顔をしたのさ!!
お腹が減りすぎて
全部食べたいなんて
乙女の口から
言う言葉ではありませんから!!!
そこ?
そこなの?
てか、命の恩人に頼むこと!?
だって、与ひょうさん400年前にこう言ったではないですか!
『食うものに困ったら俺を頼れ』
お忘れになったのですか!?
だから、人違いだと……。
私があなたを与ひょうさん、て決めたのですからあなたは与ひょうさんなのです!
さすが押しかけ女房の元祖!
まあいいさ。
おつうさんだっけ?
あんた、お腹へってるんでしょ?
ぐううぅうぅぅぅ!
炒り卵なら作ってやるから、
ウチに来な。
ぐぅぐぅ。
開き直って、
腹の虫の音で会話する気か!
ただいまー。
ダーリン、おかえりなさ……
……。
わたピと愛を誓った翌日に、なに他のメスを連れ込んでるのよーーー!!!!
ご、誤解だ!
昨日ピー子が行き倒れていたところで
同じように空腹で行き倒れていただけの
おつうさんだ!
仕方ありませぬ。
400年も前から私達は
運命で結ばれていたのですから。
ムッキー!!!
ピー子の羽毛を
逆なでするなぁぁ!!
:
:
:
へー……。
で、ダーリンは
このメスの面倒をみようと?
うぁぁぁ……。
めっちゃ棘があるなぁ……。
まあ、食べたら帰ってね、おつうさん。
それはもちろん。
私、一宿一飯の恩は
決して忘れませんから。
泊めないからね!
にしても、ファンキーな卵だな。
わたピも見たことない卵です。
実のところ、私もなんの卵かわかりません。
オイ!
あの場所でお腹が減っていたところ、
鳥の神から恵んでいただいたものですから。
鳥の神様は鳥への食事に鳥の卵をくれるんですかい?
ダーリン、それは偏見です。
昆虫に爬虫類や両生類、
果てにはカモノハシのような卵生の哺乳類。
卵を生むのは鳥だけじゃありません。
そうか……。
でも、硬い殻がある卵って
鳥ぐらいじゃなかったっけ?
:
:
:
完成じゃい!!
なんかの卵のスクランブルエッグ
Yeah!
ぐううぅうぅぅぅ
ぐぎゅるるるぐうぅ
一応、鶏の卵を混ぜて
かさ増ししてあるから
俺たちも食べるよ!
……しゅん
これ全部食べる気だったのか!
では。
実食!
……いただきます。
うっ!
え!?
なんとっ!?
うまい……。
鶏の卵も混ぜたというのに、
この濃厚な黄身の味わいはどうだ?
もし、あの玉子単品で調理したなら
主張が強すぎたことだろう。
ナイス判断だ、俺!
美味じゃ。
至高の味じゃ。
気に入ってもらえたみたいだな。
当然なのです。
ダーリンの炒り卵は
鳥智を超えた味わいなのです。
馳走になりました。
もう大丈夫かい?
はい。
なので、約束通り私は帰ります。
そうか……。
なんかちょっと寂しい気も……。
じぃぃぃーー……。
しません!
それじゃあ、おつうさん。
また……
おやつはなんですか?
へ?
おやつはプリンですが
そのメスの分はありません。
今、帰るって言ったよね?
はい。
ですから、私、
我が家に帰りました。
どういう事?
ピーン!
今日から一緒に
住まう事にしました。
オイ!
やっぱりかー!
ここはダーリンとあたピの
巣なのーー!!!
だからダメー!!!
巣作り、大儀であった!
奪う気かよ。
わたピの方が先ー!!!
先か後かの話をしていいのか?
私は400年前からの運命だぞ?
あのー、いい加減
人違いを認めてください。
で、でも
一緒に炒り卵を食べたのは
わたピが先だもん!
だから、ダーリン!
わたピとの……
いいえ、私との……
え……。
卵、
いりませんか!
えええええ!!!!
僕は
鳥との婚姻は
重婚が認められるのかを
真面目に調べ始めた。
Re:すくらんぶる☆
完
>剣世炸さん
コメントありがとうございます!
ちなみに、毎日鳥の嫁を増やすためには、昼に並木道を通って帰らねばならないので、主人公は毎日会社を早退する必要があります。
いいのか、大黒柱?