インターホンを押そうとして気づいた。
なんだろう、人がいる気配がしない。
~~~~♪
……ねぇ、どこに向かってるの?
工藤くんの家だよ?
いやいや意味が分からないから。なんで私まで一緒なわけ? 私工藤くんに用事ないんだけど
そこで拾ったから?
捨て猫みたいに言うな!!
ふふふ♪
というか、梨奈は工藤くんに用事あるの?
特にないよ? なんだか工藤くんが呼んでる気がするんだ?
……本当におめでたい頭してるよね、梨奈って
さぁ、もうすぐだよ
…………あれ?
インターホンを押そうとして気づいた。
なんだろう、人がいる気配がしない。
どうかした?
工藤くん、いないみたい……
どこかに出かけたんじゃないの?
それはないよ。工藤くん私以外に特別親しい友達いないはずだもん
なんで言い切れるんだお前は
じゃあ地元に帰ったとか? 夏休みだし、工藤くんも帰省してるんんじゃない? 私達はここで暮らしてきたからよく分かんないけどさ
地元に……帰った?
ショックだった。
歓迎会を経て、工藤くんも完全に岸ノ巻の一員になったと思っていた。
少なくとも、その第一歩を踏み出せたと思っていた。
けど、もし彼がそう思っていなかったら?
本当は、昔住んでいた都会が忘れられなかったら?
いやだ、そんなこと考えたくない。
それほどまでに、私は岸ノ巻が好きだった。
ねぇ、あず姉なら何か聞いてるんじゃない?
綾瀬の言葉にハッとする。
確かに、あず姉は工藤くんの隣なのだ。
何か聞いてるかもしれない。
あ、綾瀬に江岸じゃん! ちょうどよかったぁ~
えっ?
朝食作ってくれる人がいなくなって困ってたんだよね~綾瀬何か作ってぇ~♪
な、なんで私が……仕方ないですね
……ねぇ、あず姉
んー?
工藤くんはどこに行ったか、知らない?
不自然なほどにピタリと動きが止まるあず姉。
思えば、あず姉は昔から嘘が下手だった。
……さぁ? 私は知らないけど
嘘ですよね?
…………はぁ、やっぱりこうなるんだね
あず姉は私の顔を見つめて、はっきりと言い放つ。
地元だよ
……………!!
江岸が一番聞きたくなかった言葉を。