江岸 梨奈

~~~~♪

綾瀬 たつき

……ねぇ、どこに向かってるの?

江岸 梨奈

工藤くんの家だよ?

綾瀬 たつき

いやいや意味が分からないから。なんで私まで一緒なわけ? 私工藤くんに用事ないんだけど

江岸 梨奈

そこで拾ったから?

綾瀬 たつき

捨て猫みたいに言うな!!

江岸 梨奈

ふふふ♪

綾瀬 たつき

というか、梨奈は工藤くんに用事あるの?

江岸 梨奈

特にないよ? なんだか工藤くんが呼んでる気がするんだ?

綾瀬 たつき

……本当におめでたい頭してるよね、梨奈って

江岸 梨奈

さぁ、もうすぐだよ

江岸 梨奈

…………あれ?

インターホンを押そうとして気づいた。

なんだろう、人がいる気配がしない。

綾瀬 たつき

どうかした?

江岸 梨奈

工藤くん、いないみたい……

綾瀬 たつき

どこかに出かけたんじゃないの?

江岸 梨奈

それはないよ。工藤くん私以外に特別親しい友達いないはずだもん

綾瀬 たつき

なんで言い切れるんだお前は

綾瀬 たつき

じゃあ地元に帰ったとか? 夏休みだし、工藤くんも帰省してるんんじゃない? 私達はここで暮らしてきたからよく分かんないけどさ

江岸 梨奈

地元に……帰った?

ショックだった。

歓迎会を経て、工藤くんも完全に岸ノ巻の一員になったと思っていた。
少なくとも、その第一歩を踏み出せたと思っていた。


けど、もし彼がそう思っていなかったら?
本当は、昔住んでいた都会が忘れられなかったら?

いやだ、そんなこと考えたくない。


それほどまでに、私は岸ノ巻が好きだった。

綾瀬 たつき

ねぇ、あず姉なら何か聞いてるんじゃない?

綾瀬の言葉にハッとする。

確かに、あず姉は工藤くんの隣なのだ。
何か聞いてるかもしれない。

露樹 梓

あ、綾瀬に江岸じゃん! ちょうどよかったぁ~

綾瀬 たつき

えっ?

露樹 梓

朝食作ってくれる人がいなくなって困ってたんだよね~綾瀬何か作ってぇ~♪

綾瀬 たつき

な、なんで私が……仕方ないですね

江岸 梨奈

……ねぇ、あず姉

露樹 梓

んー?

江岸 梨奈

工藤くんはどこに行ったか、知らない?

不自然なほどにピタリと動きが止まるあず姉。


思えば、あず姉は昔から嘘が下手だった。

露樹 梓

……さぁ? 私は知らないけど

江岸 梨奈

嘘ですよね?

露樹 梓

…………はぁ、やっぱりこうなるんだね

あず姉は私の顔を見つめて、はっきりと言い放つ。

露樹 梓

地元だよ

江岸 梨奈

……………!!

江岸が一番聞きたくなかった言葉を。

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