―― と、いう事で。

俺は今、自宅のキッチンに立ち、
遅い昼食を作っている。

メニューは絢音と大地のリクエストで、
ふんわりオムライスと玉子わかめスープ。

2人はLDKで一緒に子供達に大人気の
戦隊ヒーローシリーズのDVDを鑑賞中だ。

大地

―― でね でね、絢ちゃん、コレすっごいかっこ良くてね……

それにしても大地。

普段より声大っきいよ、テンションたかっ。

手嶌竜二

だいちぃ? あんまりお客様に迷惑かけちゃダメだぞー

大地

……絢ちゃん、僕、迷惑、ですか?

絢音

ううん。そんな事ちっともないよ。ホラ、次のDVD観ようか。コレは何っていうの?

ここで大地、ソファーの上に仁王立ち ――
戦隊ヒーローの決めゼリフ。

『人の生命は地球の未来 ―― 救急戦隊ゴーゴーファイブ!!』

対する絢音は大拍手で大地をノセまくる。

絢音

わぉ! かぁ~こいいっ

大地

あぁ ―― コレ災魔一族です。すぐ怒るし、こども
叩くし、すっごい悪者です

絢音

そう ―― 怖いねぇ

ま、仲がいい事に越したことはないけど……
この2人、今日が初対面だよな?

今さらながら、大地のコミ力に舌を巻く。

手嶌竜二

だいちぃ、絢音ぇ。オムライス出来たよ~

「 はぁ~~い 

絢音は夜遅くまで、大地をかまいまくってくれた。

そのおかげでいつもは野郎だけで彩りに欠ける
我が家の食卓がパッと明るくなり、
笑い声も絶えなかった。

簡単な後片付けをして、食後のコーヒーを
運んで行くと、大地は絢音の膝枕で夢の中で。

手嶌竜二

おい、おい、大地ってば寝ちゃったんだな。ホントごめんな。膝枕したままじゃ疲れるだろ

絢音

今起こすと可哀想だし。私なら慣れてるから。大地くん、可愛いね。最近はこんな子供らしい子供って少ないから、大地くんみたいな子、見ると心が安まるわ

今日、1日の大地との関わりとか、
子供のあしらい方とか見てると、
流石、母親って感じがした。

手嶌竜二

普段、仕事で帰りが遅くなる時とか聖月ちゃんは?

絢音

あぁ、国枝琉奈って子覚えてる? この先の*丁目に
住んでるの。彼女の実家は大家族だから、1人や2人増えたって構わないって

手嶌竜二

皆んなに愛されて、彼女は本当に幸せもんだ

大地

……う~ん、お父さんー、いもようかん~……

大地の寝言に、顔を見合わせ吹き出した。

手嶌竜二

―― ったく、さっき散々食っただろがっ。あぁ、ホント、そろそろベッドへ連れてくよ

絢音

―― じゃ私も、そろそろお暇しようかな。こんな時間までお邪魔してしまって……

手嶌竜二

いいや、俺の方こそ助かった。―― 大地?絢ちゃんにご挨拶

大地

う~ん……絢ちゃん……バイバイ。またね

絢音

バイバイ、大地くん。おやすみ

大地は自室のベッドへ落ち着かせると
速攻で寝落ちした。

俺は玄関先で絢音をお見送り。

手嶌竜二

あ、あのさ……

絢音

はい

手嶌竜二

もし、迷惑でなかったら、また来てくれないか?

自分でも驚いた再来訪アプローチ!

背を向けた絢音の姿を見たとたん、
あんな言葉が口をついて出ていた。
  

絢音

ありがと。今度は聖月と来るね

手嶌竜二

あ……あぁ―― 待ってる

デパートで彼女と鉢合わせた時は
”こんな所でどうして会っちゃうかなぁ”と
少し気まずかったけど、
大地のおかげで彼女の違った一面も
再発見でき、総じてはとっても有意義な1日
だった。

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