―― と、いう事で。
俺は今、自宅のキッチンに立ち、
遅い昼食を作っている。
メニューは絢音と大地のリクエストで、
ふんわりオムライスと玉子わかめスープ。
―― と、いう事で。
俺は今、自宅のキッチンに立ち、
遅い昼食を作っている。
メニューは絢音と大地のリクエストで、
ふんわりオムライスと玉子わかめスープ。
2人はLDKで一緒に子供達に大人気の
戦隊ヒーローシリーズのDVDを鑑賞中だ。
―― でね でね、絢ちゃん、コレすっごいかっこ良くてね……
それにしても大地。
普段より声大っきいよ、テンションたかっ。
だいちぃ? あんまりお客様に迷惑かけちゃダメだぞー
……絢ちゃん、僕、迷惑、ですか?
ううん。そんな事ちっともないよ。ホラ、次のDVD観ようか。コレは何っていうの?
ここで大地、ソファーの上に仁王立ち ――
戦隊ヒーローの決めゼリフ。
『人の生命は地球の未来 ―― 救急戦隊ゴーゴーファイブ!!』
対する絢音は大拍手で大地をノセまくる。
わぉ! かぁ~こいいっ
あぁ ―― コレ災魔一族です。すぐ怒るし、こども
叩くし、すっごい悪者です
そう ―― 怖いねぇ
ま、仲がいい事に越したことはないけど……
この2人、今日が初対面だよな?
今さらながら、大地のコミ力に舌を巻く。
だいちぃ、絢音ぇ。オムライス出来たよ~
「 はぁ~~い
」
絢音は夜遅くまで、大地をかまいまくってくれた。
そのおかげでいつもは野郎だけで彩りに欠ける
我が家の食卓がパッと明るくなり、
笑い声も絶えなかった。
簡単な後片付けをして、食後のコーヒーを
運んで行くと、大地は絢音の膝枕で夢の中で。
おい、おい、大地ってば寝ちゃったんだな。ホントごめんな。膝枕したままじゃ疲れるだろ
今起こすと可哀想だし。私なら慣れてるから。大地くん、可愛いね。最近はこんな子供らしい子供って少ないから、大地くんみたいな子、見ると心が安まるわ
今日、1日の大地との関わりとか、
子供のあしらい方とか見てると、
流石、母親って感じがした。
普段、仕事で帰りが遅くなる時とか聖月ちゃんは?
あぁ、国枝琉奈って子覚えてる? この先の*丁目に
住んでるの。彼女の実家は大家族だから、1人や2人増えたって構わないって
皆んなに愛されて、彼女は本当に幸せもんだ
……う~ん、お父さんー、いもようかん~……
大地の寝言に、顔を見合わせ吹き出した。
―― ったく、さっき散々食っただろがっ。あぁ、ホント、そろそろベッドへ連れてくよ
―― じゃ私も、そろそろお暇しようかな。こんな時間までお邪魔してしまって……
いいや、俺の方こそ助かった。―― 大地?絢ちゃんにご挨拶
う~ん……絢ちゃん……バイバイ。またね
バイバイ、大地くん。おやすみ
大地は自室のベッドへ落ち着かせると
速攻で寝落ちした。
俺は玄関先で絢音をお見送り。
あ、あのさ……
はい
もし、迷惑でなかったら、また来てくれないか?
自分でも驚いた再来訪アプローチ!
背を向けた絢音の姿を見たとたん、
あんな言葉が口をついて出ていた。
ありがと。今度は聖月と来るね
あ……あぁ―― 待ってる
デパートで彼女と鉢合わせた時は
”こんな所でどうして会っちゃうかなぁ”と
少し気まずかったけど、
大地のおかげで彼女の違った一面も
再発見でき、総じてはとっても有意義な1日
だった。