歳三

へい、おまち!

・・・ラーメンにしては色がまろやかじゃないですか?
それにこの匂い・・・。

花蓮

わかった!!
東北方面だから味噌ラーメンでしょ!!

矢田

嬢ちゃん!!

花蓮

はっ、はいいいいいぃ!!

矢田

そんじょそこらの味噌ラーメンと一緒にしてもらっちゃ困るなぁ?

花蓮

ご、ごめんなさい。

煌炎

わかんねーくせに当てようとすんじゃねェよ。
おっさん、これ味噌カレー牛乳ラーメンだろ?

歳三

煌炎様、さすがですね!!
正解です!!

矢田

狐王皇家の兄ちゃんやるな!!
そうだ、青森県名物味噌カレー牛乳ラーメンだ!

み、味噌カレー牛乳ラーメン・・・?
なかなか欲張りすぎな味付けのバリエーションですね。

花蓮

今まで見たラーメンの中で一番冒険してるラーメンだわ・・・。

煌炎

グダグダ言うなら俺が食っちまうぞ。
食わず嫌いしてんじゃねーよ。

花蓮

煌炎さんにまともな内容で怒られた・・・。

ま、まぁ煌炎様の言う通りです。
食わず嫌いは確かに失礼ですよね。

花蓮

お・・・。

歳三

お?

花蓮

おいしいっ!!

煌炎

だろ?

花蓮

牛乳と味噌でマイルドな味わいなんだけど、スパイシーなカレーとコクのあるバターが混ざり合って全く喧嘩してなくておいしい!!

煌炎

まぁ正式には『味噌カレー牛乳バターラーメン』だな。

本当、美味しいですね!!
やはり食わず嫌いは良くないとわかりました。

味に感銘を受けつつ、話題は先ほどの事件に移る。

煌炎

おっさん、さっきのあれはなんだ?

煌炎がそう切り込むと、二人の男は真剣な表情になる。

矢田

ありゃぁ、鎌鼬様の仕業さ。

煌炎

鎌鼬・・・?
もしかして七雄の鎌鼬ってやつか。

歳三

はい、先代この地を治めていた鎌鼬様はそれはそれはお優しい方でした・・・。
しかし、先代の死後、領主を引き継いだ鎌鼬様は違った。

・・・というと?

賽が先を促すと、先ほど鎌鼬に襲われた男は指をすっと差し出した。


その指先には、バツ印のような形になった傷跡が残っていた。

花蓮

あれ?
さっきの煌炎さんの治癒で治ってない傷がある。

・・・なんだか花蓮さんの傷と似てませんか?
それに同じ位置ですし。

花蓮

・・・ほんとだ。
私の傷と似てる。

矢田

これが鎌鼬様の印だ。

歳三

鎌鼬様は適当に見つけた人間にこの印を残される。
言わば自分の獲物だという証をね。

矢田

そして俺のように襲われるのさ。
『死ってどんな感じ?』?と聞きながらな。

歳三

鎌鼬様に襲われて助かった者は矢田坊が初めてかもしれんな。

煌炎

『死ってどんな感じ』、ねぇ。

花蓮

そ、そういえば煌炎さんって一回死んでたよね?

煌炎

んぁ?
あー・・・そういや四国でいっぺん死んだな。

歳三

ははは、いくら煌炎様でも死んで生き返るなんてありえないですよね。

そういって笑い飛ばす男たちであったが、一行の真顔をみて目をぱちくりとさせる。

矢田

・・・世の中何が起きるかわからないようになっちまったなぁ。

歳三

・・・驚きすぎて一周回って心が落ち着いてるよ、矢田坊。

と、とりあえず印をつけられた者は襲われるということですが・・・このままだと花蓮さんも危ないということですね。

歳三

・・・そうですね。

煌炎

まぁ、俺にしちゃぁ追う手間が省けてありがてぇけどな。

花蓮

少しは私の心配をしてくれてもいいんじゃない!!??

煌炎

俺がいるし、大丈夫だろ。

花蓮

ホント自意識過剰!
でも、そういう不意打ちずるい・・・。

・・・・。

矢田

でも狐王皇家の兄ちゃんの剣はさっき折れちまったんじゃあねぇか?
本当に俺を助けたばかりにすまねぇ・・・。

煌炎

片方ありゃなんとかなる。

しかし、今は良くても何れあの方を討つ時にはそれでは太刀打ちできませんよ。
一筋縄でいく方ではないですから。

煌炎

不本意だが仕方ねぇ。
鎌鼬と片を付けたら兄貴んとこに行くか。

歳三

もしかして、玄奘様ですか?

花蓮

玄奘様・・・?
どこかで聞いたことあるような・・・。

北海道で北方の守護を任されている煌炎様のご兄弟です。

花蓮

ああ!
以前旅の目的を聞いた際に話に出て来た煌炎さんのお兄さんね!

矢田

狐王皇家の玄奘といったら、鍛冶の天才だからな。
予約は数年先まで埋まってるって噂よ!

花蓮

ほへ~。
きっとすごく男らしい人なのね。

煌炎

・・・男らしい?
あいつが・・・?

花蓮

煌炎

・・・とりあえず、あの斬撃は厄介だな。
なかなか鋭いし早い。

煌炎様の剣が一瞬で折れましたからね。

煌炎

立ち回りに気を付ける必要がありそうだ。

花蓮

・・・煌炎さんが真剣に戦法を考えてるのって珍しい。

煌炎

・・・あいつはかなり厄介なタイプだから。

隙が無いのですか?

煌炎

逆だ、隙がありすぎる。

歳三

煌炎

大抵は防戦しつつ隙をみて太刀をふるうのが一般的な戦闘だ。
だから大体相手の動きが制限されて予測できる。

花蓮

・・・予測できるのって普通じゃないと思うよ。
でも何戦も戦ってきた煌炎さんたちならできることなのかな・・・?

煌炎

だがあいつは違った。
【何も考えないまま】突っ込んできてやがる。


・・・それはかなり厄介ですね。

花蓮

え?え?
結局どういうこと??
あれ?
分かってないの私だけ?・

歳三

つまり、自分が傷つくのも構わず突っ込んでくるから行動が予測できないということですよね?

煌炎

そういうこと。
予測できないし、何も考えてないことで最速で攻撃してきやがる。

戦闘をする上でそういう敵が一番厄介ですよね。

煌炎

まぁグダグダ言ってもしかたねーし、やるしかねー。

一行が同意しようとするのと煌炎が『おかわり』と器を差し出すのはほぼ同時であった。

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