今日から学校は新学期。

車で20分ほど走った、
閑静な文教地区にあるミッションスクール・
王立高等アカデミー。

遠方からの入学者用に学生寮も完備。

校則は他の私立校と比べればかなり寛容だが、
違反者には容赦がない。

新学期早々、朝寝坊でかなり出遅れ、
教室ではおそらく1時限目の授業が始まってる頃だ。

***  ***  ***

高等部第二本校舎2F、1-S(1年S組)教室。

後方扉の所でひと呼吸つき、
体を出来る限り屈めて静か~に扉を開けた。

時間割り(タイムテーブル)通りなら、
今日の1時限目は定年間近の”Mrスリープ”こと、
ブラザー・カエサルが担当の古文。

……の、ハズなんだが、
どうも聞こえてくる声はそうじゃない。

だって、古文にシェイクスピアの
”ロミオとジュリエット”なんか朗読しないよな?

で、チラリ覗き見た教壇に立っているのは ――、
  
何かと言えば
『うるせぇー!文句あんならタイマン勝負だ』と
生徒相手にマジ切れし凄んでくるアカデミーの
悪魔こと・英語担当・百蘭(びゃくらん)だった。

やっべぇぇー、嘘だろ~……
なんでよりによってあいつなんだよ……。

俺はどうか見つかりませんよーに! 
と、心の中で祈りながら、
教室最後尾の席の後ろを匍匐(ほふく)前進で
突き進む。

近くの席の皆んなはもちろん俺に気付いているけど、
百蘭の場合クラスメイト1人のドジの責任を
連帯責任と称して、クラスメイト全員に何らかの
ペナルティを与えかねないので、
皆、俺の事は見て見ぬふりをしてくれる。

しかし、自分の席まであと数メートルと迫った所で
前方から黒板消しが俺目掛けて手加減なしの
スピードで飛んできた!

俺は顔の先数センチでそれをナイスキャッチ。

百蘭

……おそよう、Mrランカスター

かなり怒りを含んでるように聞こえるその口調は、
いつも聞き慣れてる声より2オクターブくらい低い。

それだけで、俺の背筋に冷水をぶっかけられたような
悪寒が走った。

和葉

お早うございます、ブラザー・百蘭

内心はビクビクだけど平静装い着席。

百蘭

……新学期早々、重役登校たぁお前もえらく出世したもんだなぁ、ええっ?

和葉

アハハハ、それほどでもあります

百蘭

今日私は非常に機嫌がいい、従ってお前へのペナルティもあとでゆーっくり考えてやるから、楽しみにまってろよー

つまり、物凄く機嫌わりぃーからペナルティは
覚悟しとけって事ね。

(;´д`)トホホ……。

これで確実、百蘭に目ぇ付けられたよな……。
  

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