タキ

……もう日が照ってきてる。
この時期暑いんだよな……

タキ

はあ。
野菜って収穫は楽しいんだけど、それまでが地道だよなあ……

タキ

もう少し暑くなったら、花が咲いて実も膨れてくるかな。

タキ

……その頃には、私達がいられるかどうかはわかんないんだけど。

タキ

ふう……
ジョウロ重いな……

タキ

……従順に動くフリは、たぶんあと数日だろうからいいんだけど。

タキ

この三年間見てきて……わかったこと。

タキ

一つは季節。
ここでの曜日とか月の数え方はわからないけど、太陽や風、草木の移り変わり具合から『学校』……前、の記憶の世界とかなり近い。

タキ

二つ目はそれに伴うマナの日程。
一日目に外出、、帰りは二日目の朝。
そこから二日間実験室にこもって、四日目の朝に私達の読書の成果をもらう。

タキ

五日目はのんびり屋敷内を出歩いて……六日目にはまた外出、のサイクルは三年間ずっと同じ。
たぶん曜日が六日で一週間とするのかもしれないけど、それだったら月日の数え方も変わってくる……

タキ

脱出……するとしたらマナの外出時がキモかな。
一週間ごとに記憶を覗かれてるから、考えないようにするのは骨が折れた……

タキ

……ミヤちゃんにも相談できなかったし。

ミヤ

……『次』が今よりもっと良い世界だなんて保証もどこにもないのよ…

タキ

……わかってる。
わかってるよ、ミヤちゃん。
それでもおかしいんだ、この世界……

タキ

それに、マナが嘘をついてるのは間違いない。

タキ

私達がマナの言うようにただ人格があるだけの記録媒体だとしたら、こうして有機物を食べるのはどうして?
食べて排泄する……〝生命〟であるのは確かなのに、この三年間体に成長もなければ不調もないのはどうして?

タキ

加えて、私達に運動をするよう指示したのもマナだった。
記録媒体なら定期メンテナンスだけで済むはず。わざわざ故障するかもしれない機会に放っておく意味がわからない。
……それが三つ目。

タキ

四つ目は、私達みたいな超技術の機械……?が作れるようなんだったら、どうしてマナは毎週泊りがけで出かけていくのか。
出かけないで済む措置は、装置はきっとあるはず。

タキ

脱出するかもしれない危険思想の私を放って外に出るのにはそれなりの理由がある。
私達を外に出さない理由も……たぶん、一緒かも知れない。

タキ

五つ目は……

ミヤ

タキちゃん?

タキ

っ!!

ミヤ

水やりから戻ってこないから心配になって……
立ち尽くしてどうしたの?

タキ

あ、ああ……
ちょっと、考え事。

タキ

ていうか、また夜ねって言っちゃったけどご飯は一緒だったよね。
うっかりしてた。

ミヤ

……

ミヤ

まったくもう。
準備が出来たから、冷めないうちに食べましょ。

タキ

うん。ありがとう……。

タキ

……まあ、あとで考えればいいか。
とにかく『今』の世界には妙なところが多すぎる……っていうのだけ、今は整理出来れば。

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