……
……あら?
あっ
ミヤちゃん……
おはよう、タキちゃん。
おはよう。
今朝はずいぶん早いのね。
なにか特別な日だったかしら?
ううん、特に。
ただ……
あの日から、もう三年も経つんだなあ、って。
……!
……そうね。今日で丸三年……
そう思ったら、なんか寝つけなくて。
ここに来てから……私達が出会ってから。
あの『学校』というプログラムを解いた日から。
忘れるわけないわよ……。
忘れられないわ。二人の大切な思い出だもの。
うん。それでね……
話があるの。
……
……
まず状況を整理しよっか。
ここはマナ……マナティリア・ノークツウォルヴの屋敷。
その内私達が入れるのは図書室と庭園、運動場。あとはこの廊下と、各自分の部屋のみ。
マナの実験室みたいなところには入れない。
……ええ。
毎朝庭園の野菜を世話して、昼は運動場で遊んで、夜は図書室で〝読書〟をする。
それが私達の日課。
……入れない、だけじゃないよね。
私達はこの三年、屋敷から一歩も出してもらえたことがない。
屋敷の周りは高い生垣で、窓から外は見えない。玄関の方にも行かせてもらえない。
私達に外の世界のことはわからない……
……何が言いたいの、タキちゃん。
……ここって、『学校』と似てる。
……!
様式が違うだけ、自由度が増えただけ。
私達はまたあれと同じ閉鎖空間にいるんじゃないか……って。
何を……考えすぎよ。
本当にそうかな。
〝今〟が〝現実〟である保証ってある?
〝見ている世界〟が〝正しい〟と判断するに至るだけの確たるものは、私達の感覚では捉えられない。
……そんなの、『学校』のときに嫌というほど経験したじゃない。
……
……タキちゃん。
落ち着いて聞いてほしいの……
それを追究して、追及して、言及して、糾弾したとして、何かが変わるの?
変わるよ。
『次』の世界に至る道を、ここが正しいか正しくないかを、確かめて進む。
……『次』が、今よりもっと良い世界だなんて保証もどこにもないのよ……。
そうだね。
でも、私にはそれしか能がないから。
……。
好きにしたらいいわ。ただし、マナに見つからないようにね。
うん!
ありがとう、ミヤちゃん!
じゃあまた夜に!
それじゃ、早速だけどもっと細かく整理しよう。
まとめておくとあとで楽だって『学校』の時にも……
あ、でもその前に庭園の水やりしなきゃだ。
来たばかりの時は見たことない野菜ばっかりで……家庭菜園の本片手に土まみれになったなあ。
懐かしい……
この世界も、結構好きなんだけど。
……でも。
私は見極めたい。
自分の〝違和感〟を。
この世界の〝正しさ〟を……。