それから三ヶ月後、季節は三月を迎えた。三月は出会いと別れの季節。桜前線が北上する中、人々はあるいは新しい出会いに想いを馳せ、あるいは別れを惜しんで切なくなる。学生なら卒業して新しい未来へ旅立っていく。
千恵の高校でも例年通り卒業式を迎えた。卒業する生徒たちはそれぞれの未来へ歩み出す。
しかし、全員に明るい未来が待ち受けているとは限らない。今後はニートになって先の見えない生活を送る人やワーキングプアになって貧困にあえぐ人もいるのだろう。そのため中にはまだ卒業したくない人もいるはずだ。
高校ならほぼ全員がスムーズに卒業するが、大学では故意に留年したり大学院に進学したりしてモラトリアムを引き延ばそうとする若者も多い。そんな人にとって卒業は人生の新しいステージに進出することではなく、それまでの惰眠を貪っていただけの日々が断罪される最後の審判だろう。それでも送り出す方は明るい未来が待ち受けていることを祈るしかない。
この季節には桜の花が咲く。桜の花はやがて散るが、地球が太陽の周りを公転して同じ所に帰って来ると、もう一度同じ花を咲かせる。何かを象徴するように同じことを繰り返すのだ。そう、同じことを……。