桐沢 倫太朗

―― じゃあ、お疲れ様でしたぁ、お先に失礼します

看護師(女性)

あぁ、桐沢先生、お疲れ様です。お気をつけて

この日も倫太朗はいつものように通用口の
詰め所にいる警備の本間さんに挨拶し、
実地臨床研修先の市立病院を後にした。

現在の時刻、午後5時半 ――

冬の夕暮れは早く、
辺りはすっかり宵闇に包まれている。

”うぅ~~、さぶぅ~”と、コートの襟を立てて、
ふと、空を見上げれば ――

上空より何やら白っぽいふわふわした物が
無数に舞い降りて来る。

桐沢 倫太朗

あー、雪だ……

道理で底冷えするワケだ。

知らず知らずのうちに猫背になって、
家路を急ぐ。

桐沢 倫太朗(きりさわ りんたろう) 
25才。

この国立星蘭大学附属市立秀英会病院の
前期研修医。

姉が再婚し出戻った為、
1人暮らしのアパートを探しているが
未だ希望に合った物件は見つかっておらず、
自宅通勤だ。

桐沢 倫太朗

―― ごめんなぁ、ちゃんと家で飼ってあげられればいいんだけどうちの家族、ペットアレルギーだから

ここは帰る途中にある小さな児童公園。
2~3ヶ月程前からミケの仔猫が
住みついていて病院の職員食堂からもらっておいた
残飯を与えている。

猫が無心に餌を食べる可愛い姿に癒され
自宅へ向かう。

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