煌炎

・・・。

花蓮

・・・。

・・・。

険悪なムードが漂う中、煌炎一行は京都を後にし、新潟県に向かうため、群馬県の山中にて足を進めている最中である。

煌炎

まだむくれてんのかよ。
覚えてないけど、わりぃって謝ってるだろ。

花蓮

それが謝る態度なの煌炎さん!!
乙女のファーストキスを奪っといて・・・ファーストキスはもっとロマンティックにしたかったのに!!

煌炎

・・・女ってめんどくせー。

煌炎様その一言が余計ですよ!!

花蓮

もう絶対許さない!!

賽にはわかるが、この面倒な状況にだんだんと機嫌が悪くなっていく煌炎。


そんな空気を一切読まず、木々の間で二人の少年少女が悪戯を仕掛けるタイミングを窺っていた。

錫(シャク)、久々の獲物だ!!
この地にようやく旅人が訪れたぞ!!

杖(ジョウ)、落ち着いて。
声が聞こえちゃう。

す、すまん!
つい気が急いてしまってな。

杖らしいね。
さて、どちらが先にやっちゃう??

まずはわしからじゃ!!
ふっふっふ、どこからともなく聞こえる笑い声。
不気味じゃろう、恐れおののくがいい!!

あれ?
煌炎様、笑い声が聞こえてきません?

煌炎

知るか、どーでもいい。

あれ?
無視されてない??

なんだとこのやろぅ。
無視するとはいい度胸じゃないか!!

も、もう一回やってみよう、杖。

あ、あれ?
絶対笑い声してますって、聞こえますよね花蓮さん。

花蓮

・・・・。

あ・・ごふぉっ!!
笑いすぎてむせっ・・・ごほっ!!!

じょ、杖!!大丈夫!?
・・・許せない、杖の頑張りを・・・!!

キッと錫は前方を行く煌炎一行を睨むと、近場にあった強大な岩を馬鹿力で持ち上げると勢いをつけて投げた。

杖の恨み・・・!!
ふんっ!!

か、花蓮さん後ろ!!

花蓮

へっ!?

その殺気にすぐさま賽は振り返るが、その岩は花蓮目掛けて一直線に向かってきていて前方を進んでいた賽は間に合わない。

しかし、そんな速度にも対応できる男が一人。

花蓮

こ、煌炎さん・・・。

その岩を剣で真っ二つにした煌炎はいら立った鋭い眼光ではるか後方を見据える。

煌炎

これ以上面倒かけんなクソ餓鬼ども。
俺には見えてるぞ。

ひぇっ。

わぉ。

花蓮

・・・・もう許すよ、煌炎さん。
覚えてないならしょうがないよね・・・。

岩を回避した安堵のため息か、諦めのため息か、重々しい空気の中一言を発したのは花蓮であった。

煌炎

・・・おー、覚えてないんだから仕方ねぇ。

花蓮

だから自分で言わないの!!

煌炎

うるせー、バーカ。

花蓮

・・・もうっ。

煌炎が纏っていた空気が心なしか和らぐ。

あれ???
わしら放っていちゃついてないか?

・・・みたい。

大丈夫ですよ、私も蚊帳の外です。

わわわ何じゃお主!!
びっくりするではないか!!

いえ、一応牽制を。
あなたがたは天狗の子たちですね?

いかにもいかにも。

群馬は天狗が多いと聞きます。
しかし、これ以上悪戯を仕掛けられたら煌炎様の機嫌がぶれにぶれまくって私としても気が気じゃありません。

というと?

全天狗に伝達お願いします、これ以上悪戯を仕掛けてくると全員から揚げにすると。

・・・・。

・・・・人間怖い。

こうして賽の牽制もあって、道中これ以上邪魔されることなく新潟県に煌炎一行は到着したのであった。

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