オルドヌング

と、まあこんな話じゃ。

 昔を懐かしむかのようにオルドヌングは目を閉じる。酒場はどっと歓声に包まれた。

いいぞー、あんちゃん!

オルドヌング

そうじゃろうそうじゃろう?

パウル

いや……おっさんの方じゃねぇぜ?

オルドヌング

は?

パウル

あっちだよあっち。

 少年が指さす方向を見ると、演劇をやっているようで、今は騎士に扮した青年が龍を討ったところだ。

オルドヌング

負けた、じゃと。しかもここ由来の戯曲に……!

パウル

残念だったな、おっさん。金を支払ってくれる人はいないようだ。俺含めて。

 ニマニマと笑うパウル。グヌヌ、こうなってしまった以上今の金を創るか……と思案していると、一人の絵描き風の少年がとてとてと寄ってきた。

ルートヴィッヒ

いやはや、いいものを聞かせてもらいました。

オルドヌング

お主は……?

ルートヴィッヒ

気づかれる前に放浪した者です。名乗るほどでもない、しがない絵描きですよ。

オルドヌング

ふうむ……しかしどっかで見たことがある気が……

ルートヴィッヒ

さて、パウル君。今まで長い間滞在していましたが、そろそろ実家に帰ろうと思います。せっかくなので、残りの宿代は彼の分に充ててください。

ルートヴィッヒ

とてもいい話をしてくれたので。

 それでは、と言って少年は出て行ってしまった。夜道は危ないと追いかけようともう姿が見えない。

ルートヴィッヒ

……歪みが嫌で出ていましたが、初めて帰ってみましょうかね、兄さん。

 夜空の下、月を見上げながら少年――ルートヴィッヒ・グリムは言う。体はもう、家の前にたどり着いていた。

あとがき

 ここまで見てくださりありがとうございます。これにて、彼ら、御伽噺達の物語は一旦終了です。
 のろのろと進んだり、止まったり、ゆっくりゆっくり進んで途中で加速したりしましたが、無事終えることができました。自分でも驚いています。
 えー、あとがきって何書けばいいかわからないなぁ。
 あ、ちなみにの話ですが、書き始めた当初は違った終わり方をするつもりでした。とても下手糞なまとめ方なので伏せますが、ストリエが終了すると聞いてやる気のなくなったころ(継続ありがとうございます!)に民話にハマりだして、書き始めはヴィルヘルム寄りの考えっだったのがヤーコプ寄りになっていったので、ヤーコプの意志を曲げにくいなとなり説得となりました。
 では、これにて終わりとします。
 次回作(いつ始まるか未定)で、あるいは幕間で、お会いしましょう。

エピローグ「その酒場にて」

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