昔を懐かしむかのようにオルドヌングは目を閉じる。酒場はどっと歓声に包まれた。
と、まあこんな話じゃ。
昔を懐かしむかのようにオルドヌングは目を閉じる。酒場はどっと歓声に包まれた。
いいぞー、あんちゃん!
そうじゃろうそうじゃろう?
いや……おっさんの方じゃねぇぜ?
は?
あっちだよあっち。
少年が指さす方向を見ると、演劇をやっているようで、今は騎士に扮した青年が龍を討ったところだ。
負けた、じゃと。しかもここ由来の戯曲に……!
残念だったな、おっさん。金を支払ってくれる人はいないようだ。俺含めて。
ニマニマと笑うパウル。グヌヌ、こうなってしまった以上今の金を創るか……と思案していると、一人の絵描き風の少年がとてとてと寄ってきた。
いやはや、いいものを聞かせてもらいました。
お主は……?
気づかれる前に放浪した者です。名乗るほどでもない、しがない絵描きですよ。
ふうむ……しかしどっかで見たことがある気が……
さて、パウル君。今まで長い間滞在していましたが、そろそろ実家に帰ろうと思います。せっかくなので、残りの宿代は彼の分に充ててください。
とてもいい話をしてくれたので。
それでは、と言って少年は出て行ってしまった。夜道は危ないと追いかけようともう姿が見えない。
……歪みが嫌で出ていましたが、初めて帰ってみましょうかね、兄さん。
夜空の下、月を見上げながら少年――ルートヴィッヒ・グリムは言う。体はもう、家の前にたどり着いていた。
あとがき
ここまで見てくださりありがとうございます。これにて、彼ら、御伽噺達の物語は一旦終了です。
のろのろと進んだり、止まったり、ゆっくりゆっくり進んで途中で加速したりしましたが、無事終えることができました。自分でも驚いています。
えー、あとがきって何書けばいいかわからないなぁ。
あ、ちなみにの話ですが、書き始めた当初は違った終わり方をするつもりでした。とても下手糞なまとめ方なので伏せますが、ストリエが終了すると聞いてやる気のなくなったころ(継続ありがとうございます!)に民話にハマりだして、書き始めはヴィルヘルム寄りの考えっだったのがヤーコプ寄りになっていったので、ヤーコプの意志を曲げにくいなとなり説得となりました。
では、これにて終わりとします。
次回作(いつ始まるか未定)で、あるいは幕間で、お会いしましょう。