・・・というわけで父君に託された使命を果たすため私たちは東京へ倒幕をしに向かっているのです。

煌炎

・・・。

花蓮

・・・つまり、道を外したお兄様を倒すために幕府に向かっているのね。

煌炎

別にしめーとかは関係ねェ。
久々に兄貴に会って蹴りを入れたい気分になったんだよ。

花蓮

ふふっ。

煌炎

生温かい目で見てくんな。
きもい、うざい。

煌炎たちが旅を始めた経緯を話していると、しびれをきらしたのか前方に立っていた男が話しかけてきた。

組合員

おうおう、俺たちの存在を無視して通ろうとするたぁいい度胸じゃねえか。

その男の声がすると同時に、煌炎たちをガラが悪い男たちが取り囲んでいく。

花蓮

ひっ。

煌炎

・・・ぁんだ?
いたのかおたくら。

煌炎様、それは火に油を注ぐような発言ですよ。

組合員

お前ら、福岡にいてまさか俺たちのことを知らないとは言わないよなぁ?

煌炎

知らね。

組合員

ああんっ!!??

・・・さっき聞いたじゃないですか。
きっとこいつらが『我』という組合ですよ。

煌炎

興味がねー事は覚えねぇわ。

花蓮

ちょ、ちょっと、お兄さん!

組合員

兄貴、こいつら生意気ですぜ。
通行しようがしまいが焼きいれときましょうや。

花蓮

生意気なのお兄さんだけだし。

組合員

はぁあああんッ!!??

花蓮

ごっごめんなさい!!

そう男が言うと、集団の中心からゆっくりと兄貴と呼ばれた男が前に出てくる。

幹部

・・・。

煌炎

お?
貧血か?
顔が青いぜ?

その言葉を受けて、真っ青な顔をした男は額に青筋を浮かばせる。

幹部

・・・殺す。

その言葉が言い終わるか終わらないかのうちに、男の鋭い爪が煌炎めがけて繰り出される。

幹部

・・・・。

煌炎

あんだよ。
俺ァおたくの体調を心配してやったんだぜ?

しかし、煌炎はいとも容易くその爪から繰り出された斬撃をよける。

躱したのもつかの間、お次は集団の男たちから銃弾の雨がふってきた。

花蓮

・・・ほんとにお兄さんって人間なの?

さすが煌炎様です。

煌炎は弾丸が見えているのか、ひらりひらりとそのすべての弾丸を蝶が舞うかのように躱していった。

我頭

・・・見事な躱しようだ。

その声が響いたかと思うと、男たちの隊列の中心が即座に割れ、けだるげな拍手とともに男が現れた。

煌炎

ベルトコンベアみたいにどんどん野郎が流れてくるな。

我頭

そして度胸もあると見た。
結構なガキだ、気に入ったぞ。

組合員

我頭の旦那、どうして止めるんですか。
こんな糞生意気なガキ、全員でぼこしちまいましょう。

我頭

いっちょ前に口出しをするな、青二才が。
相手の力量も読めん奴はこの『我』には必要ない。
こいつはあの吸血鬼が先祖返りしたうちの奴の一撃を躱したんだぞ。ましてや銃まで躱しやがった。
ただもんじゃぁねぇ。

煌炎

ホントに貧血だったのかよ。

幹部

ぐぬぬ。

我頭

言い遅れたが、私は我頭(ガトウ)。
こいつらの頭をはってる者だ。

煌炎

なら話ははぇえ。
とっととこいつらをどけてくれ。

我頭

お前さんたちは本州に渡りたいのか?

煌炎

ちょっくら幕府に用があってな。

我頭

さっきちらっと耳にしたが、倒幕しに行くんだって?

煌炎

聞き耳立ててんじゃねーよ。

我頭

しかし、そのまま東京に向かっても幕府に仇なす奴は結界に阻まれて入れないぞ。

えっ、そうなんですか。

我頭

・・・実証済みだ。

煌炎

おっさんが言うと説得力あるな。

我頭

はっ、しかしどうしても行きたいってなら、この縁だ。
秘策を教えてやろう。

そうして我頭はゆっくりと語りだしたのだった。

橋を牛耳る筋者の章【転】

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