チアキ

ねえ、怪盗さん?

キャラメリゼ

……ああ

チアキ

あのー…もしかしてさ…いや、僕の勘違いだったら嬉しいんだけどさ…そのぉ…

キャラメリゼ

…………ああ

チアキ

…………迷った?

キャラメリゼ

……………ごめん

チアキ

やっぱり!!

チアキ

方位磁針は!?持ってたよね!?

キャラメリゼ

…さっき、落ちただろう?崖から

チアキ

うん…

キャラメリゼ

そのまま、川に着水しただろう?

チアキ

そ、そうだね…

キャラメリゼ

その時…少なからず私は、川底に体を打っているのだが…

チアキ

…僕を助けてくれたんだよね…その節は大変お世話にーー

チアキ

ま、まさか……

キャラメリゼ

ああ…壊れたらしい、それで

チアキ

うそぉ!?

チアキ

ど、どうしよう…それじゃあ、僕達…

チアキ

どうやってみんなのところに戻るのさ!!

何故こんなことになったのか…それは、三時間ほど前に遡るーー。

第5幕
飛び降りろ、未開の遺跡!!

シオ

もうちょいで夏季休暇だ!…って思ったらヘリを出せなんて…パトロンも無茶言うよなぁ

シオのボヤキは、プロペラの音にかき消されることなく、ヘッドホン越しの私たちの耳に届いた。それに対し、私にパラシュートを取り付けていたサクラが失笑気味に返す。

サクラ

でもパトロンらしいや。この前もそこそこ急だったしね

シオ

でもよォ…お前はいいかも知んねえけど、俺は追試蹴ってきてるんだぜ?これ、留年決定じゃねえの!?

サクラ

それは、講義をまともに受けてこなかったシオが悪い。普通に学校生活送ってれば、進級なんて簡単だよ

シオ

ちぇー、優等生はいいでちゅねー

サクラ

っ…と。

サクラ

どうかな、キャラメリゼくん。苦しくない?

シオ

無視かよ

キャラメリゼ

ああ、大丈夫…ありがとう

キャラメリゼ

しかし…国境を越えるため、ヘリで雲の上を飛んでいくなんてね…

今回のターゲットは、フランス国内にあるものではなく、イタリアの未開拓地にあると言われている『クローウィングオパール』…別名『アストライアの天秤』と呼ばれているそれは、正義と悪を判別する力を持つとされている。天秤なんて持って帰ってくるのが大変だと思ったが、ファウスト曰く、これは真っ黒な水晶のことだという。若しかすると、この他にもうひとつ片割れが存在するのかもしれない…まあ、今回頼まれたのはオパールだけだから、それ以外を盗って来るつもりは無いけれど。

サクラ

パスポートで入国して、即逮捕…なんてことになったら、怪盗の面目が立たないでしょう?

サクラ

それに、こっちの方が犯罪らしくて、怪盗らしい!!

シオ

偽造パスポートでの入国も、立派な犯罪だけどな

サクラ

そんな時間なかったじゃないか!

キャラメリゼ

あったら偽造パスポートだったのか…

サクラ

にしても、今回はスパンがはやいね…何かあったのかい?

キャラメリゼ

………いや。

キャラメリゼ

気分だよ

シオ

急ぎの用ってわけじゃなかったんだな。

シオ

なら、俺の追試が終わるまでちょっと待ってくれたりしてもーー

サクラ

キャラメリゼくん、ポイントが近づいてきたよ!

シオ

聞けよ!!

こちらは雲の上を飛んでいるわけだから、そのポイントとやらは見えなかった。一人フランスに残っているファウストの話によると、そのポイントには遺跡があるらしい。深い森の奥にあるもので、その立地ゆえ観光地にはとても向かない場所だそう。そこにあるとされているクローウィングオパールに関しても、ほとんどデマ話のようにまことしやかに囁かれている噂らしく、今回の犯行はかなりスピーディに済ますことが出来るだろう…との事だ。

キャラメリゼ

国境を越えてしまえば、シュトーレン刑事が来る心配もないし…何より、情けないことに私の知名度はさほど高くない。実在するかもわからないものを警備しに来るほど、警察だってバカじゃないだろう…

盗みの前に、国境侵害で訴えられそうだがね。

サクラ

キャラメリゼくん、クローウィングオパールを手に入れたら、すぐにポイントBを目指して。僕達も、この後すぐに向かうから

シオ

失敗すんじゃねえぞ。こっちはお前抜きで帰国なんて、できねえんだからな!

キャラメリゼ

分かってるよ。でもそうだな…この前みたいなことがあると面倒だし…

キャラメリゼ

万が一、3時間以内に私がポイントBに戻らなかったら、一度帰ってファウストに連絡してくれ。

サクラ

へ?いいのかい?

キャラメリゼ

その代わり…2日後にもう一度迎えに来てくれないか?流石に生身の体ひとつじゃ、フランスに帰れないからね

シオ

それでも帰ってこなかったら?

キャラメリゼ

それはないようにする。地図も方位磁針もあるから大丈夫だよ。

シオ

そ。分かったよ

サクラ

キャラメリゼくん、そろそろ…

サクラに促され、私はハッチの前に立った。ヘッドホンを外そうと手をかけると、慌てた様子のサクラに手で制される

サクラ

鼓膜破れちゃうよ。それは、ちゃんと降りたら外して

キャラメリゼ

……分かった

サクラ

それじゃ、開くよ

ハッチが開かれると、物凄い勢いで外に投げ出されそうになる…それを手すりをつかむ事で耐え、改めてハッチの外を見据えたーー

サクラ

君のタイミングで行って!パラシュートを広げるタイミング、間違えないでね!!

シオ

気ぃつけろよ

キャラメリゼ

……On y va !!

その後、ロクな警備など配置されていなかった遺跡へ侵入を果たした私は、無事にオパールがあるとされている、最奥の部屋にたどり着いた。しかし、部屋はもう何年も人の手が入っていないかの様にボロボロで、漆黒の宝玉などどこにも見当たらなかった。

キャラメリゼ

ガセネタでも掴まされたのかな?

辺りを見渡しても、宝玉が置いてありそうな台も小部屋も見つからない…もう帰ろうかと、入り口付近の壁に手をつく…と

キャラメリゼ

!?

目の前の壁が音を立てて動き出し、隠し通路が現れた…こういう仕掛けがあるなら、先に言って欲しかった…!帰っちゃうところだったじゃないか…!!

そのまま奥に進むと、先ほどより少し狭い部屋に辿り付いた。同じようにほこりまみれのさびれた部屋だったが、今度は違う…あれは…!

キャラメリゼ

黒い宝玉…アレが、クローウィングオパールか!

位場所にあるスイッチを押さなきゃ見つからない隠し部屋…そりゃあ、幻の様な扱いを受けてしまうわけだ。

キャラメリゼ

迷宮みたいになってるのを想像して、結構時間とって貰っちゃったけど…全然余裕だったな。さっさと回収して、ポイントBに…

キャラメリゼ

……また、あの幻聴、聞こえるのかな…

キャラメリゼ

……怖がっても仕方ない!!来るなら来い!!

宝玉のひやりとした感覚…それを感じた瞬間、私の意識は一気に持って行かれた。

キャラメリゼ

やっぱり…!本当に…何なんだ、これ…!!

気のちの悪い頭痛のさなか、また、あの声が聞こえる--

籠から逃げ出したお姫様は、外の世界に触れました。
様々な匂いがする風…ざわざわと音を鳴らす木々…フクロウのさえずりに、小川の流れる音…はじめてのことに、お姫様は、涙が止まらなくなってしまいました。

「どうしたの?どこか痛いの?」
魔物の男の子は、心配そうに聞きます。
「ちがうわ。だって、外の世界が、こんなに優しい音に溢れているなんて、思わなかったの。びっくりしただけよ」
お姫様は、そう答えました。

幸せなお姫様の答えに、魔物は安心した様に息を吐きました。お姫様は、とても幸せでした。

…………しかし

Akiotuaykaremirezeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!

キャラメリゼ

っ!!!!

聞き覚えのある怒声に、あわてて宝玉を持って飛び退く…何でこいつらがここに…!!

レンマ

Ihcc...Inegetnnajeneoyogara!!

ムチウ

Attku...aninayettnnadaoh.nnanokeaegataraberurinikamettnnador.

レンマ

Nnadotogara!!!!!

チアキ

Uhatirotomayemetukadasioy!esakkukoiutiatonin!!

チアキ

……やあ、怪盗さん。一週間ぶりかな?

キャラメリゼ

……どうしてここに…地元警察すら相手にしなかったのに…!

チアキ

それ、自分で言ってて悲しくならないのかい…?

チアキ

僕たちの情報収集能力を、侮って貰っちゃ困るね!イサトさんがいればこのくらいーー

ムチウ

イタリアasnnaskuihsetatar,atamatamimiminahiattettadekadekodan.

チアキ

Os er ah i aw an i ed ! ! ! ! !

キャラメリゼ

……?今のうちに帰っていいかな

チアキ

ああこら!!逃げるな!!今度こそ絶対に逃がさないからね!!

キャラメリゼ

やっぱダメか…待てと言われて待つ怪盗はいないよ!!Salut!

壁に小規模の手榴弾を投げ、穴を開ける…煙で視界が奪われている隙に、私はその穴に飛び込んだ。

チアキ

まて!!

ムチウ

!Oi,ametチアキ!!

キャラメリゼ

ふふっ、楽勝楽勝!!

遺跡から華麗に逃げのびた私は、改めて得物のオパールに目を向ける…それは、先ほど見たときと変わらず闇色の禍々しいーー

キャラメリゼ

……あれ?

闇色…じゃない…!?

キャラメリゼ

!!

チアキ

へへっ、みーっつけた♪

キャラメリゼ

ウソだろう!?

撒き切れてなかったのか…!?でも、あの煙幕で司会は完璧に隠されてたはず…なんで…!?

チアキ

あいにく、野生の勘は人より働く体質でね♪
空気の流れさえわかれば、隠された出口がどこなのかは簡単にわかるのさ!

キャラメリゼ

……へえ…君は、鳥か何かなのかな?とても人間業とは思えないね。

チアキ

いやあ、怪盗さんに褒められちゃうなんて、恐悦至極!

チアキ

そのまま、捕まってくれるともっと嬉しいな!!

キャラメリゼ

やなこった!!

私は、近場の木に飛び移り、太めの枝を足場にしてその場から逃げだした…たしか、この近くに…!

チアキ

木を足場にしたって無駄だよ!

よし…いいぞ。このままこっち方面に逃げていけば…!!

キャラメリゼ

っ…!

チアキ

…残念だったね。その先は崖だよ

私が逃げ込んだ場所は、切り立った崖だった。
眼下には濁った川が流れていて、そのまま落ちればーー。

チアキ

そこから飛び降りるも一興だ。でも、ここの川はどこも流れが速い上に浅い…飛び込みに適しているとは言えないよ

チアキ

さあ…盗んだものも持って、こちらへ来て貰おうか?

キャラメリゼ

………

キャラメリゼ

そうだね。それが賢明かもしれない。

チアキ

そうそう。君だって、死にたくはないでしょう…

キャラメリゼ

でも…捕まるのはもっとごめんだね

チアキ

!!!

崖の先から弱く踏み切り、私はそこから身を投げた。
眼下に広がるのは、不穏な音を立てて流れる川…確かに、そのまま飛び降りてしまえば、大けがは免れないだろう…だが、私にはこれがある!

キャラメリゼ

今!!

ごつごつした崖の岩肌に、フックショットを引っかけ、落下を停止させる…実は結構肝が冷えた。冷や汗が止まらない。

キャラメリゼ

……二度としない…

パラシュート、余分に貰っておくんだったな。

チアキ

キャラメリゼェェェェ!!

キャラメリゼ

?ああ、チアキ!驚かせてごめんよ!この通り、私は無事だから…君も安心して仲間の所にーー

……この音…!?

チアキ

へ…?

キャラメリゼ

な…!!

まさか…私を追って飛び降りたのか…!?
驚きの表情を貼り付けたチアキが、眼前を通り過ぎるーー

キャラメリゼ

バカ!!

フックショットから手を放し、チアキの後を追う…クソ…スピードが思う様に出ない…!

キャラメリゼ

間に合え…!頼む…!!

チアキ

ーーっ!!

あと、少し…!!

キャラメリゼ

…!とどいた…!

キャラメリゼ

っ……!!

とっさに身体を回転させ、チアキを衝撃から守る…思いの外強い衝撃に、私はあっけなく意識を手放してしまったーー。

その後、下流に流れ着いた所で目が覚め…現在に至る。

チアキ

うう…イサトさん…モモイグサさん…どこですかぁ…!!

キャラメリゼ

二日で…戻れるだろうか…

こうして…心配事しかない共闘生活が、やむを得ず始まったーー。

第5幕 1ホール目 飛び降りろ、未開の遺跡!!

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