私たちは火葬場の教会に倒れていた。
衰弱していたエルヴィンが目を覚ましたのは数日後のこと。
私たちは火葬場の教会に倒れていた。
衰弱していたエルヴィンが目を覚ましたのは数日後のこと。
もう、平気?
ああ、大分寝てたみたいだな
病人だからね
そうだ……アールグレイが子供たちの人形を火葬したんだよな……俺の身体で
エルヴィンの姿は目撃されなかったみたい。泥棒に盗まれたってことになっているわ
でも、可哀想なことしたよな
そうだね。私とエルヴィンの為にあの子たちが用意したのに
墓でも作るか
え?
墓っていうか、火葬された人形たちの為の石碑みたいなの
そうね……あとお花も植えましょう。何だか、あそこって寂しいもの
あの火葬場の管理者と神父様は知り合いだったからな
よし、後で相談しよう
そういえばエルヴィンはどうやって、人形の国に引き込まれたの?
ルーシーと同じ、手紙で呼び出されたんだ
怪しいとは思わなかったの?
同じ質問をルーシーにしたい
あははは
アールグレイが俺を恨んでいるのなら。その憎しみ全てを俺に向けてくれるのなら、俺はどうなっても良いって思っていた
エルヴィンがいなくなったら私は生きていけない
……一応いただろ? アールグレイが入っていた俺が
バカ!
ルーシー?
あんなのエルヴィンじゃなかった、あんなエルヴィンは許さないもの
………
エルヴィンは私の為に無理をして、そして周りの人たちも大事にする人なのよ。自分より周りを優先してしまう困った人。
私の為に子供たちを傷つけるエルヴィンなんて許さない
私のエルヴィンは貴方だけだから
………うん
そうだ、これ……
………?
渡せなかったけど、誕生日プレゼントだよ
これを作る為に、大きなお金が必要になって……その為に仕事を増やしたんだ。忙しかったのは、それで
……
俺とルーシーの誕生日の真ん中が、俺たちの誕生日だ。俺たちは互いにプレゼントを贈る、そう決めたのに、遅くなってごめん
その、これって
………その……こ、婚約指輪だよ……
婚約指輪をどうして
そ、それは……その
………
あ……ルーシーとこれからも一緒に
何だか順番が滅茶苦茶な気がするけど、まずは私とお付き合いしてくれますか?
ちょっ……最後まで言わせてくれないのかよ
私たちって、正式にお付き合いしていないでしょ?
だったら婚約指輪を贈る前に、お付き合いしなきゃ……恋人になってからプロポーズでしょ
そ、そうだよな
確かに告白したことはなかったけど、俺たちって付き合っているようなものだと思っていたんだけどなぁ
一緒にいるのが当たり前で、好きなのが当たり前だったからなぁ
お付き合いしてくれるの?
ああ、こちらこそお願いします
俺の恋人になってください
……へへへ
まぁ、私はずっとお付き合いしているつもりだったのよ……
一緒にいるのが当たり前で、好きなのが当たり前だったからね
俺も好きだよ
え?
あ、あれ? 私の心の声、漏れてた?
エルヴィン? 今のは、その……
? 何のこと?
俺、何か言った?
もう! イジワルなんだから
それと、神父になろうと思う
エルヴィンが?
仕事の合間に勉強はしているよ
もう、無理ばかりして
ごめん、でも君に相応しい男になるためだから
神父になったら、あの火葬場の教会で働くつもりだよ
孤児院の方は?
神父様はまだまだ元気だ、その間に子供たちの中から立派な後継者が出てくるだろ?
それもそうね
それじゃあ、私は花嫁修業をしないと
料理以外は完璧なんだから、とにかく食べられるものを作れるようになってくれ
善処します
数年後
この音楽は?
火葬人形に贈るレクイエムよ。お別れする人形さんが、ゆっくりお休みできるように
じゃあ、ボクの人形もゆっくり眠れるね
さぁ、君のお別れする人形を火葬場に連れて行くよ
貴方の友達は、この灰になったわ。さぁ、これをお花畑に撒いて
うん!
君の友達も、いつかこの花に生まれ変わるから
祈りましょう
………
貴方が大人になっても、ずっと見守ってくれているからね
うん!
僕の側にいてくれて、ありがとう
これからは、そこから見守っていてね
元気そうね
安心したよ
こんな素敵な火葬なら、恨みを抱く人形も少なくなりそうだね
むしろ心地良いね
人形が燃える姿を見て泣き出す子供たちも少なくなった
泣き出すから、心配になる
私たちはこれからも見守っているわ
………
どうかした?
今、懐かしい声が聞こえた気がするの
きっと、あいつらかもしれないな
うん、私たちのお人形!!