第4幕
ホットミルクアフタヌーン

ベルリーナ

~~~~!!

サヴァラン

幸せそうな顔して食べるなぁ…

サヴァラン

おいしいでしょ?

ベルリーナ

はい、とっても…!
マルシェの近くにこんなお店があったなんて…!!

プレゼント問題を早々に解決した俺たちは、マルシェから少し足を伸ばしたところにあるカフェレストランにいた。とろとろのラクレットチーズがたっぷりかけられた料理は、見た目も味も申し分ない…まあ、それを食べてるのはベルリーナで、俺ではないのだけれど。
俺は焼きたてのバケットをちぎり、オニオングラタンスープに浸しつつ、先ほど買ったアクセサリーをいつ彼女にあげるかを思案していた。このままだと、昼食後にあっさり解散…と言う流れになりかねない…何か考えなくては…!!

  

ベルリーナ

……あの、ブリュレさん

サヴァラン

うん?なに?

ベルリーナ

先ほどのお店で…『サヴィ』と呼ばれていましたよね。あれは一体…

サヴァラン

ああ…あだ名だよ。あの人とは、結構幼い頃から知り合いなんだ。

ベルリーナ

そうですか…それで…

サヴァラン

俺ももう子どもじゃないんだから、普通に呼んでほしいものだけれどね…いやじゃないから、何も言わないけれど…

ベルリーナ

サヴィさん…ですか…

サヴァラン

どうせなら、ベルリーナには名前で呼んで貰いたーー

ベルリーナ

しばらくはないですね

サヴァラン

即答!?いい加減距離を感じて辛いんだけどなっ!?

ベルリーナ

距離感は大事ですからね

サヴァラン

遠い!!ベルリーナが遠いよ!!

かわされちゃった…今日で何とか名前呼びまでには進展させたいんだけどな…!

ベルリーナ

……あの…もう一つ、聞いてもいいですか

サヴァラン

…なあに?

ベルリーナ

……ブリュレさんは、本当に私のこと………好きですか?

サヴァラン

…………へ…?

そんなこと聞かれるとは思わなかった…!?こんなに「大好き」を表現してるつもりなのに…!

サヴァラン

…好きだよ。大好きさ!!当然だろう?

ベルリーナ

……なら、いいんです…いや、よくない…?
…わからないです…

サヴァラン

………どうかしたの?

思ったより深刻そうな声に、少し心配になって訪ね返す…俺、何かしたかな…?

ベルリーナ

どうかしたってほどのことでもないのですが…

ベルリーナ

ブリュレさん、アマンドさんのこと、詳しいと思って…プレゼントに関して聞いたときも、「そんな時期だったか」と言っていましたし…

ベルリーナ

………本当は、アマンドさんのことが好きなのではないのですか?

サヴァラン

ベルリーナ…

もしかしてこれは…

サヴァラン

ヤキモチかな?

ベルリーナ

まじめに答えてください!!
もしそうなら、アマンドさんにとても失礼なことをしているのですよ、あなた!!

サヴァラン

あはは!心配しないで!!
俺は、アマンドには一切そういう気持ちはないよ。

ベルリーナ

……じゃあ、どうしてあんなに…

サヴァラン

話してなかったっけ?俺と彼女は、幼なじみなんだ。

ベルリーナ

……幼なじみ…!?

話してなかったか…アマンドからとっくに聞いているもんだと思ってた…

サヴァラン

アマンドは、花屋さんの生まれなんだ。俺の家がある通りから、三本先の通りにあるお店でね…同い年なのもあって、つきあいは結構長いよ。

ベルリーナ

なるほど…それで、誕生日も知っていたのですね…

サヴァラン

安心した?

ベルリーナ

意味がわかりません

ベルリーナ

…ブリュレさんは、アマンドさんに何をプレゼントする気ですか?

サヴァラン

うーん…俺は今年もお菓子かな…そろそろリクエスト聞いておかなきゃ

ベルリーナ

作るのですか?

サヴァラン

ああ。大体のものは作れるよ

ベルリーナ

そうなんですか…

サヴァラン

ベルリーナも、食べたいものがあったら言って!なんでも作るよ♪

ベルリーナ

思いついたら…お言葉に甘えさせて貰いますね

その後もしばらく談笑し、俺たちは店を出た。うーん…どうしよう…このままサヨナラは悲しいしなぁ…まだネックレスも渡せてないし…

サヴァラン

何か…何かないかな…!

ベルリーナ

それでは、今日はこれで…

サヴァラン

ま、待ってベルリーナ!!

サヴァラン

送ってくよ!結構奥の方まで来ちゃったし、道わからないでしょ?

ベルリーナ

……それもそうですね…お願いできますか?ちょっと心配なので…

サヴァラン

もちろん!!

何とかつなげた…!なるべくゆっくり、ちょっと遠回りしていこうかな。今日半日で結構仲良くなれた気がする…これは、名前呼びになる日も近いのでは…!?
マルシェの方向に戻り、なるべくゆっくり歩く…会話は相変わらず少なめだけれど、二人で過ごせているというのがすごく嬉しくて…とても幸せだった。

サヴァラン

うん…?

ベルリーナ

雨!?

サヴァラン

ウソ!?聞いてないよ!!

ベルリーナ

雨宿りできる場所は…!?

サヴァラン

…そうだ。
ベルリーナ、こっち!!

俺はベルリーナの手を引き、人がまばらになったマルシェを走る…この場所だと…!

いらっしゃいませ…

って、サヴァラン!?

サヴァラン

うわ…結構濡れちゃったな…ただいま母さん

ベルリーナ

こ、こんにちは…?

あらあら…そんなに濡れちゃって…今タオルを用意するから、ちょっと待っててね

ベルリーナ

……ここって…

サヴァラン

俺んち。近かったからね。

ベルリーナ

……綺麗なキャンディが一杯ですね

サヴァラン

こんな時じゃなきゃ、ゆっくり見ていって貰いたかったんだけどね…今は早く拭かなきゃ

ベルリーナ

そうですね…くしゅん…!

サヴァラン

入り口付近は冷えるね…付いてきて!

ベルリーナをリビングに案内し、母さんが用意してくれたタオルで暖を取った。少し顔色が青白くなっていたが、うっすらと赤みを取り戻してきていた。

着替え、私のお古で良ければ使ってちょうだい。シャワーも浴びていくと良いわ

ベルリーナ

はい…ありがとうございます

サヴァラン

ありがとう、母さん

後でお話聞かせてちょうだいね♪

サヴァラン

まだそんなんじゃないよ!!

母さんは満足げに笑いながら、部屋を後にした。
とりあえず…着替えようかな。

サヴァラン

シャワー、浴びるよね?案内するよ

ベルリーナ

先いってください。あなたも浴びるでしょう?

サヴァラン

俺は後でいいよ。レディに風邪を引かせるなんて、紳士としてやっちゃいけないことだからね

ベルリーナ

……そうですか…なら、お言葉に甘えて…

ベルリーナをシャワールームに案内し、俺は一度自室に戻った。
まさか家にベルリーナを連れてこられるなんて…!ずぶ濡れになったとはいえ、ものすごい幸運だ…!!

サヴァラン

せっかくだし、夕ご飯でも振る舞ってあげようかな♪
ベルリーナの好きなものはーー

幸運すぎて怖いくらいだった。だから、ちょっとは警戒すべきだったのかもしれない…まさか…

この日が、俺の高校生活において最悪の日になるなんて、
考えてもみなかった。
  
  

第4幕 3ホール目 ホットミルクアフタヌーン

facebook twitter
pagetop