第4幕
キャラメルエスコート

ベルリーナ

ここは…

サヴァラン

マルシェだよ♪

俺たちはE塔から場所を移し、ご近所のマルシェまで来ていた。最初からこうすれば良かったのかもしれない…今気づいてしまった…

ベルリーナ

ええ、それはわかります…でも、マルシェは食品市ではないのですか?あまり日持ちしないものでは…

サヴァラン

食品以外にも、バリエーション豊かだよ!
贈答品向けのアクセサリーも、花も化粧品も…大体のものは揃うね。さらに、値段もリーズナブル…庶民の味方さ♪

ベルリーナ

そうなのですか…マルシェはあまり利用したことがないので、知らなかったです。

サヴァラン

どのお店も、ブランド直営店やデパートメントストアに引けを取らないクオリティだよ!

サヴァラン

とりあえず…アクセサリーだよね?だったらこっち!!

ベルリーナを先導し、歩き慣れた道を進む。焼きたてのパンの香りや、露天商の活気のいい声がする…いつものマルシェだ。そこを、ベルリーナと一緒に歩いているという事実が、今とても嬉しい…!

サヴァラン

さて、ここだよ!

ベルリーナ

!綺麗…それに、かわいいです…!
落ち着いたシックなものや、ゴージャスなものは見慣れていましたが…こんなにポップなものは、あまり見たことがないです…!!

サヴァラン

ふふ、気に入ってくれた様で何よりだよ♪
ゆっくり見ていってね

ベルリーナ

はい!

色とりどりのビーズで作られたアクセサリーを、おそるおそる手にとって眺める姿は…もう、なんて言うか…最っ高にかわいい…!ああ、連れてきて良かった…!!

店員

おや、サヴィかい?うちに来店とは、珍しいじゃないか…それも、女の子を連れて

ベルリーナ

サヴィ…?

サヴァラン

Bonjour,マダム。
今日は…友達の付き添いでね

ベルリーナ

Bonjour…はじめまして。
こんなにカラフルな色使いのアクセサリーは、初めて見ました…!とってもかわいいです!!

店員

おやおや、かわいらしいお友達だこと…Bonjour,お嬢さん。気に入ってくれて嬉しいわ。どんなものをお探しかしら?

ベルリーナ

はい…実は、友人の誕生日プレゼントを…

店員

そう…なら、これとか…こんなのはどうかしら?

ベルリーナ

わあ…!素敵です…!
他にも見せていただいてよろしいですか?

店員

ええ、是非見ていってちょうだい。贈り物なら、じっくり選んだ方が良いでしょうからね

ベルリーナ

はい…!ありがとうございます!!

うーん…入る隙がなくなっちゃったなぁ…俺も何か見ていようか…

サヴァラン

アクセサリー類はあまり見たことなかったけど…確かに、女の子への贈り物なら、こういうのを視野に入れるのも良いかもしれないなぁ…

店員

サヴィ、サヴィ

サヴァラン

わ!?マダム…驚かさないでよ…リーナは?

店員

あの子なら、今いくつか候補を絞っているわ…それより…

店員

誰なの、あの子は…!?やっと彼女でもできたの!?

サヴァラン

ち、違うよ!!

サヴァラン

彼女…って、言えたら良かったんだけどね…まだ友達だよ

店員

まだ…?てことは…!

店員

やっとサヴィにも春が来たのね…!おばさん安心しちゃったわ!!あの寡黙で大まじめだったサヴィがーー

サヴァラン

マダム。

店員

……!

サヴァラン

…これ、貰っていいかな?軽くラッピングもしてくれないかな?

店員

……ええ、わかったわ。ちょっと待っててちょうだいね

店員は、石が一つ付いたネックレスを受け取ると、そそくさとカウンターに引っ込んでいった…買うつもりはなかったけど、まあいいや。ベルリーナに似合いそうだと思ってたやつだし…

ベルリーナ

ブリュレさん?こちらに店員さんがいらっしゃいませんでしたか?

サヴァラン

ああ、ちょっと頼み事をしてしまってね。すぐに戻ってくると思うよ。

ベルリーナ

そうですか…あの、ブリュレさん…これ、どうでしょうか?

そう言ってベルリーナが見せてきたのは、桃色の花のモチーフがあしらわれた、ビーズの指輪だった。暖色のビーズを中心に、カラフルに彩られたそれは、アマンドのキラキラしたイメージにぴったりだ。

サヴァラン

すごくかわいいと思うよ!それにするの?

ベルリーナ

はい!この花、なんだかアマンドさんに似ている気がして…

サヴァラン

アマンドは花が好きだからね…ちょうど良いかもしれない。

ベルリーナ

…そうなのですか?

サヴァラン

ああ、彼女は花屋さんだからね。結構詳しかったりもするよ。

ベルリーナ

……そうなんですか……あの…

ベルリーナが何かを言いかけたとき、ちょうど店員が戻ってきた。俺は包みとお金を交換し、そのままベルリーナの品物もラッピングを依頼した。

サヴァラン

往復させてごめんね

店員

気にしないで。それが仕事なんだから

サヴァラン

…ごめん、ベルリーナ…遮っちゃったね

ベルリーナ

…いえ、なんでもないです。

ベルリーナ

何を聞こうとしたか、忘れてしまいました。何か、どうでも良いことだったと思いますので…

サヴァラン

そう?なら良いけど…

その後、何故か言葉が少なくなったベルリーナの品物を受け取り、店を後にした…結構時間たってたんだな…もうお昼だ。そろそろお店を見繕っておかなきゃ、混んでしまうだろう…そうだな…

サヴァラン

ベルリーナ、ちょっと歩くけどいいかな?おいしいチーズ料理のお店があるんだ!

ベルリーナ

もうそんな時間だったのですか…

ベルリーナ

かまいませんよ。行きましょう

笑ってくれたことに少し安堵し、俺はマルシェから少し外れたレストランを目指して歩き出した…

ベルリーナ

……今度は、つないでくれないのですね…

第4幕 2ホール目 キャラメルエスコート

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