キタニ

うおー!

路地に滑り込んだワゴンの車内でキタニが吠える。
ヒラヤマのバイクは曲がれずに直進して後方の視界から消え去った。

キタニ

よし、振り切ったぞ!ざまーみやがれ、これでどうだ!

マスター

ふうー、間一髪だな、よくやったぜ。

ハルト

・・・

ヒトミ

・・・

ヤマサキ先生

・・・

路地に並んだゴミバケツをけり散らして進むワゴン。

マスター

おい、気を抜かないでくれよ。ここで立ち往生なんて、シャレにならないからな。

キタニ

おう、わかってるって。心配するな。

ハルト

すぐにヤツら引き返してくる。撒くんだ、進路を変えろ!

キタニ

それもわかってるって!まかせとけ!

ワゴンは右折左折を繰り返し、さらに細い路地へ入り込んで進んでゆく。

キタニ

くそっ、行き止まりだ・・・

マスター

ちっ、本当に大丈夫かよ?

バックして切り返し進路を戻すキタニ。

キタニ

うるせえ、大丈夫だ。

ハルト

先生は、大丈夫か?

ヤマサキ先生

ああ、心配はいらんよ。

ヒトミ

ユキオが・・・

マスター

・・・オレのせいだ、あいつを降ろしたばっかりに。

キタニ

・・・・・・あいつら絶対許さねえ。

ハルト

・・・

オヨソ、300メートル、サキ、ミギホウコウデス

ハルト

悲しむのは後からだ、目的地は近い。今は進むしかないんだ!

キタニ

ああ。その通りだな。

ワゴンはスピードを上げると
埠頭に向かって走り出した。

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