気がつくと、いつもの自分の部屋だった。

何か長い長い夢を見ていたようだったけれど、目が覚めるとそれは瞬く間に消えていた。

悪夢だったような、良い夢だったような、不思議な心境だった。

イナバイナハ

あれ……。

前後の記憶があいまいで、今どうして自分がここにいるのかもわからなくなる。

それでもここが自分の住み慣れた部屋であることを実感できたのは、部屋の空気とベッドの暖かさ。

眼鏡を探してスマホをいじると、着信が16件、新規メールが3件着ていた。

イナバイナハ

えっと、なになに……?

最強院えるふ

ナバちゃん、大丈夫? 途中でいなくなってしまったのですんごく心配。
(≧△≦)
ずいぶん待ったんだけどお昼ご飯は蓮さんとゴリちゃんと三人でおいしくいただいてしまいました。ごめんね。
(;・∀・)
なにか悩みごとがあるなら私でよければ相談に乗るから、いつでもいってね。
( *´艸`)

斎藤蓮

また迷子か? 24時間以内に連絡がない場合、お前の実家と警察に連絡して全国に指名手配しておくから、いやならすぐに帰ってこい。以上。

ゴリアテ

MODORE SINPAI MATU

イナバイナハ

ぷっ。みんな心配性だなあ。

イナバイナハ

あ、あれ。

涙をぬぐってスマホをいじり、みんなに元気だと伝える。それと謝罪の言葉も。

らしくないとは思いつつも、ずいぶん心配かけたみたいだし、当然だろう。

顔を洗うため、あたしはいそいで洗面所に向かった。

イナバイナハ

ふうー。

すっきりした。今はもう朝だ。

昨日のお昼からだから、まるまる約一日何もしていなかったことになる。

お腹はそこそこすいている。今日の講義は午後からだから、街をぶらつくのもいいかもしれない。

イナバイナハ

……うん?

ゆーま

……。

イナバイナハ

……気のせい、かな?

鏡に映った自分の顔が、見知った誰かになっていた気がしたのだが、見間違いだったようだ。

寝すぎかもしれない。頭がまだ寝ぼけているのだろうか。

あたしは軽く身支度を整えると、寮の部屋を出た。

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