アストル インカローズ

笑が目を覚ますまで待って、お前達は速水千陽に真実をすべて語った。案の定、彼女はとてもショックを受けるな

ハヤミ チヨ

………そん、な……

シロガネ エミ

千陽さん…気を強く持ってください…!姿かたちは変わろうと、千陽さんは千陽さんです!

イツミ セイジ

笑くんの言う通りですよ。俺達も見送りに行きます

ハヤミ チヨ

……本当は、何となく、気づいてました…

シロガネ エミ

え…?

ハヤミ チヨ

姉が死んだのは、私のせいなんじゃないかって…怖くて…だから、知らないふりをしていました…

ハヤミ チヨ

姉も、私と同じだったんです…私は、姉より変容が早かったから、姉妹でもこんなに見た目に差があったんですね…

ハヤミ チヨ

私だけが劣っていたわけじゃなかった…私…馬鹿みたいですね…

シロガネ エミ

馬鹿なんかじゃないです!僕だって…自分が劣っているって、ちょっとしたことで思っちゃうことありますし…

イツミ セイジ

あなたたちだけじゃない…みんな、同じですよ

ハヤミ チヨ

………ありがとうございます…

ハヤミ チヨ

姉は、私よりも美に対して慎重だった…だから、耐えられなかったんです…

ハヤミ チヨ

姉があの時伝えたかった事。『To be or not to be』真実を知って生きるべきか死ぬべきか。それが人として生きる、人生の最後の問題だと。

ハヤミ チヨ

………皆さん、お願いがあります

ハヤミ チヨ

どうか…どうか、私を殺してください…私を……人間として、死なせてください…!

シロガネ エミ

…………

サバキ ラン

…………

イツミ セイジ

…………

ハヤミ チヨ

ひどいお願いだってことは、分かっています…でも…私も、姉と共に逝きたいんです…きっと、1人で寂しいだろうから…それに…

ハヤミ チヨ

私、ちゃんと…千陽として、謝りたいんです…誤解していたって…私、子どもだったんだって…

シロガネ エミ

千陽さん……

ハヤミ チヨ

私は…あなた達に救われました…心を救ってもらえました…

ハヤミ チヨ

でも…やっぱり、死ぬのは怖いです…もし、まだ甘えてもいいのなら…私を見送ってはくれませんか…?

ハヤミ チヨ

気味の悪いお願いだとは分かっています…でも…

イツミ セイジ

……俺は構わない。ね?笑くん、蘭

シロガネ エミ

……はい…そう、ですね…

サバキ ラン

…………千陽

ハヤミ チヨ

はい…

サバキ ラン

本当に、後悔しないね?

ハヤミ チヨ

はい…

サバキ ラン

君は…それで、幸せ?

ハヤミ チヨ

……はい。

ハヤミ チヨ

幸せです。然木さん…私は、幸せです

サバキ ラン

…………………そう

アストル インカローズ

千陽は、姉と同じように水中で花を抱いて死にたいと言うな。

サヴァラン ブリュレ

その花…俺が用意してもいいかな?花言葉辞典も借りたい

アルセ ユエ

異論無しです。蘭くんに任せます

イツシマ ツナグ

俺も異論無し…頼んだぜ、蘭

アストル インカローズ

わかった…何の花を用意したい?

サヴァラン ブリュレ

……弔いの言葉は無粋だね…

サヴァラン ブリュレ

リアルINT使いたい…いいかな

アストル インカローズ

朝イチから動いていたからな…花言葉辞典をじっくり読んでもいいことにする。存分に発揮させてくれ

サヴァラン ブリュレ

ありがとう…

アストル インカローズ

花は二種類まで選ぶことが出来るぞ…さあ、何がいい?

サヴァラン ブリュレ

俺が用意したい花は…ゲッカビジンとミヤコワスレだ

アストル インカローズ

花屋で購入することになるぞ。

アストル インカローズ

………そうだ

アストル インカローズ

……目星-20で振ってくれ

サヴァラン ブリュレ

-20!?

サバキ ラン
目星51-20→59失敗

サヴァラン ブリュレ

うっ…

イツシマ ツナグ

これは見つからないか…

アストル インカローズ

……花は無事に見つかった。

サヴァラン ブリュレ

え?

アルセ ユエ

今の目星は…?

アストル インカローズ

のちのち分かるさ

サヴァラン ブリュレ

アストル インカローズ

店を出ると、千陽が外で待っているな。彼女は、花言葉辞典を一度貸して欲しいと言ってくるぞ

サヴァラン ブリュレ

もちろん…これはもとより彼女のものだ…今買った花束と一緒に、花言葉辞典を渡すよ

アストル インカローズ

なら…千陽は少し泣きそうな顔をしてから、にっこり笑って、花言葉辞典と花束を大事そうに抱きしめるな

イツシマ ツナグ

思い出深いものなんだな…花、好きだって言ってたし…

アストル インカローズ

……他にやりたいことはあるか?

サヴァラン ブリュレ

もうないよ…彼女が望む場所へ行く

アストル インカローズ

わかった…

アストル インカローズ

時刻は深夜…お前達は、花代の遺体発見現場にやってきた。

イツシマ ツナグ

KP、千陽に睡眠薬を飲ませたい…多分、男が言っていたことは、そういうことだと思うんだ…

アストル インカローズ

……わかった。千陽はお礼を言って睡眠薬を飲む…効果が現れるまで、少し時間があるな…

アストル インカローズ

そのまま彼女は、水の中に横たわる…蘭が買った花を、その胸に抱えてーー

ハヤミ チヨ

……然木さん…ごめんなさい、最後まで…私の手、握ってくれませんか…?水が、すごく冷たいんです…呼ばれているのに…なのに…とても冷たいんです…

サバキ ラン

………ああ。いいよ…俺でいいのなら、いくらでも…

アストル インカローズ

手を握った蘭は分かるだろう…千陽の手に、薄い水かきが付いていて、少しだけ滑りがあること…変貌は、徐々に始まっているのだということが…

シロガネ エミ

どうか、安らかに…

イツミ セイジ

あっちでは、仲良くするんだぞ…姉さんと…

サバキ ラン

…………俺、死んだら真っ先に君を探すよ…だから、それまで…

サバキ ラン

またね。千陽ーー

アストル インカローズ

蘭が握る手は、千陽は、徐々に冷たくなっていく…星に見守られ…眠るように水に沈んでいくだろう……それが、彼女が望んだことなのだから

アストル インカローズ

胸に、白と青の花束を抱え…それに込められた思いに希望を見出しながら……速水千陽は、息を引き取った

アストル インカローズ

エンディング『オフィーリアの水葬』…おめでとう。シナリオクリアだ

アストル インカローズ

ここからはオリジナルエピローグだ。蛇足が嫌な人、オリジナル展開が嫌な人はここで閲覧をやめた方がいいだろう…

アストル インカローズ

もしそれでもいいのなら、僕らは歓迎するよ。最後までゆっくりしていくといい

アストル インカローズ

速水千陽の自殺から1週間後…警察の捜査で、彼女のの遺書が見つかった。遺書には、自殺に至った偽りの経緯と、自室の本棚にある『花言葉辞典』を、姉の先輩である然木蘭に届けてほしいという内容が記されていた。

アストル インカローズ

花言葉辞典の1ページ目には、蘭宛の手紙が挟まっていた。そこには

あなたに会えてよかった
これは、私のあなたへの気持ち

アストル インカローズ

とだけ書かれていた

サバキ ラン

……どういうことだろう…

アストル インカローズ

意味がわからずページをパラパラ捲ってみると、本のページから何かが落ちる

サバキ ラン

これは……紫の花…?このページのものかな…

アストル インカローズ

それは、薄い橙の台紙に紫の押し花が施された栞だった。栞が挟まれたページには、紫の花と同じ写真の花が載っており、その花言葉が記されている

紫蘭(シラン)
花言葉…あなたを忘れない、変わらぬ愛

サバキ ラン

………千陽……ダメだよ…こんな、俺なんかに……

アストル インカローズ

その日は、巷で有名な怪盗が予告状を出していた日だったが、未遂で終わったそうだ。その理由は…なんの気まぐれか、その日の夜海へ赴いた怪盗本人にしか、分からないーー

サバキ ラン

また逢う日まで…君の、その儚い美しさを…私は決して忘れないよ

小説×怪盗×信者は沈む命を掬えるか?【オフィーリアのスイソウ】9幕

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