鼻歌を歌いながら縁側の掃除をする奏。
そんな彼女に蓮蛇がこなれた様子で声をかける。
ふんふんふん。
鼻歌を歌いながら縁側の掃除をする奏。
そんな彼女に蓮蛇がこなれた様子で声をかける。
やあ。
私だよ。
あ、蓮蛇さんいらっしゃい!
迎えた奏はとても上機嫌で。
蓮蛇はその理由が知りたくてさっそく話を始める。
なんだか上機嫌だね。
何かいいことでもあったかい?
え、えへへ。
実はですねー。
明日友達と喫茶店で勉強会するっていったら、臨時のお小遣い貰えちゃって。
ふむ……奏さんが嬉しいのは勉強会かな?
それともお小遣い?
問いかけた蓮蛇に、奏は声を張り上げて答えた。
両方ですよ!
友達との勉強会はお喋りもできるし、解らないところもお互い教えあってより仲良くなるための共通の課題?みたいだし。
お小遣いがあればある程度頼むメニューにも融通が利くし……。
普段あんまり出してもらえないから猶更ですね。
ふむ。
なんとなくだけど勉強会にお小遣いをだしてもらえるのが奏さんには大きな慶事だというのがわかったよ。
鎌首を揺らし頷くような蓮蛇に対して、奏ははてな、を浮かべていた。
刑事……?お巡りさんですか?
お巡りさん……?
いや、慶事というのは喜ばしいおめでたい事という意味だよ。
へー、刑事ってそんな意味もあったんですね。
……なんだか不安だからそこらへんはあとで辞書を引くといいよ。
?
はーい。
元気だけはよく返事をした奏。
そこでふと思い出した、というように縁側に座って蓮蛇に向かって身を乗り出して問いかける。
そういえばついでというか、思い出したというか。
なんだい?
最初にあった時に良人とかいってたのは、なんなんですか?
奏の問いに、「ああ」と目を閉じて舌をチロチロだしながら蓮蛇は答えた。
良人というのはね、まあ、あれだよ。
夫婦……の連れ合い的な。
ふーふ!?
な、なんでそんな……。
私まだ十七ですよ!
「まだ」?
お登勢の時代には十九にもなって連れ合いがいなければ行き遅れとか言われていたけどね。
そんなの何時代ですかー!
今は晩婚化?で結婚する年齢はかなり遅くなってるんですよ。
えーと、大体三十代とか。なんとか。
そんなに遅いのかい!?
晩婚化って晩年結婚化ってことだよね。
よくそれで子供が作れるね。
お登勢の時代なら四十にもなれば隠居が見えてきたっていうのに。
んー。よくわからないけど医療技術の発達で高年齢出産のリスクも下がってるとかニュースでいってたかなー。
あと、昔と違って平均寿命自体が延びてて……七十歳八十歳までたくさんの人が生きるようになってるのも結婚がある程度遅くなっても大丈夫な理由なのかなー。
凄い世の中なんだねぇ。
猫又が増えないのが不思議な世の中だ。
ペットも長生きするようにはなりましたけどねー。
猫で百年はないですよ。
そんなものかい。
そんなものです。
いったん途切れた会話。
蓮蛇がとぐろをまいて、奏から目をそらし尻尾をふるふる、と動かす。
はて、どうしたんだろう?と奏が思っていると蓮蛇は口をひらいた。
喋る猫が沢山いれば喋る蛇の私が奏のそばにいてもおかしくないと思って貰えないかと思ったんですが。
あ、そうですね。
ふふ、残念。
ほんとですか?
ほんとですよー。
ふふふ。