第3幕
駆け抜けろ、
C.ザ・リッパー!!
前編
第3幕
駆け抜けろ、
C.ザ・リッパー!!
前編
ーー2時間前
おおおおお…!すげえ…!お城みたい…!!
俺は、お目付け役として(と称し、遊ぶ気満々で)付いてきたファウストと共に、カジノ・ザ・リッパーの前まで来ていた。
古城の様な見た目をした建物に、前かがみになった人々が続々と吸い込まれていく光景は少し異様なものに思えた。目的があるとはいえ、俺もその一員になるのだと思うと…ちょっと萎えてしまう。
ふむ…警備が強化されているようには見えませんね
元々が強固なので…新たに人を投入しても、あまり意味がないのかもしれません。
なるほど…じゃ、今回は余裕かな
警察もいないのでは、あなたの独壇場でしょう…
しかし、油断は禁物ですよ。その為に、ちょっと早く偵察に来たのですから
お前は遊ぶためだろーっての…
そろそろ入らない?入口の人、さっきからこっち、ずっと見てるよ
そうですね…では、行きましょうか。カルーアミルクでもご馳走しましょうか?
無事に済んだらね
済んでしまったらご馳走できませんよ
見張りであろう男に軽く会釈をし、建物の中に入る…変装していても、やはり年齢は察知できてしまうのだろうか。鼻で笑われた様な気配がし、俺は心の中でファックサインを突き立てた。
ーー今に見てろよ…。
建物の中は、思った以上に暗く重苦しい空気が漂っていた。きついタバコの匂いと、目に悪い強さのライトに、少し顔を顰める。
大丈夫ですか?
……すごいな、なんか
凄いでしょう。
ちなみに、奥にはVIPルームがございますよ
VIPルーム…?特別なお客様でもお迎えするのか?
ええ、大金を叩いてくれた性欲マシマシの方々にーー
分かったもういい
悟られない程度にあたりを見回し、改めて逃げ道が限られていることを確認する…今回はちょっと怪我人を出してしまうかもしれないなぁ…
うわっ!?
うおっ!?
考え込みながら歩いていたら、勢いよく前から来た人にぶつかってしまった…ファウストが少し驚いたような目で俺とぶつかった人を交互に見ている……これは…まずったか…?
っ……まったく、気をつけろとあれほど…
すみません、大丈夫ですか?
なるべく穏やかな表情を貼り付けて、ぶつかった人物に手を差し伸べる…それは、ガタイのいい金髪の男だった。
Iettean…
Odokimetaurietayagur!Ah!?
う……
や、やばい…何言ってんのか全然わからない…でもすごい怒ってるかのはわかる…!!
す、すみません、わざとじゃないんです!!こういうところに来るのはその…えっと…!
失礼
Uteronomonag ogemiawukow oakekisamisat…Oekagawogaziamesnak?
Oh…anat inohnog ahanesuronak…
…………
Annotomeneoy…Utigaw ikowutekuroyuin iettoek
Ahi…Ohnotuni omuisawek ogaziamesnedisat
ファウストが数言会話すると、男は俺を一瞥して去っていった…たすかった…のか…?
サヴァランくん
すげえ…
…はぁ…気をつけてくださいよ。僕がいなかったらどうするつもりだったのですか?
ごめん…次は気をつける
分かればよろしいです
俺たちはそのまま予告の時間まで、カジノの細かいところまでを見て回った。途中ディーラーに扮したファウストが裏方を見て回った結果、通気口から地下に続くルートが見つかった。俺はそこを使って逃走…地下道を抜けてからファウストと合流することになった。
さて…今回は何分で犯行が終わるかな…♪
客が少なくなったバーカウンターでソーダ水を煽りながら、俺は目立つところに置かれた真紅のワイングラスを見据え、ほくそ笑んだ。
ーーさて、時間だ。
けたたましい音がフロアに鳴り響く…しかし、それに意識を持っていったのは、やはりバーのマスターだけだった。賭博場は、かつてないほどの熱気に包まれている…その原因は…
おい…何勝目だよこれ…?
見ろよあのディーラーの顔!真っ青じゃねえか!!
………
………
……では…次のカードはーー
ローです
いっ……
ローです
ほら、早く見せてください?
…………
……ローです…
おお!!
ふふ、また勝っちゃいました♪
な、何もんだよこいつ…!
さて、次ですディーラー。早くしてくださいな
ひ、ひぃっ…!
ハイアンドローで負ける気がしない…というのは、強がりではなかったらしい。脅威的な運で、ファウストが18連勝を遂げているのだった。
本当に化け物だな…
派手に割ったグラスの破片を集めていると、カウンターからマスターがいそいそと出てきた。
ああ、すみません。お手数おかけします
…………
無言で、グラスを片付けるためにしゃがみ込んだマスターの後頭部に、私は…
じゃ、ちょっと眠っててくれるかな
!?
フックショットの柄を思いっきり叩きつけた。マスターは昏倒し、しばらくは目を覚まさないだろう…懐に忍ばせていた仮面を装着し、私はスイッチを切り替えた。
賭博場の熱気はまだ収まらない。事前に示されていた酒瓶を2本ほど、用意していたカバンに押し込め、ワイングラスに手を伸ばす…
幾ら何でも警戒しなさすぎだったね…ケースにも入れておかないなんてさ…!
グラスに手を触れた瞬間ーー
っ!!
私はまた、例の感覚に襲われた
激しい目眩と、倦怠感…そして…
また、ある夜のことでした。しびれを切らした男の子は、その大きな翼を広げて、お姫様を外にさらい出しました。聞きなれない大きな羽ばたきの音に、お姫様は驚きました。
男の子は、魔物だったのです
でも、お姫様にとって、それは至極些細な問題でした。男の子が自分のそばにいてくれれば、お姫様はそれで良かったのですーー
!!
手首を掴まれる感覚で、現実に引き戻される…咄嗟にそれを振り払おうとするが、思った以上に力が強くて振りほどけない…!
Imutekatez…akiotuaykaremirezasnoyo…!
こいつさっきの…!!
自由な右手でワイングラスをカバンに突っ込み、代わりにフックショットを取り出し、男に向かって撃った。
Uo!?Ubbene!!
今…!
力が緩んだ隙に思い切り腕を振り払い、俺はバーカウンターの裏方に逃げ込んだ……
危ない危ない…あとは、通気口を通って地下道に出るだけだ…!
っくそ!!アイツ…当たったらどうするつもりだったんだ!
錬磨
ああ、霧中…大丈夫だ、心配ねえよーー
やっぱり逃がしたんだな
心配じゃねえのかよ悪かったな!!
いや、それでいい…
んあ?それ…
発信機だ
マジか!でもそれ実験段階だって…
最終実験だ
それに…依頼をこなすためなら、これを使った方が手っ取り早い
あー…あのボスか。目付き悪ィの
そうだ…正常に起動したな…錬磨、これを持って地上で待ち伏せしろ。支持はこれで出す
へーへ。んじゃ、行ってくら
……………で、なぜお前はついてきた
千秋