それだけ、どうしても聞きたかった。
二人のスコアホルダーが、生きてここに揃うことが初めてだということ、死んだはずの奏者、それを守ることを義務づけられた番人…このゲームは…
…ちょっと待ってくれ。
その前に、聞きたいことがある。
…なんだ
…お前は…どうしてスコアゲームなんてやろうと思ったんだ?
………
それだけ、どうしても聞きたかった。
二人のスコアホルダーが、生きてここに揃うことが初めてだということ、死んだはずの奏者、それを守ることを義務づけられた番人…このゲームは…
このゲームは…軽い遊び気分でやって良いものじゃない…それだけ多くの犠牲を出すゲームだ。いくら神だからって、許されることじゃないだろう?
アルト…
どうして、やろうと思ったんだ?
教えてくれ。
……
Kは、少し言いよどむ気配を見せた。でも、逃がす気はない…このまま願いを叶えてしまったら、卑怯者になってしまう気がして…彼の真意を知りたかった。
……それを知って、何になる?
お前に関係がある事ではなかろう?
それでも知りたいんだ…犠牲になった人のためにも…ゲームに負けた、いままでのスコアホルダーのためにも…!
……お前は、変わっているな。
願いを叶えられる瞬間を前にして、そんなことを聞いてきたのは、お前だけだ。
Kの姿が歪み、黒い影から、全身を白で固めた男が姿を現した。これが、K…?
…!
姿が…!
うわぁ!神様みたい!!
あのなぁ?
…敬意を示そう。だが、その質問に答える気はない。
…どうして?
無駄だからだ。その時間が、無駄だから。
お前は願いを叶えて帰る…それで終わりだ。ハッピーエンドだ。それでいいだろう?
……お前…!
お前が言いたいのは、無駄に犠牲を増やすなと言うことだろう?…わかってる。そんなことは。だが、これは贖罪だ。助けられなかった私の…贖罪だ。
…ショクザイ…?
要するに罪滅ぼしだ…何が起きたかはわからないけど…神はそれを話す気はないらしい。
贖罪…
これで満足か?これ以上答える気はない…私にはどうしようもないことだ…
……
これが罪滅ぼし…だって…?何を言っているんだ、こいつは…こんなんじゃ、罪滅ぼしどころか、罪を重ねているだけじゃないか…!
もう良いだろう?
早く、私に願いを…
さあ!!
……こいつは…狂ってる…止めなきゃ、また犠牲が出る…!
でも…『どうしようもない』と言っていた…それなら…!
願いは1つーー!
すべてが、幸せでありますように
…は…?
何を…!?
考えを聞こうか
…誰か一人の願いを叶えて幸せにすることなんて、ショクザイでもなんでもない。それは、所詮お前の自己満足だろう?
幸せにできなかった人がいるなら…その分、もっとたくさんの人を幸せにするべきだろう?お前は神様なんだろう?それなら、それが出来るはずだ
だから俺は…この願いに、全ての願いを乗せる…
すべてを幸せにしろ…それが、俺の願いだ!
……………
Kはしばらく、目をまん丸にして俺を見つめた。そして、数度瞬きをし…
……ははっ…あはははは!!
大声で笑い出した。
面白い…まだ、人間にそんな願いを掲げる奴がいたとは…!
いいだろう…その願い、聞き届けよう!
その瞬間…ふわりと体が浮かぶような感覚がし、俺は思わずあたりを見回した…眼下に、小さな二つの影が見える…俺、本当に浮いてるんだ…!
これからお前達をネイチャーカオスに転送する…願いの成就には時間がかかるだろうが…必ず叶えて見せよう
…!
おう…頼んだ!!
アルトー!!
テナ!!
ルナとアミスが、各々のパートナーに呼びかける…俺も呼び返そうとするが、それを阻むように酷い眠気が俺を襲った。
生きろ、テナ!!何があっても、強く!!生きろ!!
また会うのよ!ここでも、アルトの世界でも…どっちでもいい!!必ず、また会うのよ!!それが…
あなたが叶えてくれる、あたしの願いだから!!
二人の叫びは、ちゃんと俺に届いた…だからきっと、テナにも届いているはずだーー
また、会おう…でも、今は…
おやすみなさい
っ!!
凄まじい揺れで、俺は意識を取り戻した。こ、ここは…
間もなく
中央島ターミタル…
中央島ターミタル…
お出口はーー
中央島ターミタル……もしかして、俺…帰ってきたのか…?
中央島ターミタル……
そうだ、圭!圭は!!
すみません、降ります!!
久しぶりの現実世界に浸っている暇もなく、俺は慌てて人をかき分け電車を降りた。
圭…圭…!!たのむ…神様…!!
祈るような気持ちで、どこか懐かしい街並みを駆け抜けて病院を目指す…
息を切らせながら何とか病室にたどり着き、はやる気持ちを抑えながら扉をスライドさせ…
……!うそだ…
最初に口から出た言葉は、飾りもしない、そんな言葉だったーー
おはよう、在斗
願い、ここに終着。