僕はミラバルにコーヒーを差し出した。
ミラバルは両手でカップを抱えたまま下を向いている。
ほら
僕はミラバルにコーヒーを差し出した。
ミラバルは両手でカップを抱えたまま下を向いている。
で?
なんで僕の家に泊まりたいの?
言わなかった?
お母様からの指令をクリアするまで家に帰れないって
その話は本当なのか……
うん
でもさ、それって僕じゃなくてもいいよね。
僕は気になっていたことを切り出した。
わざわざ嫌がっている僕を選ぶより、もっと手っ取り早い方法があるはずだ。
ミラバルほどの美しさがあれば、よりどりみどりのはずだ。
最初に気に入っちゃったし
それに、あれだけ誘惑して手に入れられないのって、サキュバスとしてバカにされた気がしちゃって。
それって意地じゃん……
そうよ!悪い!?
悪いっていうか……
だいたい!あなたがちゃちゃっと童貞くれれば済む話なのよ!!
勝手に童貞って決めつけないでほしいな!!
こんな僕でもプライドくらいはあるんだ。
サキュバスにはわかるのよ
貴方からは童貞の匂いがするわ
それ以上言うとたたき出すよ!
泊めてもらうくせに生意気にもほどがある。
とにかく、貴方を魅了してこそ一人前のサキュバスを名乗れると思うの
協力してくれない?
ミラバルはコーヒーを一口飲んで、落ち着いた口調で言った。
確かに、異性を魅了できないサキュバスはサキュバスとしてどうなのかというのは分からないでもない。
一度断られた相手を魅了することが成長の証であるという言い分もわからなくはない。
お願い。
自分のことは自分で何とかするし、貴方には極力迷惑をかけないようにするから。
う~ん
ミラバルがこの先本当に行く場所がないのかということはいったん置いておいて、サキュバスとはいえ女の子を一人放り出すというのは気が引ける。
そう考えると、僕の中での答えは一つになっていた。
わかったよ。
僕の負けでいいよ。
いいの!?
ありがとう!!
ミラバルは、はじけるような笑顔を見せた。
まぁ、日ごろからあの十字架のペンダントを下げてれば勝手に襲われることはないだろうし。
こうして、僕とサキュバスの同棲生活がスタートしたのだった。