ピンポーン
インターフォンの音で目を覚ました。

ちょっと待ってくださーい

寝ぼけ眼の中、玄関まで届くかどうかの声量で応える。
スウェットに寝癖頭のままですぐに玄関へ向かった。
覗き穴から確認したが、誰もいない。
近所の子どものイタズラなのだろうか。
そんなことを思いつつ、念のため扉を開けて左右を確認したが、誰もいない。
やはりイタズラなのだろうと扉を閉めようとしたとき、玄関先に置いてあったアタッシュケースに目が留まる。
誰のものか分からないが、そのままにしておくのも気が引けるので部屋に持ち帰った。

持ち帰ったのはいいが、これを交番に届けに行くのも面倒で、どうも外に出る気が起きない。
おそらく、夏の暑さのせいだろう。
交番へは少し日が落ちた頃にでも届けに行けばいいと思い、すぐには届けなかった。
しかし、他人の家の玄関先にアタッシュケースを忘れる人もどうかと思う。
そもそも大したものは入っていないんじゃないだろうか。
中身が気になって仕方がない。
好きなラジオを聴いたり、太宰の小説を読んだりして気を紛らわせようとした。
それでも気になる。
このままでは、今日一日何もできずに終えてしまいそうだ。
この際、開けてしまおう。
元に戻せば気づかれることはないのだから。
いやいや、他人のモノを勝手に開けるなんて常識がないにも程がある。
でも、気になってしまう。
そんな葛藤も数分続いたが、やがて終わりアタッシュケースに手を伸ばした。
だが、鍵が掛っていた。
鍵は4桁のダイヤル錠だ。
一万通りもあるダイヤル錠をそう簡単に開けられるはずはないと思いつつ、適当に今日の日付0707を入れてみた。

ガチャ

開いた・・・

あまりに簡単に開いたので数秒固まってしまった。
中身が気になっていたことを思い出し、早速蓋を開ける。
一番上に何やらごちゃごちゃ文字の書いてある紙があったが、後で読むことにした。
その下は、ほとんどスポンジで、目薬が一つだけ入っていた。
白と黒の二つ円が少し重なる様なマークが書かれている。
目薬はよく使うので、メーカーには詳しいが見たことのないマークだった。

期待を大きく下回り、ため息が溢れる。
他人のモノだからいいかと割り切り、さっきの紙を確認した。

ルール?

紙には、ルールと称していくつかの事柄が書かれていた。

ルール
1・これは、使用者の為に存在する。
2・使用者は、これを影に一滴垂らすことで、そのモノの存在を消すことができる。
3・使用者は、消したモノの存在を忘れない。
4・使用者以外は、消したモノの存在を無かったこととして記憶が書き換えられる。
5・使用者は、死なない。


なんだこれジョークグッズか?

そう思い下まで読み進める。

6・Happy 24th Birthday 7/7
7・これはキミのものだ影山優介くん
By Dead Shadow 委員会

・・・

さっきダイヤル錠に入れた日付・・・

今日は、俺の誕生日・・・

でも誰が?

pagetop