はしゃぐ少女を尻目にため息をついたのは青年。
答えず、少女は無邪気に笑う。
またか……。俺は振り回されてばっかりだな
はしゃぐ少女を尻目にため息をついたのは青年。
答えず、少女は無邪気に笑う。
ねぇねぇ。次はさ––––––––
薔薇
臨時ニュースをお伝えします。今日未明、S町で行方不明になっていた、須々木啓介さんが遺体となって発見されました。警察は、遺体の状態などから連続殺人犯の犯行とみて捜査しています。これで、S町連続殺人事件の被害者は十七人目となりました。繰り返します––––––––
薄暗い部屋の中でテレビだけが光を放っている。
そのニュースを観ていた少女は高らかに笑った。
これで十七人、ねぇ。ふふふっ
無邪気な笑い声が薄暗い部屋に響く。
世間を良くも悪くも賑わせている、S町連続殺人事件。
小さな町で突如発見された変死体。
その後も続々と現れる変死体は、四人目発見後に連続殺人事件として改めて捜査され始めた。
被害者に共通点はなく、また、場所もバラバラ。
まだ発見されていないところに検問や警備員たちを配置してもそれをことごとく打ち破り、犯人は死体を捨て続けた。
––––––––警察の行為のすべてが無意味であるということに気づくのは、一体いつになるのだろうか。
犯人はまだ十歳にも満たない少女。
その目は狂気に満ち、表情はどんどん歪んでいく。恍惚とした光が瞳に宿っている。
彼女は、いたって普通の––––普通ではないかもしれないが––––人間である。
警察は馬鹿だなー。あたしのことなんてわかるはずもないのに。それに、犯人があたしだってわかったからって、あたしは法律にはかからない。あたしを殺せるのかなぁ?
そう言ってまた笑う。
ここまで彼女を狂わせたのは何なのか。
それを知る者は誰もいない。
––––––––ただひとりの、協力者を除いては。
その協力者もまた、テレビを観ていた。
十七人、ね。警察は馬鹿だなぁ
彼の目は、表情は、すでに死んでいる。
殺人を計画したのは彼だ。
計画させられた、のではあるが。
彼は十歳はとうに超えているが、成人を迎えてはいない。
年齢離れした驚異の頭脳の持ち主の彼は、少女の血縁者だというわけでもない。
目的もなく、ただ少女の殺人に手を貸している。
彼は法律にかかるが、絶対に警察は自分にたどり着くことはないと思っている。
物理的に、子供には到底できない方法で殺人を犯す。
彼は、その方法を思いつくだけの頭脳を持ち合わせている。
その完全犯罪は、事件発覚当初からなにも見破られてはいない。
凶器は特定されているようだが、そこで足踏みしている。
馬鹿だなぁ
もう一度呟く。
ふたりがどういう経緯で出会い、殺人を犯すに至ったのかはわからない。
少女にとって、また青年にとって、そんなことは、くだらないことだ。
つまらないことだ。
どうでもいいことだ。
そんなことは問題ではないのだから––––––––。
張り合いないなぁ、警察も
無邪気に笑う少女は、またひとり手にかけた。
転がる死体を目前に、彼女は言った。
十七人、なんてあり得ないね。そんだけしか見つけてもらえないなんて
狂気に満ちた表情が歪む。
ほんと、馬鹿だよね。ね、そう思わない?
ま、みないほうがいいものもあるよ、きっと
そうだねっ。あはは、あはははははははははははっ!!
無邪気な少女と、協力者の狂気が収まることはない……。
薔薇/無邪気
fin.