さて。

唯のダイナミックな振りとコンロの火力が幸いして、チャーハンは上手い具合にパラパラに仕上がった。部分的に焦げているのはご愛敬だろう。

皿に丸く盛り付けたチャーハンに、千乃お手製の紅ショウガリボンを可愛く散らして、こちらの準備は万端だ。

──しかし、別働部隊が帰ってこない。

空子

あ、あの、せっかくのお料理なのに、早く食べないと冷めちゃいませんか……?

ひかり

あっあのね! もーちょっと! もーちょっとだけ待ってて空子ちゃんお願いっ!

ひかりが必死でフォローするが、机の上で冷めていく料理に、空子も落ち着かない様子だ。

そろそろ誤魔化すのも限界だろう。

その時、ようやく待ちわびた声が響いた。

留奈

フフン、戻ったわよ。コッチはもう準備できてるんでしょうね?

ひかり

留奈ちゃん遅すぎ! 遅いのに何でそんなに得意げなの!? 遅い遅い遅いよー!

留奈

な、何で帰ってきた途端に怒られなきゃいけないのかしら!?


ドアを開けて入ってきた途端にひかりに当たり散らされ、留奈はいきなり涙目だ。

しかし、ひかりにとっても冷めゆく料理を不安そうに見詰める空子を止める行為は、余程プレッシャーだったのだろう。

周囲がひかりをどうどうと宥めている間に、買い出しを引き受けてくれた別働部隊が、キッチンに入ってくる。

つかさ

ああ皆様、遅くなってしまって申し訳ございません!

八葉

はわわわっ、でっ、でもっちゃんとお買い物はしてきましたからっ!

まひろ

あらあら、もう準備はバッチリですね。遅くなってごめんなさい


可愛らしい花束を手に持ったつかさと八葉、その後から顔を見せたまひろさんは、大きな白い箱を抱えている。

まひろ

さぁ、せっかくのお料理が温かいうちに、始めましょう♪


楽しそうなまひろさんの指揮の下、アイドルたちが一斉に動き出す。

このサプライズは、みんなであらかじめ打ち合わせ済みなのだ。

空子

えっ、えっ?


目を丸くした空子の目の前に、まひろさんが箱を置いた。

八葉

あっあのあのあの空子さんっ! おおお誕生日おめでとうございますうぅ~!

空子

えっ? ……あっ

留奈

ちょっと八葉! フライングしないでちゃんと打ち合わせ通りに……!

八葉

ひえぇえごめんなさいぃ~でっでも早くしないとお料理が冷めちゃいますぅ~!

プロデューサー

ああもういいじゃないか。ほら、留奈も八葉もちょっと落ち着こう


ワタワタしている留奈と八葉に声をかける。

キョトンとした空子が、僕の顔を見上げてきた。

空子

あ、あの、プロデューサー?

空子

私の、お誕生日……?

プロデューサー

そう。みんなでお祝いしようって話になったんだ。全員の予定が合って良かった

ミユ

なんや、空子さん誕生日やったん? そーゆうことはもっと早く教えてくれな~

ミユ

何、みんなは知っとったの? 自分だけ仲間外れとかありえへ……

つかさ

うふふ、ミユさんも今日の主役ですよ?

ミユ

ふぇっ?

ニッコリと笑ったつかさが、空子に渡したものと同じ、小さなピンク色の花束を差し出す。

その相手はもちろん、ポカンとしているミユだ。

つかさ

ちょっと遅くなっちゃいましたけど、お誕生日おめでとうございます。ミユさん♪

ミユ

……

プロデューサー

ほら、ちょっと前まで忙しくて、事務所のみんなで揃うのが難しかっただろ?

プロデューサー

当日にお祝いできなかったのは残念だけど、ケーキ奮発したから許して欲しいな

ミユ

……


ミユはひたすらポカンとしている。頭がついていかないのかもしれない。

まひろ

ふふっ、私もデザインの発案協力したんですよ?


笑顔のまひろさんが、机の上の箱のフタを開ける。

その中から出てきた、大きなケーキは。

ひかり

わぁ、アサガオのケーキ! こんなの初めて見た……!

すごい……かわいい……

大きなケーキは、ピンクや青紫色のクリームでできた、大輪のアサガオに一面埋め尽くされていた。

まひろさんやアイドル達と相談して、この花に決めた理由は、季節だからというのもあるけれど。

まひろ

空子さん、ミユさん、アサガオの花言葉を知っていますか?


まひろさんの問いに、空子とミユが同時に首を横に振る。

まひろ

花言葉って一つのお花にたくさん種類があったりするんですけど、プロデューサーやみなさんが選んだ花言葉は……

まひろ

『固い絆』です

空子

あ……

ミユ

固い、絆……


空子とミユが、同時に目を丸くした。

そこへ、八葉とつかさも

八葉

そっそれでですねっ! プレゼントのブーケにも意味があるんですっ!

つかさ

こちらの花言葉は、留奈さんが教えてくれました。この花が良いんじゃないかって

留奈

ちょっ……!


つかさに無邪気に暴露されて、留奈が咄嗟に慌てた声を上げる。

しかし、全員の期待の視線を浴びてしまって、赤面した留奈はそっぽを向きながらも答えてくれた。

留奈

ぴ、ピンクのスターチスの花言葉は……

留奈

『永久不変』よ! 何よ? 気に入らないなら新しい花買って来るわよ!?

ひかり

留奈ちゃん好きぃ……

留奈

何でひかりが泣きそうになってるのかしら!?


何だか場の空気が賑やかすぎる気もするが、粛々と進めないことには本当に料理が冷めてしまう。

そこに気づいたらしく、全員が素早く席について、やっと準備が整った。

えっと、ロウソク何本立てればいいの? 二人分?

千乃

そんなに立てたらお花がズタズタになっちゃう……こんなにキレイなのに……

ミユ

そんなら自分の分はええで? 空子さんの分だけ……

八葉

だっだめですうぅ! ミユさんも今日の主役なんですうぅ~!

ミユ

あはは、わかったわかったから妥協せえへんからやっちゃん泣かんといて

つかさ

それなら、今ここにいる人数に、七瀬さんと美春さんとあやせさんを加えた数を立てるというのはいかがでしょう?

千乃

つかささんナイスアイディア!


どうにも忙しない感じだが、ようやくハッピーバースディを歌うことができそうだ。

ふと、上着の袖を引っ張られて。

そちらに顔を向けると、僕の顔を見詰めながら、空子が微笑んでいた。

空子

プロデューサー……ありがとうございます

空子

唯ちゃんと千乃ちゃんに、あったかいお料理を作ってもらって

空子

こんなに嬉しいプレゼントも、いっぱいもらって

空子

きっと今の私、世界で一番幸せです!


少し涙ぐんだ瞳で、空子は本当に幸せそうに笑った。

プロデューサー

事務所にも、ファンからのプレゼントがたくさん届いてるんだ

プロデューサー

それも、後でミユと一緒に見ような

空子

はいっ!

空子の笑顔は、プロデューサーの僕も幸せな気持ちにしてくれる。

ハッピーバースディ、空子、ミユ。

これからも一緒に頑張って、世界にたくさんの幸せを運ぼう。

おまけのハッピーバースディ!

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