――DAY 5――

午後

店奥

ヤロスラフ(スラーヴァ)

店ちょぉおおお!

店長

わっ、ちょっとスラーヴァ、一応営業中はこっちには入ってこないでくれよ

ファイーノチカが……帰ってこないんだ!!

店長

え? ファーヤが?

俺が酒飲んだの、そんなに怒ってたのか?
それとも、他の奴らみたいに攫われちまったのか?!

店長

お、落ち着いて。ファーヤだって年頃の女なんだし、いままで家出もしなかったのが不思議と思えば……

年頃の女だと?! まだ嫁にはやらん!!

店長

いやいやいやいや、そういう意味じゃなくてね……

店員

店長? 誰かが馬鹿みたいに買ったせいで、魚の在庫が少なくなってますけど……

まさかお前か?!

店員

何の話です?

ファイーノチカだよ!! いなくなったんだ

店員

ええ……違いますよぉ……

店員

……あ、セミョーンさんがいないって話も聞きますし、二人で駆け落ちとか……

店長

お前はなんでそうやって面倒なタイミングで現れたり火に油を注ぐようなことを言うんだ!!

店員

えー?

いや、俺はショーマは信用してるからな

あいつは、どこぞの誰かみたいに勝手に人様の娘に手を出すような奴じゃねぇ

店員

なんでこっち見ながら言うんですか?

店長

『猫は自分が誰の肉を食べたのか知っている』って言うよな。自分の胸に聞いてみろ

店員

店長もなんでそんな余計なこと言うんですか!

店長

お前馬鹿だから意味分からないかと思って

店員

ことわざくらい親が居れば誰でも5歳までに覚えますよ

……んなことは、どうでもいいんだよ

店員

……いやそんな、ちょっとからかったりはしましたけどそんな、手を出したりはしてませんよ!

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

……

……

……

物音に飛びつくように

あたりを見渡したシャルロッタは、

ドアの向こうに呼びかけた。

セミョーンかい?

……まさか、アルセーニュシュカなのかい?

Ж

アルセーニュシュカ……「アルセニー」の親称。

Ж

音が止んだ。

カンテラを手に取ると、

シャルロッタは扉に手を掛けた。

扉が開いた、そのとき。

宿屋シャルロッタ(ロッタ)

!!!

シャルロッタの肩越しに何かが、

扉の向こうへ飛んでいった。

確かに、何かにぶつかった音がする。

シャルロッタの後ろにいた人物は

素早い身のこなしで扉を蹴り開けたが、

すでに外には何もいなかった。

チッ……楽はできないか

そして、小さく息をついた。

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