寿羽

…よし、今日はいつもよりちょっと早く起きられた!
なにかいいことあるといいなぁ

寿羽

えっと、持ち物でも確認しようかな。

寿羽

端末に、お財布…、社員証に、昨日切らしちゃったホチキスでしょー…ん、全部入ってる

寿羽

それじゃ、いってきます!!!

最寄駅から、二駅離れたところに私の働いている職場は存在する。
技術が進歩した今じゃ、電車は全く揺れない(ずいぶんと昔は揺れていた、これはおばあちゃんの談)。だからなんだと言われると、電車内の広告が見やすくなったぐらいだ。

職業柄、時勢に詳しくないといけないと思っていて、週刊誌を買ってる。
それらの広告が載っていたりするので、電車の広告はよく見るだけだ。ほら、簡潔にまとまって内容先取り出来るから。

寿羽

あ、コレは昨日の夜ニュースに出てたやつだ…。

大きな見出しとともに書かれていたのは、先日起きた《能力》による無差別殺人事件の犯人と、政界の要人が繋がっていたというものだった。

《能力》。
それは人知を超えた力を指す。


人に『超能力』なんて芽生えたのは、数えきれない程昔の話。
いまではすっかり常識になって、『超能力』が当たり前な世界となった。

寿羽

被害者の扱いが違うと思ったら…この事件、『無能力者』しか被害受けてないのか

『無能力者』。
それは、《能力》を持たない人たちの総称。

当然となった《能力》がなく、あらゆる特権をもつ『超能力者』に虐げられている、一般人。
昔、『無能力者』なら命を奪っても構わない、なんて言う学者もいたぐらい、立場がない。

寿羽

まぁ、私もその一人なんだけどね。
ぱっと見じゃあ、区別つかないから堂々としてればわかんないから、オドオドしないって決めた。

それは、職場の人に教えてもらったこと。
私の職場は、『無能力者』の人が多いのだ。

でも、『無能力者』たちにだって、頼れるヒーローはいるのだ。
唯一、『無能力者』絡みのありとあらゆる出来事を受け持つ、民間の探偵事業がある、

寿羽

よし、着いたぁ。
今日も頑張ろう、お仕事。

名前を、【能力外探偵社】。

そして、私、瑞城 寿羽(みずしろ ことは)の職場でもあるのでした!

寿羽

おはようございまーす…ってあれ?

寿羽

誰もいない?

・・・・・・・・・・・・・。

おっはよう!!いい朝だなぁ!!!

寿羽

うわぁ!!

寿羽

もうっ!!!びっくりさせないでくださいよ、社長!!

びっくりしただろー、超背後から大声出したもんな!

寿羽

心臓止まるかと思いましたよ…。

寿羽

・・・。
社長。一ついいですか?

ん?どうかしたかー?

寿羽

その手に隠し持ってる茶色の束はなんですか?

寿羽、お前の眼は節穴か?どう考えてもねぎだろ?

寿羽

私の知ってるねぎは、そんな色してません。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ね、ねぎ…

寿羽

何 に 漬 け た ね ぎ で す か ?

にんにくが主の俺自家製漬け汁!!!

寿羽

今すぐ捨ててきてください、いいですね?

・・・・・ウィッス

寿羽

はぁ…、まったく社長のねぎ好きには困ったなぁ…

ねぎのにんにく風味漬けを披露したあの人は、この会社の社長、高梨 涼(たかなし りょう)という。
心はいつでも高校生な23歳で、ねぎとニュースキャスターに愛を注ぐ、はた迷惑な人である。

寿羽

思わず出てきちゃったけど、行くあてないんだよね

春華

寿羽か?

寿羽

春華さん!おはようございます!

春華

あぁ、おはよう。いつも早いな

寿羽

そんなことないですよ、今日はたまたま、いつもより早起きしたんです!

この和服美人は、玖珂 春華(くが はるか)さん。
この会社の副社長で、名家のお嬢様だ。でも、今は家を出て、一人暮らしをしている。
私が、居候させていただいているひとでもある。

寿羽

春華さんは昨日、会社に泊まったんですか?
大分、お時間かかってましたよね…

春華

いや、流石に深夜だったが帰ったよ。
友(とも)が車を回してくれてね

春華

心配かけてしまって悪いな

寿羽

そうだったんですね!

寿羽

あ、そうだ。春華さん、いまはまだ入らないほうがいいですよ

私は、今まであった「ねぎ事件」を話した。
春華さんは、相槌を入れながらちゃんと聞いてくれた。

春華

全く、懲りない奴だな。
ありがとう。では、少し外に出ることにしよう。

春華

寿羽、悪いが資料室で寝てるであろう、彼奴を起こしてきてくれないか?

寿羽

はい、わかりました!

春華

今日は午後から、客が来る。
それまでに、終わらせられるものは終わらせるように伝えておいてくれ。

寿羽

はい、了解です!

その②に続く

序章「能力外探偵社」①

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