私が出会ったその人は、白馬が似合いそうでも、剣を構えられるような人ではなかった。むしろ、哀しそうで、掴んでも消えてしまうような……
私が出会ったその人は、白馬が似合いそうでも、剣を構えられるような人ではなかった。むしろ、哀しそうで、掴んでも消えてしまうような……
セレナと魔法の絵の具
第二話 出会いと対立
ラスベール城内のパーティ会場にて
いやぁ、よく来てくれた!
ユースラティアの姫君よ
お会いできて光栄ですわ、ラスベール国王!
私のことはセレナとお呼びくださいな!
うむ、遠慮なくそう呼ばせてもらおう!
そしてすまない、本当だったら私の息子もここにいるのが礼儀というもの…
だが彼は、私や家来にも「名前を口にするな」と口止めするくらい人嫌いでね…
とても恥ずかしがり屋な殿方なのですね。
奥ゆかしくて、私は良いと思いますわ!
セレナ君は優しいんだねぇ。ぜひ息子に会わせてやりたいものだ
お褒めいただき光栄ですわ!
このまま、王子の部屋に案内してもらえる流れに持って行くわ!頑張るのよ、愛想笑いで筋肉痛になりそうな私の頬!!
王子は今、どちらに?
ああ、自室にこもっているはずだ
しかし、部屋の案内もするなと言われていてね…残念だが、今日は会わせられそうにない
そうですか…すこし残念です
はぁ〜?どんだけオタク気質なのよ!
本当にすまない!
いえいえ!王子がそうお望みならば、仕方がありませんわ!
父として情けないが、どうも説得に折れなくてな…
なにも、このような機会が二度と訪れないわけではないですわ!また次の機会で大丈夫です
そう言ってくれると助かるよ。
では、思う存分楽しんでくれたまえ
はい!
全く…この超絶美少女である私に会う機会を自ら拒むだなんて!人生10割損してるわ!
でも、どうしてそこまで人に会いたくないのかしら…?
そうだわ!もういっそ、こっそり王子に会おうかしら!
そうね…あまり大きな声では他の方に聞こえるから……
セレナは少しだけ息を吸い込み、腹部を膨らました。
♪〜どうか届いて、私の声よ
……………
セレナは歌い終わると、耳を澄ませた
………見つけた!
セレナは向かっていた方向と逆に歩き出し、ある場所に立つ
ふふっ、さすが私!きっとここから王子の部屋に繋がるわ!
セレナは地下へ続く薄暗い階段を、物怖じせずに進む
さぁ王子様はどんなお顔なのかしら〜?
な、なにここ…ちょっと散らかっているわね…
誰だ!!
きゃっ!
今日はここに誰もこないはずなんだ……
どうやって見つけた!?
無断で、ここに足を踏み入れたことは謝るわ。
でも、そのナイフは仕舞うべきじゃない?
ナイフじゃない、マチェットだ
同じようなものでしょ?
仕方ないわね…警戒心を解く良い情報を教えるわ
良い情報?
えぇそうよ!
なんていったって私は、隣国のユースラティア王国の王女、セレナなんだから!
知らないな
はぁ!?
ユースラティア王国は聞いたことある。でも、君のことは知らない
ちょっと…今日のパーティに来る王族達の名前くらい把握しなさいよね!
そういうのに興味ないからね。
第一、許可もなく勝手に部屋に入って来る姫君の名前なんて知りたくもない。
なによそれ!貴方がパーティに来ないから、私が直々に来てやったんじゃない!
その上から目線な発言はどうにかできないの?
どこの国の姫様もこんな傲慢だとしたら、世も末だね
貴方みたいな引きこもり王子に言われたくないわ!国を思う気持ちがあるなら、少しは外に出る努力をすれば!?
…僕は、王族に生まれたくて生まれたわけじゃない!別にこの国がどうなろうと関係ない、そう言える身分に生まれたかったよ!
………
ごめんなさい、貴方の事情も知らずに勝手なことばかりして
えっ……きゅ、急になんだよ。そんなしおらしくされたら、困るだろ…
だって、そこまでして外に出たくないのだって、貴方なりの理由があるのでしょう?
それを聞きもせずに否定するのは、良くないわよね
………
………絵を、描いてるんだ
…え?
だ、だから!……絵を描いてて、それに夢中で、い、いやそれだけが理由じゃないんだけど!
絵を描いてるの!?
う、うん…
見てみたいわ!ぜひ見せて!!
で、でも人に見せたことなくて…
独りよがりでずっと描いてたから…
私が一番最初に見れるってことよね?
なおさらうれしいわ!
じゃ、じゃあ見せるよ。僕の作品
………。
下手かな……?
そんなことないわ!どれもとっても素敵な絵ね!
ほ、本当に?
ええ!とくにこのバラの絵!本物みたいだけど、どこか儚げで、現実味がない感じで…
うーん、言葉にするのが難しいわね!
そっか…気に入った?
気に入ったわ!自分のお部屋にかざりたいくらい!
………!!
そこまで言ってくれるなんて……
嬉しいよ
今、初めて笑った…
ふふっ、なんだか心が温かいわ…
To be continued