私が出会ったその人は、白馬が似合いそうでも、剣を構えられるような人ではなかった。むしろ、哀しそうで、掴んでも消えてしまうような……

セレナと魔法の絵の具

第二話 出会いと対立

ラスベール城内のパーティ会場にて

ラスベール国王

いやぁ、よく来てくれた!
ユースラティアの姫君よ

セレナ

お会いできて光栄ですわ、ラスベール国王!
私のことはセレナとお呼びくださいな!

ラスベール国王

うむ、遠慮なくそう呼ばせてもらおう!

ラスベール国王

そしてすまない、本当だったら私の息子もここにいるのが礼儀というもの…
だが彼は、私や家来にも「名前を口にするな」と口止めするくらい人嫌いでね…

セレナ

とても恥ずかしがり屋な殿方なのですね。
奥ゆかしくて、私は良いと思いますわ!

ラスベール国王

セレナ君は優しいんだねぇ。ぜひ息子に会わせてやりたいものだ

セレナ

お褒めいただき光栄ですわ!

セレナ

このまま、王子の部屋に案内してもらえる流れに持って行くわ!頑張るのよ、愛想笑いで筋肉痛になりそうな私の頬!!

セレナ

王子は今、どちらに?

ラスベール国王

ああ、自室にこもっているはずだ

ラスベール国王

しかし、部屋の案内もするなと言われていてね…残念だが、今日は会わせられそうにない

セレナ

そうですか…すこし残念です

セレナ

はぁ〜?どんだけオタク気質なのよ!

ラスベール国王

本当にすまない!

セレナ

いえいえ!王子がそうお望みならば、仕方がありませんわ!

ラスベール国王

父として情けないが、どうも説得に折れなくてな…

セレナ

なにも、このような機会が二度と訪れないわけではないですわ!また次の機会で大丈夫です

ラスベール国王

そう言ってくれると助かるよ。
では、思う存分楽しんでくれたまえ

セレナ

はい!

セレナ

全く…この超絶美少女である私に会う機会を自ら拒むだなんて!人生10割損してるわ!

セレナ

でも、どうしてそこまで人に会いたくないのかしら…?

セレナ

そうだわ!もういっそ、こっそり王子に会おうかしら!

セレナ

そうね…あまり大きな声では他の方に聞こえるから……

セレナは少しだけ息を吸い込み、腹部を膨らました。

セレナ

♪〜どうか届いて、私の声よ

セレナ

……………

セレナは歌い終わると、耳を澄ませた

セレナ

………見つけた!

セレナは向かっていた方向と逆に歩き出し、ある場所に立つ

セレナ

ふふっ、さすが私!きっとここから王子の部屋に繋がるわ!

セレナは地下へ続く薄暗い階段を、物怖じせずに進む

セレナ

さぁ王子様はどんなお顔なのかしら〜?

セレナ

な、なにここ…ちょっと散らかっているわね…

誰だ!!

セレナ

きゃっ!

謎の少年

今日はここに誰もこないはずなんだ……
どうやって見つけた!?

セレナ

無断で、ここに足を踏み入れたことは謝るわ。
でも、そのナイフは仕舞うべきじゃない?

謎の少年

ナイフじゃない、マチェットだ

セレナ

同じようなものでしょ?

セレナ

仕方ないわね…警戒心を解く良い情報を教えるわ

謎の少年

良い情報?

セレナ

えぇそうよ!
なんていったって私は、隣国のユースラティア王国の王女、セレナなんだから!

謎の少年

知らないな

セレナ

はぁ!?

謎の少年

ユースラティア王国は聞いたことある。でも、君のことは知らない

セレナ

ちょっと…今日のパーティに来る王族達の名前くらい把握しなさいよね!

謎の少年

そういうのに興味ないからね。

謎の少年

第一、許可もなく勝手に部屋に入って来る姫君の名前なんて知りたくもない。

セレナ

なによそれ!貴方がパーティに来ないから、私が直々に来てやったんじゃない!

謎の少年

その上から目線な発言はどうにかできないの?
どこの国の姫様もこんな傲慢だとしたら、世も末だね

セレナ

貴方みたいな引きこもり王子に言われたくないわ!国を思う気持ちがあるなら、少しは外に出る努力をすれば!?

謎の少年

…僕は、王族に生まれたくて生まれたわけじゃない!別にこの国がどうなろうと関係ない、そう言える身分に生まれたかったよ!

セレナ

………

セレナ

ごめんなさい、貴方の事情も知らずに勝手なことばかりして

謎の少年

えっ……きゅ、急になんだよ。そんなしおらしくされたら、困るだろ…

セレナ

だって、そこまでして外に出たくないのだって、貴方なりの理由があるのでしょう?
それを聞きもせずに否定するのは、良くないわよね

謎の少年

………

謎の少年

………絵を、描いてるんだ

セレナ

…え?

謎の少年

だ、だから!……絵を描いてて、それに夢中で、い、いやそれだけが理由じゃないんだけど!

セレナ

絵を描いてるの!?

謎の少年

う、うん…

セレナ

見てみたいわ!ぜひ見せて!!

謎の少年

で、でも人に見せたことなくて…
独りよがりでずっと描いてたから…

セレナ

私が一番最初に見れるってことよね?
なおさらうれしいわ!

謎の少年

じゃ、じゃあ見せるよ。僕の作品

セレナ

………。

謎の少年

下手かな……?

セレナ

そんなことないわ!どれもとっても素敵な絵ね!

謎の少年

ほ、本当に?

セレナ

ええ!とくにこのバラの絵!本物みたいだけど、どこか儚げで、現実味がない感じで…
うーん、言葉にするのが難しいわね!

謎の少年

そっか…気に入った?

セレナ

気に入ったわ!自分のお部屋にかざりたいくらい!

謎の少年

………!!

謎の少年

そこまで言ってくれるなんて……
嬉しいよ

セレナ

今、初めて笑った…

セレナ

ふふっ、なんだか心が温かいわ…

To be continued

第二話 出会いと対立

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