さざ波の音が聞こえてくる。
仄かな潮の匂いと強く吹き付けてくる風に閉じていた目を開ける。
そこには青い空との境界線が曖昧な大きな海と白い砂浜が広がっていた。
さざ波の音が聞こえてくる。
仄かな潮の匂いと強く吹き付けてくる風に閉じていた目を開ける。
そこには青い空との境界線が曖昧な大きな海と白い砂浜が広がっていた。
えーと…ここはどこだ?
彼女は見知らぬ光景に戸惑いを覚えつつ辺りを見回す。
海の反対側、砂浜の向こうには森が広がっている。
というか、何で私はここにいるんだっけ?
……ん?
そこでふと右手に何か握りしめていることに気付く。
広げてみるとそれは一枚の紙切れだった。
文字がびっしりと並んでおり、彼女はしばらくの間紙切れの書かれている文字を目で追った。
『妖刀『妖鬼の短刀』を破壊してこの世から消し去ること。
この先街へ辿り着いた場合、『妖刀を手に入れ都へ献上する』者の護衛をすること。』
…なるほど。
これが私の『役目』ってことになるのか。
ひとり納得していると、手の平の上で紙切れが音もなく散布する。
それは煙の如く跡形もなく消え去ってしまった。
あ…、消えちゃったものはしょうがない。
まあ、行くか。
彼女はその場を離れようとしたが、どこからか急に誰かの呻き声が聞こえてきた。
なんだ…?
見ると、向こうに人が倒れている。
砂浜の上に倒れ伏している人物は全身びしょ濡れだった。
あの…大丈夫ですか、生きてますか。
うう…
ここは…?
見ての通り、海辺の砂浜ですよ。
! 君は一体…
傍に人がいるのに気が付いていなかった彼は驚いて上半身を起こし、彼女の方を見た。
私は…えっと、怪しい者じゃないですよ。
しがない旅人ですよー。
当てもなく各地を渡り歩いていまして、この辺りのことはさっぱりなんですよ。
勿論、全部嘘だけど。
そうか…。
俺は…いや、俺もあんたと同じ旅の者だ。
舟で移動していたが嵐に襲われて…
どうやらここへ流れ着いたようだ。
それは災難なことで。
お身体は大丈夫ですか?
ああ…一応は動ける。
彼は大分落ち着いた様子で立ち上がり、服についた砂を払い落とす。
えっと…ここに居座ってもあれだし、私は今から向こうの森の方へ行こうと思ているんだけども…
俺も一緒に行ってもいいか?
よしきた。
旅の仲間が増えるのは大歓迎ですよ。
そう言って彼女は彼に手を差し伸べる。
彼はややぎこちない動きだが、素直に彼女の手をとって握手を交わした。
俺はキクラだ。
私は…ツツジ。よろしくね。
一通り自己紹介を終えたふたりは森へ向う。
そこは鬱蒼と茂る雑草と乱雑に木々が立ち並んでおり、獣道が真っ直ぐに伸びていた。
そういえば、お宅はこの辺りについて何か知っていますか?
私はここに来たばかりで土地勘がないもので、色々教えて頂きたいのですが。
すまない。俺もここに初めて来たばかりで、何も知らないんだ。
ふむ、そうですか。
なら、このまま進むしかなさそう…。
この先に村か街へ続いていることを期待しましょう。