「陰と陽の中間点」

魔法使い・ソール・グルナディエが親友である榊十四郎と祖国を救うために戦った、ある種の英傑譚。


そんな陰と陽に残された、最後の最大の謎。



それは―――――――

村長は何故、全く信用されてないのか

ソール・グルナディエ

どうでもいい

古森

…………え?

ソール・グルナディエ

え? じゃないだろう。だいたい村長の存在自体忘れていた人が多かったというのに、今更あんな変態のことなど知りたくもない

風ノ助

さすがにちょっと言い過ぎじゃねえか……

古森

まぁ久しぶりの出番だ、少しは話させてくれ。せっかく将軍様もいるのだしな

榊 十四郎

ソールならどれだけ老いても愛せる自信がある

ソール・グルナディエ

止めなさい!!

古森

まず、村長はこの村の出身だった。当時は十国は統一されていたが、先々代の将軍が死んだのを機に武器を取り始めた。それは徐々に勢力を増やしていき、遂に将軍自ら平定に出なければならなくなった

榊 十四郎

あの頃は、まだ迦楼羅様が将軍になりたてだった。十刻ではあの方は認められていたものの、まだ地方に名が届いてなかったのだろうな

古森

そこで、各地での志願兵の募集に村長も参加した。当時から迦楼羅将軍を慕っていたらしい

ソール・グルナディエ

そういえば、以前にも言ってたような……

古森

平定後は十刻で20年以上兵として勤めたらしい。首を痛めたのを機会に兵を引退して村に戻ってきたとき、ふと思い出したそうだ

古森

わし、童貞じゃん

ソール・グルナディエ

…………はぁっ?

古森

どうやら、村長は今まで都にいながら出逢いに恵まれたことがなかったらしい。そのくせ自分から声をかけることもなく、綺麗な女子とすれ違う時はいつも俯いていたそうだ

風ノ助

えぇ~……ヘタレすぎねぇ?

古森

そして、誰とも経験ないまま村に帰ってきて、急に寂しくなった村長は出稼ぎに行って夫がいない女性のところにおしかけて手を出そうとしたんだ

ソール・グルナディエ

……なぁ、これは十国の法律的にどうなんだ? アウトか?

榊 十四郎

答えるまでもないだろう

風ノ助

ただ、ここの女性もたくましいからさ、必ずと言っていいほど返り討ちにあってたな。そして、出稼ぎから帰ってきた旦那さんからまた制裁を受けて……俺が小さい頃は生傷絶えなかったなぁ

古森

ちなみに、それがあってから女性を一人で家に残すと襲われると、出稼ぎの際に妻を連れていく夫婦が急増したそうだ

ソール・グルナディエ

社会現象起こしてる!?

風ノ助

最近はおとなしくなったけど、昔は本当に酷かったんだ

古森

それでも、有事の際にはちゃんと仕事してくれてたし、本当の意味で嫌ってる人はいないだろうさ

若菜

もーうっ!! なんで湯浴みしてる最中なのに覗いてくるのよ馬鹿村長!! 大っ嫌い!!

村長

そ、そんな怒らんでもよかろうて………

ソール・グルナディエ

…………

古森

……榊将軍

榊 十四郎

あぁ。連行しよう

風ノ助

村長…………

ソール・グルナディエ

今日も平和だな…………

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