異世界のですけど(^_-)-☆
はい!110番です。事件ですか?事故ですか?
じ事件です!部屋からずっと赤いヒトガタみたいなのに追いかけられてて!しかもそいつ斧を持っています!
現在地分かりますか?
役所のエントランスです!
異世界のですけど(^_-)-☆
笑えねぇ…
部屋からエントランスまで逃げたのは良かった。幸いな事にヒトガタはそれ程速く無かったし、俺の体力も回復していた。
が、瓦礫の散乱するエントランスにて転び、足首を挫(くじ)くとは予想していなかった…
エントランスの床に座り込み今に至る。
…110番ごっこをしたくなる俺の気持ち、分かってくれる?
暗がりから赤いものが浮き出てくる。
俺ここで死ぬのか。ちょっと待ってくれよ。
まだ足首を固定すれば動けるかも。挫いたのは片方だし、何かベルトみたいなもんがあれば…
ちょうど霊符(ふだ)のホルダーがあるじゃない!それ使えば固定でき
ん?
んん?
俺、霊符持ってるじゃん。
イィヤッホッーーーイ!!!
奇声を上げて霊符に縋りつく。
頭おかしくなった訳じゃないよ?テンション高めなだけだよ?
ゥウ…
赤いヒトガタがそばまで来ていないか横目で見ながら急いで確認する。
元々俺は霊符を最低10枚は持ち歩くようにしている。
で、スライム、魔獣との戦いで1枚。
役所での披露で1枚。
残ったのは
霊符(ふだ)が4枚
癒符(いふ)が2枚
護符(ごふ)が2枚の
計8枚
祓うとしてもスライムだと一撃だったが、あれは手強そうだ…
仕方ない。逃げよう!
まずは生き延びるのが大切だから!
ヘタレと言われても否定出来ないがな!
癒符を足に触れさせ唱える。
ひとふたみよ いつむよなな やここのたり ふるべゆらゆら
結構簡略化したが、効果はばつぐんだ!
よっしゃ!
脱兎のごとく駆け出し、出口へ。
しかし。希望が見えた事で安心してしまった俺はミスを犯した。
そのまま脇目を振らず走ればよかったのに
つい振り向いてしまった。
そこには
Grraaaaaaaa!!
唸る赤いヒトガタと
こちらに向かって飛んでくる赤い斧があった。
ヤバイ
事態を理解したと同時に脚が動かなくなる。
斧が
赤い色が
俺の視界全体を
覆うようにゆっくり
広がって
広がって…
クロガネしゃがめぇぇぇぇぇっ!!
足をもつれさせて床に倒れ込んだ俺の頭上で火花が散り
うおぉぉぉらぁっ!
まるでホームランを打つ野球選手のようにゲンナイさんは華麗に斧をはじき飛ばした。
勢いそのままにヒトガタへ向かい
土雷(つちいかずち)
光を纏(まと)った大剣で叩き切る。
す、すげえ…
ふっふっふ。もう大丈夫だクロガネ!と、言いたいところだが
そうは問屋が卸さないんだな☆
ゲンナイさんこっち向いてウインクとかやめて下さい…
じわり、と
吹き飛ばされた霧が再び集まりヒトガタを形作る。
先程と何ら変わりないように見えるが一回り小さくなっているような気もする。
こっちには仲間が来るから、お前は街の中心の広場に避難しろ!
そこに食糧庫があるからミリヤ達と合流してくれ!!
分かったっ
ゲンナイさんの声を背に再び走り出す。
俺にとって、ここはもう
戦場としか表せなかった。
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