マギアフィラフト

ハル

うへ？

エノク

お久ぶりです、ハル。
そして再会の約束……、
果たせましたね。

ハル

あ、あああああああ！

ハル

エノク！！

エノク

お元気そうで何よりです。

メナ

えっ!?

エノク

初めまして。
エノク＝ウィーグラフ
と申します。
シーベルトで
ハルにお世話になった者です。

　エノクは初対面のメナに、爽やかに挨拶をした。物腰の柔らかさは変わっていない。

メナ

あ！
ハ、ハルが言ってた……

メナ

あわわ……
え、えと、わ、私は
メナです。
メナ＝マリオンと申します。

エノク

メナさんですね。
よろしくお願いします。

　エノクは夕日の中、悠然と立っていた。シーベルトの村を出た時と変わらない姿で、酒場で夢を語った時の瞳の輝きをそのままに立っていた。

ハル

な、なな何でっすか？
なんで訓練場に
エノクがいるっすか？

エノク

教官に私の師がおられまして、
少しお話がありました。
そしたら遠くに
懐かしいハルの姿が見えたので。

ハル

あっ、さっき教官室で
面会がどうとかって……

エノク

アルマーニ教官を
ご存知なのですね。

ハル

部屋から聞こえてきた
声っすけど、
「出来た弟子」が
来るみたいな事言ってたっすよ。

エノク

アルマーニ教官がそんな事を？
面会した時は、
ボロクソに言われましたが……。

メナ

あの厳しい教官に
認められてるって凄い。

メナ

って事は、
一、言われなくても
百、実践出来てしまうんですか？

エノク

今もそれを言っているのですね。
私はただ振り落とされないよう
がむしゃらに
付いていっただけです。

　ゆっくりと夕日に視線を移すエノク。目に昔を懐かしんでいるのであろう色を浮かべた。

エノク

それにしても本当に
たくましくなりましたね。

ハル

毎日、刀を振ってるっすよ。
それに今は練習相手も
居るっすから。

メナ

有名な剣士の孫みたいで、
凄く強いんです。

エノク

メナさんといい、良い仲間に
恵まれているようですね。

メナ

わわ私は、
足でまといにしか
なってないんです。
本当に何も出来なくて……。

ハル

そんな事ないっすよ。
今もメナのおかげで
元気出たとこじゃないっすか。

　エノクはハルの元気な姿を確認して、嬉しくなり口角を上げた。

エノク

積もる話もあります。
今夜は街に出て一緒に
食事でもしませんか？
勿論、メナさんも御一緒に。

　ハルの脳裏に、シーベルトで初めてエノクと食事した光景が浮かび上がった。そして二つ返事で答えを返した。

　偶然通り掛かったダナンに事情を伝え、エノクと街に繰り出す事になった。

　ハルはウキウキした気持ちをおさえられない。訓練場を出てからも、様々な話をした。

　両親の話と自身の出生の話・メナの話や仲間との出会いの話、そして訓練の話。刀の教官の話も聴いてもらった。

エノク

ハルは、
基礎訓練はお嫌いですか？

ハル

嫌いというか
早く刀を使った剣術を
教えてほしいっすよ。

エノク

なるほど。
それならば私がお教えしましょう。

ハル

ぇえっ！

エノク

ただし条件があります。

メナ

…………

　エノクはハルを見つめたまま、少しの間を空けてから話し始めた。

エノク

基礎訓練は
今日までと同じ量こなす事。
それだけです。

ハル

それだけっすか？
今日もそのつもりだったから
どうってことないっすよぉ♪

メナ

良かったね、ハル。

ハル

俄然やる気が出てきたっすよ。

エノク

そうと決まれば、
食事の前に何軒か寄りましょう。
付いて来てください、
元気なお弟子さん。

ハル

エノク師匠～！
付いて行くっすよぉ～。

　エノクが向かう先、それは鍛冶屋らしい。刀を扱う者として、知っておくと良いとの配慮のようだ。ずっとゴッツ爺の鍛冶屋で過ごしてきたハルにとって、他の鍛冶屋を訪れる事は初めてだった。

　次から次へと起こる胸の高鳴り。

　「その内きっと良い事ある」
と、声を掛けてくれたメナ。そんなメナに、ハルは心地良さを前面に押し出して、白い歯を見せた。