スリランカから日本へ戻った日、自宅にもどる電車の中で僕はある感情の処理に戸惑っていた。
あの時、高梨さんと一緒にいたとき彼女の嘘に一瞬でも気付く事が出来なかった。そう自分自身の意識をその方向に向けると急に無重力状態のような強い不安感を感じる。
もし、高梨さんが僕の眼鏡が度が無いことに気づいて全く同じ眼鏡に変えられていたら、僕は彼女の嘘に気付く事なく感情に任せて、彼女に抱きついた時感じた見せかけの安心感に逃げ込んでいたかも知れない。
そしてその霞んでしまった視界でもっとはなさんや、玲奈に酷い事を言ってしまったかもしれない
焦燥感って言う漢字をこの前覚えだけど、この訳の分からない
消化しきれない、だけど自分で解決しなければならない課題が頭の中で常にいる状態を、僕は一人でどうにかできるのだろうか。
越谷駅に着いた時、ちひろが駅のベンチにもたれかけ眠っていた。