鋭二郎

まずは保険会社に勤める。
新たな会社に入ったら
アイツらは俺に協力する。
「成績を求められる」
と言えば、保険の一つや二つ。
ただでさえジジイは資産家。
可能なら、
死亡保障を限界まで
上げて加入させる。
そしてジジイを弱らせ
地獄に送ってやる。

鋭二郎

ジジイの資産が洋一に
相続されてから、
洋一を消す!
相続人は典子さんだ。
無論、洋一にも保険を
しっかり掛けさせてやる。
「万一の時に典子さんに
 お金の心配は
 させたくないだろう」
などと言えばイチコロだ。

鋭二郎

後は傷心した典子さんを
俺のものにするだけだ。
クックックック。

鋭二郎

しかし……、足りん!
洋一を始末する手段が足りん……

鋭二郎

お爺さん、出張で東京に
行って、戻ってきました。

祖父

おーおー、
成績優秀者の研修じゃな。
ワシは嬉しいぞ。

鋭二郎

お爺さんに
沢山、契約を頂いたお陰です。
それにしてはつまらない物ですが
お土産です。

祖父

おーおー、ワシになぞ
気を遣わんでいいのに。
顔を見せてくれる
だけでワシはうれしいんじゃ。

鋭二郎

お爺さん、僕もですよ。
僕は、お爺さんが元気で
いてくれるだけで
嬉しいんです。

鋭二郎

このお土産に入れた
毒物はゆっくりと
身体を弱らせていくもの。
ジジイが消えるのも
時間の問題だ。
金はかかるが
少しづつ持ってきてやるか。

鋭二郎

せ、先輩じゃないですか!?

先輩

ぁ……

鋭二郎

間違いない。
コイツは剣道部の高山主将。
俺に偉そうに言ってたくせに
みすぼらしくなりやがって。

鋭二郎

いや、待て!
コイツだ!
コイツが適任。

鋭二郎

嚙み合った!
思わぬところから。
偶然だが……、
完璧な筋書きだ。

鋭二郎

先輩。
僕の部屋に来て下さい。
暖かいものでも食べましょう。

鋭二郎

まずはコイツを
手懐けなければ。

祖父

55年前……、戦争で三人、
殺してしまった。
何の罪もない民間人を。

祖父

それを思えばワシは
長生きしすぎた。

洋一

爺ちゃん何言ってんだ!
まだだ。
まだ元気になれるって!

お爺さん。
どうか弱気に
ならないで下さい。

鋭二郎

…………。

鋭二郎

早くくたばれ。
戯言はあの世で
聞いてもらいな。

鋭二郎

予定通り。
ジジイがくたばったか。
これでしみったれた話を
聞かなくて済む。
それにジジイの資産と
莫大な保険金が洋一に入る。

鋭二郎

これで高山の奴を使える。
アイツを飼うのも骨が折れた。
家で善人ヅラするのも
もう終わりだ。
洋一がジジイを
殺したと刷り込む。

鋭二郎

世の中、洋一のような奴が
幸せそうにしてるんだ。
そうでもしなけりゃ
浮き上がれない。
金を得れない。
世の中に押し潰されるだけだ。

先輩

どうゆうこ、と?
洋一くんが何か?
か、金?

鋭二郎

誰にも……
誰にも言わないで下さい。
洋一の祖父は、
……洋一が……
僕が掛けてもらった保険金、
それを目当てに!

鋭二郎

受取人は洋一だった。
僕が保険なんて入って
もらわなければ!!
クソ! 僕のせいだ!

先輩

間宮君は悪くないよ。

鋭二郎

親友だと思ってた。
それなのに!
なぜあんな酷い事を!

先輩

ぼ、僕は……
裏切らない。

鋭二郎

俺達みたいに無手で
勝負しているのが
馬鹿らしく思えてくるよ。
真面目にやってても
食い物にされてしまうだけだ。

先輩

僕も……、
僕も今までそうだった。
真面目にやっているのに
汚い事をする奴等に
大きい顔されて、
はじかれて……
世間の隅っこの方で……
そこでも蹴られて…………

鋭二郎

もういい……。
こんな話をして悪かった。
今日はもう寝よう。

先輩

ぅぐ、ぅぐぐぐぐぅっ……

鋭二郎

フン、すみっこで泣いてろ。
ずぶ濡れの負け犬が。
だがこれでやつの憎悪が、
これまでの半生の復讐心が、
洋一に向かうはず。
後は微調整しながら
お膳立てをしてやるだけだ。

洋一

え!?

先輩

アイツは殺人鬼。
報いを受けただけだ。

鋭二郎

お前は洋一と一緒だ。
同じ殺人鬼。
法により裁かれなければ
いけない洋一を、
自分の正義感のようなもので
判断し、手を下した。

先輩

ぁ、ぁぁぁあああ

鋭二郎

社会復帰も出来ぬ、
挙句、殺人を犯すなど。
もう僕の前から消えてくれ。

先輩

あああああああああ!
うあああぁぁぁわあああ!!
ああ、ま、まび、やぐん!
ボグを!
僕を見捨てないで!!!
アアアアアァァアァアアァァア!

鋭二郎

クックック。
これで崩壊間違いない。
洋一も事故死なので
保険金は倍額だ。
典子さんもきっと喜ぶはず。

鋭二郎

高山が自殺するのは確認した。
ホームレスが一人、
自殺したところで
警察も何も疑うまい。

鋭二郎の筋書き通りに



三人の命が奪われた































――その後、












鋭二郎と何も知らない典子は






結婚して






幸せに暮らした
























鋭二郎の事故死は






非業の死として






マスコミに取り上げられた
































55年前





洋一の祖父が死の際に語った話と






鋭二郎の死に






因果関係はあるのか






当事者だった鋭二郎にも






証明は出来ない

埋没 完 

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