とぼとぼと家に帰った僕は一人で部屋に閉じこもった。

 正確には、別荘の部屋、だが。

ティモシー

……自分が別荘に来ないかって言ったのに。それはまあ、お酒を止められたけれど飲んだ僕も悪かったけれど


 そう僕は呟きながら、自分の唇を僕はなぞる。

 まさかキスしてくるとは思わなかった。

ティモシー

“親友”はキスしないよね


 
 声に出してみてから僕はその意味についてようやく……今まで目をそらしていたそれを見つめる。

 つまり、ジュリオ王子は、僕を恋愛感情で僕を好きなのだ、と思う。

ティモシー

好きじゃないとキスをしないよね。でも、好きじゃなくてもキスはする気もする


 だからつい出来心でしたのかもしれない。

 僕にそんな事、ジュリオ王子がするはずないし。

ティモシー

うん、“親友”だから試しにやってみただけだよね。それに少し機嫌が悪かっただけ……

ヒロインちゃん

話は聞かせてもらったわ!


 そこで、僕が一人で呟いていたはずの部屋のドアが開かれる。そこには、

ティモシー

わ~い、ヒロインちゃんだ~、うごっ


 ヒロインちゃんが現れたので無防備に近づいた僕は、頭をがしっとヒロインちゃんに掴まれた。

 ヒロインちゃんの握力は結構あるようで頭が痛い。

ティモシー

な、なんでこんな

ヒロインちゃん

この公爵家のアホ息子もアホだけれど、あっちはあっちでヘタレって、別れましょうって言っているような物じゃないの

ティモシー

え? でも婚約破棄……

ヒロインちゃん

あれ、書類と成立しないようになっていたはずなのよ

ティモシー

……え? な、何で

ヒロインちゃん

何でも何もないわ。はじめからジュリオ王子は、公爵家のアホ息子である貴方しか眼中にないのよ!


 面倒くさいというかのように、ヒロインちゃんがそう僕に告げたのだった。

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