お試し・手

おーい!!

金髪の男性

ん? 何だありゃ。手か?

おいでよ

金髪の男性

うぃ~

砂浜から生えてる手の言うこと聞く人は、あなたが初めてだったよ。霊とか見える人?

金髪の男性

いや。でも、何か別に襲われても良いかなって

失敬な、人を襲ったりしないし、そもそも不器用な左手一本に何が出来るのさ!!

金髪の男性

さぁな

ひどっ! 何か一つくらい褒めてくれても良いじゃない!!

金髪の男性

そう言われても、俺も左手みたいな存在だからな

おやまぁ。と言いますと?

金髪の男性

仕事が上手くいかなくてな。いや、正直人間関係も

そりゃあコメントに困っちゃうな

金髪の男性

な? だから左手って、そういう存在なのさ

確かに、そうかもね

でも大丈夫さ

金髪の男性

何を根拠に

左手はね、右手が文字を書く為に紙を支える存在。つまり、縁の下の力持ちなのさ

それに、つい右手が重たい物を持ち過ぎた時、左手は手を貸してくれる。左手は右手にとって必要な存在なんだよ。逆も然りだけどね

それはあまりに当たり前のことだから誰も気づかないけれど、本当は感謝されるべき存在なんだよ左手もあなたもね

金髪の男性

……何だか、逆に励まされちまったな

分かったら、たまに撫でてやりなよ。左手も、あなたのことも

金髪の男性

ああ、有難う。お陰で思いとどまることが出来たよ

何が?

金髪の男性

……分かってるくせに

金髪の男性

じゃあな

 僕が見えてる人は、たいてい、自分の人生に思い悩んでいる人が多い。そうした人を呼び込んで、時々説得したり説教したり、時に海に飛び込んでしまう人には、この手で何度も助けに行った。

 何が言いたいか分かるかい?

 つまり、左手は使えるってことなのさ。

お試し終わり

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