部屋に入ってすぐ結月は慌てて着替えを始めたせいでベッド上に投げ捨てる形になっていたスマホを拾い上げる。
部屋に入ってすぐ結月は慌てて着替えを始めたせいでベッド上に投げ捨てる形になっていたスマホを拾い上げる。
アキが引いてくれたら物欲センサーが反応しないかも知れないし・・・・・・
そう思いながらスマホのアプリ画面を開く。
しかし画面は真っ白で何も映っていなかった。
そのまま放っておいたからローディング画面から開き直しになってる・・・・・・
思わず溜息が漏れそうになったがそれより前に明彦が口を開いた為、そうもいかなかった。
そういえば今日はアプリゲームのガチャが追加される日か
そうそう!流石アキ!!
覚えてたんだ
嬉しくなって言えば明彦は頷く。
ここ数日ずっと救世主(メシア)が言っていたからな・・・流石に覚えた
それなら話が早い。
ねーアキ!お願いがあるんだけど良い?
俺が魔力を使う時が来たという事だな
【訳:構わない】
ありがとう。あのね・・・アキにガチャやって欲しいんだ!
ええっとまずこのアプリを開いてね・・・・・・
言いながら結月は明彦の手を握り操作をさせ始める。
普段は互いに避けているような距離感に内心明彦はドキドキである。
ゆ、ユズ、ち、近い。何か良い匂いが・・・って俺は何を考えてるんだ!
慌てて考えを振り払う。
健全な高校生男子からすると大分無防備で困惑する距離感である。
しかし結月は特に気にしている様子は無い。
結局されるがままになってしまった明彦の頭の中は真っ白である。
Fratello!!・・・べ、別に来てくれて嬉しいとかじゃ無いからね!
空気を読まないタイトルコール(大神大河ver)が響き
結月は一度聞いている朝特有台詞が響く。
この大河の朝の台詞、眠そうな演技が良いってこの間ミサちゃんと盛り上がってね~、アキ・・・聞いてる?
そう言いながら漸く明彦の様子に気付いた結月が問い掛ける。
小首を傾げて尋ねてくるその表情が又無防備で、明彦の心臓の鼓動は更に激しくなる。
今にも飛び出すんじゃないかと思う程だった。
落ち着け俺。平常心、平常心。
心頭滅却、煩悩撃退・・・・・・
呪文のように心中で言う事でどうにか正気を保ち、やっと言葉を返す。
・・・っああ!俺の魔力で解決出来ない問題等無いぞ
【訳:勿論、特に問題等無い!】
それなら良いんだけど。
で、引いて欲しいガチャってのは・・・・・・
相変わらず明彦の手を包み操作させ続ける結月。明彦が内心で大わらわなのは欠片も気付いていないようである。
鈍感なその姿は結月の幼い頃と重なり・・・明彦は少しずつ冷静さを取り戻した。
・・・昔からユズはこれだから困る・・・・・・
彼女に気付かれないように息を漏らし、どうにかこうにか心を落ち着かせる。
ユズ、わかってるから
言いながら彼女の手を握られていない方で優しく外す。
それで漸く結月も現状に気付いた様子で慌てて手を引っ込めた。
!?・・・ご、ごめんね!
今度は逆に慌て出す結月に明彦は苦笑した。
・・・引くから見ていろ
静かな口調で告げ、『Fratello音ゲー』のガチャ頁に移動する。
そんな明彦の様子に照れてた結月も画面に集中し直した。
それを受け、『10回引く』というボタンをタップする。
R以上のカードはボイス付である為、まずそれぞれの台詞が響き、それからガチャリザルトの画面が開く予定だった。
そして数秒後、画面に表示されたガチャ結果に結月は呆然とする事になる。
貴様こそ我の救世主だ
一緒にお話しましょうか
これは運命かな、子猫ちゃん
この俺を引くとは大した奴だ
おねーさん、僕と遊ぼう
ははっ・・・驚かせちゃったかな?
別に出会ってくれて嬉しくなんて・・・
君の為に輝いて見せよう
貴女は俺の手の内です
貴様こそ我の救世主だ
UR R R SR R SR R HR R UR
欲しいのは出たか?
尋ねてくる明彦に結月はロボットのように繰り返し頷く。
明彦が引いた2枚のURこそまさに結月の求めていた『大神銀河~GW~』だった。
それも2枚。
・・・す、凄い!凄いよアキ!!
覚醒出来る!!
『覚醒』とは同じカード2枚を合成してキャラの持つステータスを上げるシステムだ。
これを行う事によってキャラのビジュアルも変わる。
興奮気味に呟いた結月の瞳は輝いていた。
その勢いのまま笑顔で明彦にハイタッチを求める。
一瞬戸惑いながらも明彦は結月のハイタッチを受け、笑顔になった彼女を微笑ましい思いで見守った。
ユズが嬉しそうだから・・・良かったな
そして彼は今日も決意する。
この笑顔を守り抜く
・・・と。
【オタク彼女の面倒彼氏×Fratello】EP1
次回の物語もお楽しみに!