hello world
goodbye world
男は歌う
やぁ、ご婦人。
東洋人を知らないかい?
古い友人なんだ。
hello world
goodbye world
男は歌う
ハァ、ハァ
あんたが噂の……
ゲホッ…
…言うわけがない…だろ…
やぁ、青年。
東洋人の家はこの先かな?
ここの地理には疎くてね。
男は笑う。
酒に酔ってるわけじゃない。
楽しいから笑うのさ。
………日本人の言ってた通り…狂った野郎だ……
どうせこの尋問に……意味なんてないんだろ……
……………あんたは楽しんでるんだ…………
なにが楽しいのかって?
そんな野暮なことを君は聞くのかい?
まぁ、意味なんてないさ。
しいて言うならこれが楽しい夢だから。
男は笑う。
……………誰だ
おいおい、お友達の顔も忘れたのか?
俺だ、アダムスキーだ
久しぶりだな
アダムスキーなのか……?
あぁ、久しぶりだな
どうしてここが?
おいおい、俺は情報屋だぞ。
これくらい朝飯前だ。
それより彼女は元気か?
あぁ、元気だ。
今は学校に通わせている。
俺は少し気が抜けていた。
この慣れない土地で知っている顔を見たことで。
それか彼はある意味、俺の恩人であるからか。
あんたのおかげだ。
あんたがいなければ俺は無意味に死んでいた。
…………………………
……アダムスキー?
すまない……
………?
くく………
ハハハハハハハハ!!!
突然アダムスキーは笑いだす。
まるでこの世界自体が可笑しいかのように。
まるで存在自体が可笑しいかのように。
そしてアダムスキーの口は三日月のように裂ける。
愉快!愉快!
あぁ、この瞬間のために私は存在している。
お前は誰だ…!
確かに、先ほどまでアダムスキーと話していた。
そのはずだ!…………そのはずなんだ!!
誰かだって?
ハハハハハハハハ!!
もちろん、アダムスキーではない。
この体は頂いたがね。
まぁ、君が私を忘れるはずがないだろう?
エビット……
その名前が俺の眠っていたモノが目覚めた。
もう出ることはないと思っていた。
どこかで安心していた。
彼女と幸せに暮らせると。すべては幻想だと今では思う。何故なら俺はこんなモノを飼っていたのだから。
エビットオオオオオオオ!!!
何故、何故今なんだ……
あと少し早く会えていれば復讐しか考えずに済めたのに……
それか、あと少しお前が現れるのが遅ければ………
俺は……
全てを、復讐を、忘れられたかもしれない
いいぞ、いいぞ。
復讐の炎に燃えるお前こそお前だ。
最後の、そして始まりのショーを始めようか。
いあいあ クトゥグア ふんぐるい ふぐたぐん
俺は復讐者に戻ってしまった。
すまない、ソーニャ。
俺は君に嘘をついた。
君を最後まで守ることができなかった。
……私の罪………
どうしたんだーソーニャ
寝起き悪いのか―
すこし夢が怖くて…
私に罪があるって
もう……そんな季節か
リラ?
リラは立ち止まりこれまで見せたことが無い表情だった。
それは驚きと悲しみの混ざったものだった。
おいおい、なんだあれ!!
山火事じゃねぇか!!
男ども集めろ!!
山火事?
振り返り、人が集まる方向を見る。
そこは朝、私が歩いて来た道側だ。
そして私が出てきた家は業火の中心であった。
あ、ああ
お父さん……!!
私は走り出そうとした。
しかし、走り出せなかった。
私の右手が何者かに掴まれたからだ。
行ってはいけない、ソーニャ
離してリラ!お父さんが!!
あれはソーニャの罪……
ソーニャが望んだ……
私の……?
私はそんなこと望んでない!!
リラが何を言っているか私にはわからなかった。
私は無理やり腕を振り払って走り出した。
速く、もっと速く。
しかし、幼い私はあまりに非力であった。
火の勢いは私の走る速度などとうに超えていく。
どうか、ミノルが無事ですように、と祈ることしかできなかった。
ああ、自分はどこで間違えてしまったのだろうか。
こんなはずではなかった。
あの憎き貌のなき神には遠く及ばない。
そもそも復讐ですら愚かだったのだ。
ああ、
どうかあの子だけはあの神とはこれから先、
無関係であってほしいと願わずにはいられない。
最期に愚かなる自分に
力を貸してくれた神を讃えるとしよう。
いあ イア Cthugha
そのまま落ちるはずだった伸ばした手が誰かによって掴まれた。
お父さん!!
小さい手だ、そしてこの声
俺を父と呼ぶ少女。
…ソーニャ…俺は君を最後まで守ることが…できそうにない
なんで……なんで…私はあなたがそばにいてくれたらそれでよかったのに…!!
私の周りからなんでみんないなくなっちゃうの?
私は……私は……!!
もう知ってしまった!!家族の温かさを!!
もう…一人は…嫌だ……もどりたくないよぉ……
そうか、俺は彼女を孤独から救ってしまった。
死んでもいいという彼女を生きたいと思わせた。
そして俺は死んでいく。
なんと俺は身勝手な奴なんだろうか。
ミノルなんて…大っ嫌いだ……
……………すまない………
力が抜けていく。
意識は薄い。
最後に娘に嫌われてしまった。
もっとソーニャと………………
お父さん………?
お父さん!!……お父さん!!
お父さああああああああああん!!
う……うう
…うわああああああああん
ソーニャ……
あなたのお父さんを殺した奴を教えてあげる。
だけど、それは表の世界を捨てること。
あなたのお父さんの意志を踏みにじる。
復讐する?しない?
……教えて……
わかった。
だけどまずは力をつけてもらう、正当な魔術師として。
そして、復讐の舞台は
絶海の屋敷にて。
最後、鳥肌でした…!
切ない雰囲気が堪らなかったです。お疲れ様でした…m(_ _)m
こうやって1話冒頭に繋がるのですね……
じわじわ狂気に侵食される中で、仮初めの幸福が破壊される様が儚くも美しく感じました。
完結お疲れ様です!
CridAgeTさんありがとうございます。そうなんです、実はループ物だったというのが自分がやりたかったことでした。儚くも美しく、そう言って下さると作者として本当に嬉しいです!改めて読んでいただきありがとうございました。
なかなか続きが読めずにいましたが、先ほど『生きる為の狂気』からここまで一気読みしてしまいました!!
ミノルもソーニャもお互いを想い合ってるから、復讐の連鎖が止まらずにループし続ける……悲しいし、切ないけど、素敵なお話でした(^^)