ナタリー

銃の手入れ、これでいいですか?

ジャン

ああ、スコープは念入りに拭いておけよ

ナタリー

はい

ジャン

んじゃ、あとは絵を描いて寝ろ。写真は机の上に置いてある

ナタリー

…………

ジャン

……どうした?

ナタリー

……ダニーさんが見つけてくれれば、私は敵を撃つことができる

ジャン

そうだな。だが、相手はスナイパーみたいだからな。お前もそれなりに腕を上げないとな

ナタリー

その時まで……教えてくれますか? 狙撃のことを

ジャン

…………基礎しか教えねえって言ったはずだぜ?

ナタリー

……ごめんなさい。私今になって怖くなってきました。人を撃つこともだし、本当に私に敵が討てるかどうか……

ジャン

…………

ナタリー

……ごめんなさい、忘れてください。ライフルしまってきますね

ジャン

…………

ジャン

……仕方ねえか

ナタリー

……あの、これは?

ジャン

見てわかるだろう? メロンソーダだ

ナタリー

さっき飲みましたよね?

ジャン

別に何杯以上飲んじゃいけないって法律ないだろうが。そういう気分になっただけだ、一杯付き合え

ナタリー

……はぁ

ジャン

……俺はな、初めて人を殺したのはお前くらいの時だ

ナタリー

えっ?

ジャン

近所に住んでた悪ガキどもが飼ってた猫をエアガンで撃ち殺しちまった。当たり所が悪かったのかもしれないが、その時は本当にショックでな

ジャン

昔から俺には堪え性ってのが無かった。親父が持ってた銃無断で使って復讐してやった。だが、その時の撃つ感覚が怖くてしばらく夜も眠れなかった

ジャン

そしたらさ、次の週には親は死んじまってた。俺が復讐したのはマフィアのガキだったらしい。俺が学校行ってる間に終わっちまってた

ナタリー

…………

ジャン

次は俺だとすぐに分かった。親父のへそくりと銃だけ持ってすぐに町を離れた。少ない金稼ぐために手当たり次第に職を探してたら、別のマフィアの膝元だった。そこから俺は狙撃の練習を始めた

ナタリー

それが、夜露さんが殺し屋になった経緯……ですか?

ジャン

まぁな。ちなみに、この国に来たのは10年前だ。マフィアと折り合いつけながら生きてきたが、色々あって故国じゃ生きれなくなったからな

ジャン

まぁ何が言いたいかって、そんな先のことを深く考える必要ないってことだ。この先なんざなるようにしかならねえんだ、ただ必死に生きてりゃ大概なんとかなってる

ナタリー

……それ、夜露さんだけでは?

ジャン

アホ、この俺がこうやって生きてるんだ。お前も簡単にくたばらねえよ

ナタリー

……きっと、この人なりに励まそうとしてるんだろうな

ナタリー

……私は、お父さんが好きでした

ジャン

ほう?

ナタリー

本当のお母さんは、私を産んですぐに死んでしまいました。再婚した新しいお母さんは、私をどうでもいい存在としか思ってませんでした

ナタリー

お父さんは、仕事やお母さんの相手が忙しくても私を見てくれていました。夜に帰ってきて、私の頭を撫でてくれて……お父さんだけは、私の味方でした

ジャン

……いい親父さんだったんだな

ナタリー

だからこそ、私はお父さんの敵を撃ちたいんです。その後に何が待ってるのかは分からないけど、今私が成し遂げたいのはそれだけです

ジャン

だから、最後まで面倒見ろってか?

ナタリー

はい

ジャン

…………

ジャン

……仕方ねえ。どうせ俺のやることは変わらねえしな。もう少し付き合ってやる

ナタリー

本当ですか?

ジャン

あと、俺のことはジャンでいい。異名で呼ばれ続けてるとむず痒いからな

ナタリー

はい、ジャンさん!

ジャン

……うるせえなぁ、誰だよ……

ダニー

ジャン

もしもし、ダニーか? こんな夜中に何の用だ?

知らせなきゃまずいと思ってな。ジャン、今すぐそこを離れろ

ジャン

……何かタレコミでもあったか?

ゲイリー一派が、そっちに向かってるんだよ!

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