セリヌンティウス

……まぁ……納得できるかどうかといえば納得いかないよね

暗い牢獄の中でセリヌンティウスはつぶやく。
彼はシラクス国内の地下牢にいるわけだが、厳密に言えば彼が悪いわけではない。

時は少しさかのぼる

メロス

王よ!あなたは間違っている!!

メロスは激怒した。
囚われの身でありながら彼は引き下がることはしなかった。
民心を理解しようとせずに悪政の限りを尽くすディオニス王に対しよほどの怒りがあったのだろう。

メロスとはそういう男だ

そこでディオニス王はさらに怒りを募らせ、メロスを処刑することを決めた

ディオニス王もまたそういう男だった。

しかし、メロスには約束があった。
妹の結婚式が控えているのである。
大切な妹の結婚式を見届けてから死にたい
それがメロスの願望であった。

メロスは妹の結婚式に行く条件として、俺、セリヌンティウスを身代わりに差し出すと言った。
ディオニス王は少し考えたのちにその提案を受け入れた。

彼にどんな思惑があるのかは俺が知るわけがないが、どうせ見せしめにしてやろうなどというところだろうと推測できる。

どちらにせよ、俺がメロスの身代わりになるということに変わりはない。
メロスは俺の親友だ。
その親友のためなら身代わりにだって……

セリヌンティウス

なれるような人間じゃないんだよなぁ……

セリヌンティウスはまたため息をつく。
居心地が悪いわけではないが、いい気分ではない。
この場で死なれては困るのか、食事もしっかりしたものが出ていた。

飯だ

セリヌンティウス

どうも

あんたも災難だな

セリヌンティウス

まぁな……
でも、メロスはああいうやつだ。
それとわかって付き合ってるんだ。仕方ないよ。

そんなもんかね

顔を見せない騎士は牢から離れていった。
目の前の食事に手を付ける。

セリヌンティウス
この俺は、こういう男だ……

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