爆発の衝撃を間近で受け手足が吹き飛び顔半分が崩壊した無残な姿で絶命しているユキオ。
それはもはや人間としての形状を留めてはおらず単なる焼け焦げた肉塊と化している。
ワゴンのサイドミラーにはベッタリと張り付いて垂れ下がっているユキオの赤黒い肉片。
爆発の衝撃を間近で受け手足が吹き飛び顔半分が崩壊した無残な姿で絶命しているユキオ。
それはもはや人間としての形状を留めてはおらず単なる焼け焦げた肉塊と化している。
ワゴンのサイドミラーにはベッタリと張り付いて垂れ下がっているユキオの赤黒い肉片。
驚愕のあまり錯乱状態でドアを開けて車外に出ようとするヒトミ。
行くな、無駄だ、もう死んでる
そういって後ろの座席からヒトミの腕を掴むハルト。
ユキオォォー
ヒトミの絶叫が車内に響く。
はやく車をだすんだ!
ハルトが運転席のキタニに向かって叫ぶ。
!!
その言葉でショック状態から覚めたキタニはアクセルを床いっぱいに踏み込むと車を急発進させた。
動き出したワゴンを見て野生動物のような怒りの咆哮を上げるヒラヤマ。
その顔にはサングラスはなく右顔面には引きつって醜くケロイド状の傷跡がある。
潰れ落ち窪んだ右の目があらわになっている。
UGYAHHHHHHHHHHHHHRGH!!!!!!
ノガミが奇声を上げて後部シートに飛び乗った。
次の瞬間ヒラヤマがスロットルを全開にしてクラッチを繋ぐと後輪が悲鳴とともに白煙を立てた。
バイクは激しくホイルスピンしながら前輪を浮き上がらせると勢い良く飛び出した。
あの野郎まだ生きてやがったのか───
信じられないという顔で呟き後方を振り仰ぐマスター。
滅茶苦茶やりやがって、あいつらロケット弾撃ちやがった、冗談じゃねえ、ここは市街地なんだ、戦争じゃねえんだ畜生、何なんだ、あの追手は、狂ってるのか!?
キタニが青ざめた顔でマスターにいう。
前で運転してるのがヒラヤマ、敵のリーダーだ、後ろに載ってる金髪のガキはその手下でさっきアジトで少々傷めつけてやったが───畜生!!やっぱあの時息の根止めときゃよかった───あいつら完全にイカれてやがる───とにかく追いつかれるな!
前を行く車を煽りながら片側三車線道路をいっぱいに使い車線変更を繰り返して追い抜いていくキタニ。
キタニの巧みなハンドル操作とアクセルワークでワゴンは唸りを上げて一気に加速していく。
一方ヒラヤマの操るバイクも増え始めた一般車やトラックの合間を縫うようにして猛スピードで駆け抜け迫ってくる。
くそっ、公道ではバイクにはかなわねえ
キタニがルームミラーを覗きながら呻く。
ヒラヤマのバイクは瞬く間にワゴンの後方百メートル付近にまで接近してきていた。
追いつかれるぞ、もっと飛ばすんだ!
後方を見ながらマスターがダッシュボードを叩いて叫ぶ。
急げ急げ急げ急げ!!もっと速く早く!
赤信号を突っ切り交差点で横切るタクシーを間一髪でかわすとキタニがアクセルをさらに深く踏み込んだ。
わかってるが、ここは高速じゃねえ一般道だ! それに通行量が増えてきてる、これが限界だ!
キタニが前方に目を配りながらいった。
スピードメーターはすでに時速一二〇キロに到達していた。
前をいく大型トラックの後部がフロントガラス一杯に迫った瞬間、キタニはハンドルを一度右に振り、間髪を入れずに左に大きく戻した。
車体を真横に滑らすようにしてトラックを追い抜いたワゴンは更に加速して通勤ラッシュが始まった幹線道路をひたすら突っ走った。
だめだ! 渋滞だ
前方を見たキタニがハンドルを叩く。
前方には信号待ちの車が全車線をふさいでいる。中央車線を走っていたキタニは仕方なく速度を落とした。
それを機に一気に差を詰めるヒラヤマ。ついにワゴンの真後ろ、射程距離に到達した。
ヒラヤマが片手で拳銃を抜く。
撃ってくるぞ! 伏せろ!
銃口がワゴンの後部を捕える。
引き金を引くヒラヤマ。
うおおおっ!!!!
数発の銃弾がワゴンを襲う。
カンカンと乾いた音がして弾丸がワゴンの車体を貫いた。
!!
最後部の座席で伏せてガラスの破片を被りながらもハルトが銃を抜いた。
銃声が止むとハルトは飛び起き割れたリアウインドウ越しにヒラヤマを視界に捕える。
ヒラヤマに目掛けて素早く銃弾を放つハルト。
しかしヒラヤマは僅かに重心をシフトするだけ車体を左右に方向を変え銃弾をかわす。
ハルトの反撃をあざ笑うかのようにすかさず加速するヒラヤマ。
バイクは右に車線変更するとワゴンに並走するような恰好になる。
ノガミがハルトを睨みつけ前歯が溶け落ちた口を開けて叫んだ。
死にやがれ!
次の瞬間、背中に手を回し小型のサブマシンガンを構えたかと思うとノガミはワゴンに向け乱射した。
至近距離で発車された9ミリ弾は車体右側面に数十の穴を開け、ワゴンのドアを貫通した数発の弾丸が車内を跳ねまわった。
キタニは中央の車線から左側の車線に逃げたと見せかけてハンドルを素早く右に切りヒラヤマのバイクに体当たりを試みる。
瞬時にワゴンの動きを察知したヒラヤマはバイクを大きく傾け右側に避ける。
ヒラヤマが体勢を立て直すと
ノガミが再度サブマシンガンを構えた。
その脇道に入るんだ!
前方のビルの合間の細い路地を見つけたマスターが叫ぶ。
!!
伏せながら運転するキタニはハンドルを大きく左に切りコンマ二秒後に
思い切り強くハンドブレーキを引いた。
ワゴンは後輪がロックした状態で方向を変え九十度の角度で左に曲がり
脇道に滑り込んだ。