手錠をはめられた一行。そのままみんなが警察に連行されそうになるところで良太郎が起き上がる。

良太郎

ちょっと待てや、お前ら! 俺のダチに何してやがる!?

警察官

何だとこの野郎

益荒男

よせ、良太郎! サツと遣り合うのはヤバいって。今はおとなしく……

良太郎

お前たち、この紋所が目に入らぬか!?

 良太郎は胸元から光り輝くアメックスのブラックカードを取り出した。

警察官

おお! それはまさしくごく一部の要人しか扱えないというアメックスのブラックカード! 間違いなく身分の高貴なお人! こんな方々が幼女誘拐なんてするわけがない。お前ら頭が高い、控えおろう!!

 良太郎にひれ伏す警官たち。

良太郎

良い良い。とにかくその者たちのお縄を解きなされ

警察官

ははあ!!

 するするとみんなの手錠を解く警官たち。

良太郎

それでは皆の者、下がってよろしい

警察官

ははあ!

 警官たちは、そのまま足早に撤退していった。

良太郎

ほーっほっほっほ!

のぞみ

良太郎兄ちゃんすごい! 何か今までで一番キラキラしてるよ!

函館だけにまさに五稜郭の戦いって感じだな!

益荒男

いやお父さん。多分それ全然違います。てか良太郎! 助けてくれたのはありがたいけど……お前また何か憑依してねえか? 高校生とは思えない貫録の高笑い出てんぞ!

良太郎

ほほほ

実はその通り。えいや!

 良太郎に数珠パンチする父。

良太郎

あれ! またしても俺は一体今まで何を?

益荒男

とりあえず、ブラックカードの事を紋所とか言ってたけど……つうかあれ本当にマジなの?

実は君たちが時間を稼いでくれているスキに俺は足で五芒星を描き、良太郎くんに水戸光圀公を召喚させ、ただ内心は正義感よりも点数稼ぎ目当ての警官たちのやましい心を説き伏せた。これも日頃の修行のたまものだよ。うふふ

益荒男

いや、うふふじゃないっすよ! ほぼ何言ってるかわかんないっす! お父さんは一体何者なんですか?

俺かい? 俺はずっと函館の山に籠って修行しているただのしがないイタコだよ

益荒男

うん、充分ヤバいっす

のぞみ

お父さん! 今すぐお母さんに電話して。仲直りしよう?

のぞみ……でもお父さん。お母さんをまた幸せにする自信ないよ

良太郎

お父さん。俺からもお願いします

益荒男

良太郎、お前……本当に今度こそ正気?

良太郎

見て下さい。のぞみのおでこに出来たこの傷痕

益荒男

それはまさか。離婚のストレスによるお母さんのDV……

のぞみ

派手に転んだの!!

益荒男

ええ、そっち!?

のぞみ

お母さんが離婚してすごく失敗した。お父さん優しくてすごくいい人だったって毎日泣いてたから、東京でお父さんどこかなあって走って探し回ってる時に思いっきり転んだの。そうしたら良太郎がのんの事助けてくれて……一緒にお父さん探そうって言ってくれて

 言葉に詰まって良太郎に抱き付くのぞみ。

良太郎

のぞみ…

そうだったのか

益荒男

お父さん。よかったら俺のスマホで今すぐ奥さんに電話して下さい。画面割れてるだけでまだ使えるみたいッスから

いいのかい? 長電話になりそうだけれど

良太郎

ええ、ダチの父親なら俺のダチみたいなモンす!

益荒男

うん、良太郎。それは持ち主である俺のセリフかな一応

もしもし、久しぶり。テレビ中継みたよ。相変わらず美人だね、君は。のぞみならここにいるよ。すごく頼もしい青年たちのエスコート付でね……

益荒男

こうしてのぞみの一家は仲直りして、函館に暮らすことになった

―東京―

 二人でつるんでいる良太郎と益荒男。

益荒男

東京に帰った俺たちもユルいヤンキーに元通り

益荒男

なあ、今頃のぞみたち元気してっかな? また離婚だ、お化けだ騒いでねえか心配だよな?

良太郎

まあ、大丈夫だろ?

益荒男

何だよ素っ気ないな。のぞみが今どうしてるか気にならないのかよ?

良太郎

ちげえよ。信じてるからだよ。のぞみはいつだって天使の子だよ。そして俺の運命の人だ。そいつはちげえねえ

益荒男

良太郎……

良太郎

のぞみと指切りしたんだぜ?今度また会う時はのぞみは焼き鳥弁当いっぱい食べて俺より足が速くなっててえ、俺は大型バイクの免許取ってのぞみとドライブする。それにのぞみを守れるくらいに体も鍛えておきてえしな。函館めちゃ寒くて辛かったし、お父さんの数珠パンチ喰らっても全然平気なボディにさ!

益荒男

だな。そん時はきっとすげえいい女になってるぜ、のぞみ?

良太郎

おう、当たり前だ。今度はイチャイチャしても止めるなよ

益荒男

ははは。好きにしろよ。ダチの女にゃ手を出さねえよ

良太郎

お前は恋してからそういう事言えよな?

益荒男

うるせえ! やんのかこの野郎!

良太郎

おうおう喧嘩上等だ! ワハハハ

 元気いっぱいに商店街を走り回る良太郎と益荒男。燃える夕日に良太郎は問いかける。

良太郎

なあ、のぞみ? 俺たちが青春を駆け抜けた頃、そのままぶっちぎってお前を迎えに行くから夜露死苦!!

〈脚本・監修〉橋本ピッツァ(敬称略)

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