裏切ることは、簡単だ。
裏切ることは、簡単だ。
信じることは、難しい--------。
暇だなぁ……
五月の昼下がり。今日はとてもぽかぽかしている。
眠気がとろんとやって来たが、とりあえず頬を叩いて吹き飛ばす。
店の外に置いてあるベンチに腰掛ける。
お客様の来ない日は、大抵此処で読書をしたり、ぼうっと近所のおばあちゃんたちと話をしたり。
突然来たお客様に対応できるように、寝たりはしない。
さっきのように眠気がやって来た時は、掃き掃除をしたりもする。
掃除は朝もしたんだよなぁ
依頼人が来ない日は……暇だ。
にゃあ~
ん、また来たの?……ふふっ、くすぐったいなぁ
足元にすり寄ってきた近所の猫を抱き上げると、頬に頭をぐりぐりしてきた。
猫は、いいなぁ……
思わずつぶやいてから、ハッとした。
いけない、いけない。
ないものを欲しがることがどれだけ虚しいことか、僕はよく知っているはずなのに。
駄目だなぁ、こんなんじゃ
まだ構ってほしそうな猫を地面に下ろして、ため息を吐いた。
その時ちょうど、電話の音が鳴り響いた。
小走りで店内へ移動する。
はいはいっと……。もしもし
もしもし。こんにちは。……記憶屋さん、で、間違いありませんか
……依頼だ。気を引き締める。
はい、間違いありません。記憶屋でございます
第二話へ、続く。