困った。レジで……いいや、接客で、こんなに困ったことはない。

 なぜなら……。

お客様

どうかしたかね?

 此方のお客様の社会の窓が開いているからだ。

 こういう時、どうやって教えてあげたら良いのだろうか。

 此処はやっぱり無難に、

お客様、チャック開いてますよ

……とか?

 いや、でも後ろには一人お客様が並んでいる上に、赤ずきんは丁度裏に行っている。お客様の分散化は皆無。

 やはり、このまま見なかったことにするしかないのか……だが、このままではこの人が更に恥ずかしい思いをするかもしれないし。

 あ、そうだ。

お客様、寝癖が付いておりますよ。お手洗いがありますので、そちらで確認してみて下さい

 とか?

 いやいや、うちにあるのは肩より上くらいしか映し出さない鏡だし、何より急にそんなこと言われたら戸惑うよな。

 じゃあ指さしで。

 そしたら人を指さすなって言われそうだし、他のお客様の視線も集めてしまう。人によっては俺のジェスチャーで気づいちゃうかも。

 ……となればいっそ、俺のチャックを開けて気づかせるしか!!

いや、ないない

赤ずきん

お待たせしました、次のお客様此方のレジへどうぞー!!

 困り果てた俺に手を差し伸べるエンジェルのようにやって来たのは、赤ずきんだった。ナイス!!

 並んでいたお客様がいなくなったので、早速俺は事実を伝えようとした。その時。

赤ずきん

ところでお客様、チャック開いてらっしゃいますよ! もー、心もズボンもチャックはちゃんと閉めて下さいねー

お客様

……

……す、すみません

 彼女の言葉で、俺の気遣いは台無しになった。

41・どうする? スーパー気遣い

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